【ソフトバンク】山川穂高へのブーイング 西武ファン「この3連戦だけは耐えてくれ」

ソフトバンク・山川穂高(中)に、西武ファンから痛烈なブーイングが飛んだ

憎しみだけがこもったブーイングではなかったはずだ。ソフトバンク・山川穂高内野手(32)が12日の西武戦(ベルーナ)で、FA移籍後初めて古巣本拠地でのゲームに臨んだ。結果は4打数1安打、3三振。チームは終盤に逆転して、大事なカード初戦を2―1で制した。

試合前の選手紹介で耳をつんざくような「ブ~」という低音ボイスが響き渡った。注目の第1打席ではさらに大きなブーイング。全打席、ストライクコールのたびに浴びた。「敵にしたら怖いなと。当然感謝してますし、育ててもらったことに変わりはない。また勝負があるんで、こっちはこっちで意識してやっていきます」。素直な感想だった。

女性問題などもあり、紆余曲折を経てのFA移籍。山川本人、鷹サイドも早々に覚悟し、西武球団もある程度は予想していたブーイングだった。獅子党の心理を読めば、予定調和の光景と言えた。

左翼席を埋めた熱狂的西武ファンから上がった大ブーイング。表面的には憎しみだけがこもっているようにも見えたが、獅子党の複雑な感情が入り乱れていた。

「球団の中に頭を下げた人がいたはず。フェニックス・リーグで自分が出る代わりに出場できなかった若手もいる。いろんな思い(やタイミングの問題)があったとしても、それでも球団イベントなどに出てくる計らいがほしかった。私、山川を応援してたんです。オリオンビールの登場曲も好きだった。でも、今はそれをなぜ使い続けてるのって思う。ここに戻ってきてほしくないとも思う。それが正直な気持ちではあります」(ファン歴15年の女性)

西武時代に218発を放ち、3度の本塁打王を獲得。誇れる大砲だったからこそ〝かわいさ余って憎さ百倍〟の感情があふれ出た。

山川推しだったというファン歴20年の男性は「西武戦以外で活躍してほしいなと。西武ファンだからこその気持ちです。ホームランは忖度して打たないでくれって。彼が好きだったから。打たれるだけでもイヤなんだから、どすこい(パフォーマンス)は勘弁。やっぱり、今はいい気持ちにはなれないです。ホントに応援してたから、そう思うんでしょうね。この3連戦だけは、ブーイングに耐えてくれって感じです」と優しく笑った。山川のアーチを何度も見届けてきた熱狂的ファンゆえの偽りのない気持ちだった。

30年来の男性ファンは「ブーイングは愛情の裏返しというのかな…。新天地で活躍してほしいし、野球界を盛り上げてほしい。この光景も含めて、そう思ってます」と言った。本気で応援されていた分、強烈だった。

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