能登地震「熊本の被災体験、思い出した」95% 熊本地震8年・熊日ID会員アンケート 「経験生かされた」は賛否拮抗 

 熊本地震から8年となるのを前に、熊本日日新聞が電子版のID会員にアンケートした結果、95%の人が1月に起きた能登半島地震を見て「熊本地震の被災体験を思い出した」と回答し、被災の記憶がよみがえったことをうかがわせた。熊本の経験が能登に生かされているかについては、意見が拮抗[きっこう]。避難所の運営や支援物資の供給を評価する一方、建物の耐震化やライフライン復旧の遅れを指摘する意見が出た。

 メールによるアンケートは3月29日~4月7日に実施。県外在住者を含む10代から80代以上までの792人(男性506人、女性282人、性別の回答なし4人)から回答を得た。

 具体的に思い出した被災体験としては、地震による激しい揺れや建物の倒壊、ライフラインの寸断を挙げる人が多かった。当時の恐怖や不安感を思い出すと答えた人もいた。

 益城町の50代女性は停電の中、体が揺さぶられた経験や家屋が倒れる音、避難所での余震の恐怖に触れ、「ライフラインも食料もない不自由な日々で、世の中から自分たちだけ取り残されたような孤独感など、全てのつらかった事を思い出した」と記述した。

 熊本地震の課題が能登半島地震に生かされている点では、避難所でのプライバシー確保や物資のプッシュ型支援、全国の自治体からの職員派遣によるノウハウの活用を例示。前震と本震で震度7を2度経験したことを踏まえて「同程度の地震の発生を警戒するようになった」とする人もいた。

 一方、生かされていない点で挙がったのは断水の長期化やボランティアの受け入れ体制、ライフライン復旧に用いる資機材の準備、孤立集落の支援。要因として、地理的条件の違いや通行できる道路の確保を行政が怠っていたことなどを指摘する声があった。(鎌倉尊信)

発災から8年となる熊本地震。手前は熊本城天守閣、右奥は復旧工事が続く素屋根に覆われた宇土櫓=8日午前、熊本市中央区(谷川剛・上杉勇太、ドローン撮影)

 ◆熊本地震「復興果たされた」76% 自身の生活「将来に不安」61%

 熊日電子版のID会員へのアンケートでは熊本地震からの復旧・復興についても尋ね、76%が「果たされた」と答えた。日常生活を取り戻し、インフラの復旧も進んだことが根拠となっている。ただ、益城町や熊本城で復旧工事が続いている点をはじめ、自宅の補修を見送ったり別の場所で再建したりしたことなどを挙げ、復旧・復興は道半ばと訴える人もいた。

 多くの人が復旧・復興の指標に挙げたのが道路や鉄道の復活、阿蘇神社など観光地のシンボルの再建。反対に自宅再建の未了や多額のローン、河川・農地の整備の遅れを捉えて復旧・復興に懐疑的な意見もあった。ハード面だけでなく、「つらい出来事の記憶や心の傷が残っている」「地域の人口が減って、地震前より活力がなくなった」と記入した人もいた。

 自身の生活で将来に不安があるとしたのは61%。熊本県内を走る日奈久断層の存在や南海トラフ地震の可能性を挙げ、「また大きな地震が来たらと思うと恐ろしい」「今度こそ自宅が倒壊するかもしれない」との声が数多くあった。熊本地震での自宅再建などによる経済的な負担を懸念材料とする意見も見られた。

 能登半島地震後に防災の備えを見直したかとの質問には、42%が「はい」と回答。内容については、食料などの備蓄品の再確認や防災リュックの点検のほか、自宅の家具転倒防止策を講じたり、避難経路・場所を改めて調べたりしたといった声があった。(鎌倉尊信)

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