【4月13日付編集日記】タンポポ

 風雨にさらされながら、野の花はたくましく生き抜く。あちこちで目に付き始めたタンポポは、そんな「がんばり屋」の代表格だ。一つの花に見えるのは、実はたくさんの小さな花の集まり。それが咲ききったら、茎は倒れてしまう

 ▼枯れたわけではなく、花の下でちゃんと種を育てている。成長すると、また茎が空に向かい立ち上がり、ふわふわした綿毛の種を飛ばす。ごくありふれた存在のタンポポのしたたかな強さには、舌を巻くしかない

 ▼世界の辺境を旅し大抵のことには驚かないはずの椎名誠さんが、この花に感動した体験を「パタゴニアのタンポポ」に記している。マゼラン海峡からの烈風が吹き付ける海岸べり。一面のタンポポがちぎれんばかりに地面と平行になびきながらもなお、しっかりと咲いていた

 ▼バドミントンの女子シングルスで、富岡高卒の大堀彩選手がパリ五輪代表入りを確実にした。高校時代から注目を集めながら実業団では2人のライバルが立ちはだかり、東京五輪の代表入りはかなわなかった

 ▼決して夢を諦めず、厳しい練習に打ち込んできたことが実を結んだ。パリに舞い降りた種は、内に秘めるたくましさとしぶとさでひときわ大きな花を咲かせる。

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