巨人・菅野智之の進化を示す「大人の投球」、取り戻した球威と反比例するデータ

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開幕2連勝で防御率0.00の好スタート

巨人・菅野智之投手(34)が最高のスタートを切った。

今季初登板となった4月4日の中日戦(バンテリンドーム)で7回4安打無失点と好投して初勝利を挙げると、11日のヤクルト戦(神宮)でも6回3安打無失点で2勝目。ここまで計13イニングを投げて7安打7奪三振無失点、防御率0.00を記録している。

プロ入り以来8度の2桁勝利を挙げ、今季の2勝を足して通算123勝。最多勝3回、最優秀防御率4回、沢村賞とMVPも2回ずつ受賞するなど輝かしい実績を残してきた。

しかし、昨季は4勝に終わり、2年連続12勝の戸郷翔征がエース格にのし上がった。最高8億円だった年俸は4億円に半減(金額は推定)。内心忸怩たる思いはあるだろう。プロ12年目を迎えベテランと呼ばれる年齢に差し掛かってきたが、老け込むのはまだ早い。

伯父でもあり、新人の頃から目にかけてもらった原辰徳監督が退任し、現役時代にバッテリーを組んだ阿部慎之助監督が就任。胸に去来する様々な思いをぶつけるかのような今季の投球だ。

ストレートも変化球も昨季より球速アップ

今季の菅野はどこが良くなっているのか。まだ2試合ではあるが、昨季のデータと比較して検証してみたい。

まずストレートの球速は昨季の147.6キロに対し、今季2試合の平均は150.3キロにアップ。全体に占める割合は29.3%から30.4%に増えている。

カットボールは平均140.4キロから142.2キロ、スライダーも133.1キロから134.9キロ、フォークも138.3キロから142.0キロに球速はアップしており、投球割合もカットボールが19.3%から22.0%、スライダーが18.5%から19.9%、フォークが11.0%から13.6%に増加している。

逆にカーブは11.1%から7.3%、ツーシームは10.7%から6.8%に減少。まだシーズン序盤で疲労が溜まっていないこともあるだろうが、球速がアップしたストレートや得意のカットボール、スライダー、フォークの配分を増やしていることが分かる。

実際、ストレートの被打率は昨季の.250から.077、カットボールは.222から.111、スライダーは.281から.273と改善しているのだ。

低めをつく丁寧な投球で奪三振率は低下

さらにコントロールも抜群だ。ストライクゾーンを9分割したゾーン別の今季データは以下の通りとなっている。

対左打者は外角低めが28.6%、内角低めが23.1%、対右打者は外角低めが50%。それ以外のコースは少なく、特に右打者に対して高めは全て7%未満を示す青色に染まっている。

左打者の外角低めは被打率.400と高いが、左打者の内角低めと右打者の外角低めは被打率.000。丁寧に低めをついて抑えていることが分かる。

興味深いのは奪三振率だ。9イニングで奪う平均三振数が2020年は8.58、2021年は7.94、2022年は6.37、昨季は6.26と年々低くなっていたのだが、今季はここまで4.85。かつては剛腕のイメージがあったが、今では三振にこだわらず確実にアウトを取るスタイルに変化。本来の球威を取り戻しても、決して力に頼らない「大人の投球」を実践していると言えるだろう。

昨年のプロ野球界を席巻した「アレ」ではなく、今年は「アベ」を狙う新生・阿部巨人。経験も実績も文句のない菅野がローテーションの軸として躍動すれば、これほど心強いことはない。



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