直前まで“マスターズ観戦” 須江唯加はウェイティングで10分前滑り込み

またしてもウェイティング! ギリギリ出場の須江唯加(撮影:佐々木啓)

<KKT杯バンテリンレディス 初日◇12日◇熊本空港カントリークラブ(熊本県)◇6518ヤード・パー72>

QTランク41位の須江唯加は微妙なポジションにいる。エントリー締め切り時点で今大会の出場資格はなかったが、欠場者が出れば、現地ウェイティングから繰り上げで出場できる位置。「出られるチャンスがあるなら」と今週も岡山・津山市の自宅からコース入りした。

初日の競技もスタートし、「もう無理かな…」とあきらめかけていたときに、福田真未の欠場で出場が急きょ決定した。ティオフ予定時間の10分前という慌ただしさだったが、3バーディ・3ボギーのイーブンパーにまとめて28位タイと上々のスタート。ホールアウト後にドタバタの舞台裏を明かしてくれた。

「ずっと車の中にいて、マスターズを見ていました。ちょっと様子を見ようと思って、クラブハウスに行ったら、出場できると教えてもらって…。車に置いていたキャディバッグを急いで取りに戻って、練習グリーンで5球ほど転がしただけでした」

ゴルフの祭典「マスターズ」には、同じ津山市出身で互いの自宅も近く、練習場も一緒で、高校も同じ岡山県作陽高(現・作陽学園高)だった3歳年下の久常涼が出場。初日6オーバーと出遅れた幼なじみを応援しながら、「苦しんでいるなぁ。でも、涼くんは試合に出られていいな」など、とりとめもないことを思っていた矢先に巡ってきた出番だった。

急いで向かった1番パー4のティイングエリアでは、この日2度目のびっくりが待っていた。同組は元世界ランク1位の申ジエ(韓国)。「もちろん一緒に回らせてもらうのは初めて。えっ? 私が回っていいんでしょうか、私でいいんでしょうか、って感じでした」。

恐縮のラウンドはそれでも3番パー3でバーディを先行させ、9番パー5で2メートルを沈めるなど前半は3バーディ・1ボギーの2アンダー。「迷惑をかけないように。それだけを考えた」と無我夢中で18ホールを回り切った。

「私が出られるということは、誰かがケガをしたり、体調を崩した可能性もある。もろ手を挙げて喜ぶわけにはいかないけど、いただいたチャンスを無駄にしたくない。経費もかかっているので」

現地ウェイティングからの繰り上げ出場は、38位タイだった「アクサレディス」に続いて今季2試合目。前回は大会前日に出場が決まったが、そのときは当日移動。「岡山から車で大阪空港に行って、そこから飛行機で宮崎に来ました。今回はちゃんと前日には熊本にいました」と笑いながら胸を張った。2019年にプロ転向し、プロテストは21年11月に合格。これまでの最高は事前に出場資格がおりてきた2週前の「ヤマハレディース葛城」の30位タイ。今回はそれ以上の成績を目指す。

現地ウェイティングからの繰り上げ優勝は、17年「ゴルフ5レディス」のO.サタヤ(タイ)と18年「マンシングウェアレディース東海クラシック」の香妻琴乃の2人だけ。首位とは5打差で残り2日間、「末吉」ならぬ「須江吉」の23歳ならツアー史上3人目の快挙だって夢ではない。(文・臼杵孝志)

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