《JR福知山線脱線事故から19年》負傷者の思い伝える『空色の栞』会いに行く人、来る人…つなぐ春

「空色の栞」にリボンをつける(右から)福田裕子さん、木村仁美さん、空色の会を運営する三井ハルコさん<2024年3月2日 兵庫県川西市>

乗客106人が死亡したJR福知山線脱線事故から4月25日で19年となるのを前に、事故の負傷者らでつくる「負傷者と家族等の会」(兵庫県川西市)が、風化を防ぐための願いを込めた「空色の栞(しおり)」5千枚を作製した。

“空色”は、事故当日の晴れ渡った青い空を忘れないとの思いから名付けた。メンバーそれぞれが、1枚1枚に空の色を表す2種類のブルーのリボンを通している。

栞づくりは2009年に始まった。栞のイラストを担当するのは、1両目に乗って負傷した福田裕子さん(兵庫県宝塚市)。
毎年、1~2月にデザインを仕上げる福田さんは大学時代、本格的に絵を学んだ。その大学時代、通学途中に事故に遭った。今回が14作目になる。

こだわるのは青色。年によって濃淡はあるが、空を表現する青にこだわりがある。1年を通して感じたことや、思うことを込めている。
栞のデザインを始めたころは、比較的淡い色が中心で、キャンバスに白色が占める部分も多かったが、ここ数年は、これまで避けていた明るい色も取り入れ、全面が色付くようにしている。
今年(2024年)は青空のもと、山際に波が打ち寄せるのイラストをあしらい、7~8色を使った。

「こうした色合いが、本来の裕子さんの絵だと思うよ」。そう話すのは同級生の親友・木村仁美さん(兵庫県西宮市)。木村さんも同じ車両に乗り、負傷した。栞のデザインを始めたころは、比較的淡い色が中心で、キャンバスに白色が占める部分も多かったが、ここ数年のデザインの変化に気付いていた。

そして、人の動きを象徴的に描き、「会いに来る人」「会いに行く人」をイメージした。福田さんは「人との縁は、どちらかがアクションを起こさないと生まれない。特に新型コロナウイルスの影響で“分断された社会”から“再び、会いに行く”というイメージを出した。
福田さんが表現する絵の優しさの中に、鋭い視点とメッセージが込められている。

「空色の栞」はJR福知山線の尼崎、伊丹、川西池田、宝塚、西宮名塩、三田6駅で無料配布。一部の公共施設でも配布。今年も、安全・安心な社会の実現を誓う思いを伝える。

© 株式会社ラジオ関西