小林虎之介、『下剋上球児』からプライド高い研修医へ 大役挑戦に贈られた言葉は「調子に乗るなよ!」

小林虎之介 クランクイン! 写真:高野広美

吉沢亮が幼い命を救うために奮闘する小児科医・志子田武四郎を演じ、好評を博したドラマ『PICU 小児集中治療室』。連続ドラマのその後を描く『PICU 小児集中治療室 スペシャル 2024』(フジテレビ系/4月13日21時)では、“しこちゃん先生”にも後輩が誕生する。その研修医・瀬戸を演じるのが、昨年放送された『下剋上球児』(TBS)で、血気盛んなキャッチャー・日沖壮磨を演じ、注目をさらった注目株・小林虎之介だ。球児から研修医へと華麗な変身を遂げた小林に、大役に挑んだ心境を聞いた。

◆『下剋上球児』プロデューサーも出演に喜び 贈られた言葉は「調子に乗るなよ!」

丘珠病院PICU科に後期臨床研修で瀬戸廉(小林)、七尾乃亜(武田玲奈)の2人の研修医がやってくる。PICU科長・植野元(安田顕)から2人の指導係に任命された武四郎(吉沢)は、初めてできた後輩の存在に喜びを隠せない様子だが、瀬戸と七尾はそっけなく、「植野先生には指導してもらえないんですね」と武四郎のことを小ばかにした態度を取る。

とはいうもの、瀬戸は東京の大病院の御曹司。東大卒の両親をもつサラブレッドで、かつ甘いマスクで女性からの人気も高い。そのうえ語学も堪能で、武四郎から「PICUマニュアル」を渡された際には「もう読みました。英語版を」と答え、武四郎を閉口させる…。

――つい先日まで泥だらけのユニフォームで白球を追っていましたが、一気に研修医に。白衣姿のご自身をご覧になっていかがでしたか?

小林:笑っちゃいましたね(笑)。しかも、『下剋上』のクランクアップから3日後とかの撮影だったんですよ。この前までユニフォームを着てグラウンドで撮影していて、3日後にスーツに白衣で、あまりにも違いすぎました。4ヵ月以上やっていた撮影から次にすぐ切り替えるというのが人生初めてだったので、なかなかすぐに抜けなくて、最初は役に入るのに苦労しました。監督に「怒っている表情が医者っぽくない」とか「ちょっと表情でこの部分除いてみようか」とアドバイスをいただきながら、だんだん修正していきました。

――出演が発表された時に周囲から反響はありましたか?

小林:『下剋上』のメンバーは「そんなでかい仕事が決まったら、俺も負けてらんないわ」と言ってくれたり、喜んでくれましたね。(『下剋上球児』の)新井順子プロデューサーもすごく喜んでくれたんですけど、「調子に乗るなよ! 全部私の耳に入ってくるからな!」って連絡が(笑)。

――(笑)。調子に乗りがちなタイプなんですか?

小林:プライベートでは乗っちゃうこともありますけど、仕事ではそんなことないです。(鈴木)亮平さんにも「調子に乗ったらすぐ落ちるからな。そんな甘くねえぞ」ってめっちゃ厳しく言われましたね。でも、仕事面では大丈夫です(笑)。

◆吉沢亮、安田顕、甲本雅裕らとの共演は学ぶことが多かった

――今回演じられる瀬戸廉。どんなキャラクターだと捉えましたか?

小林:実家が東京の大きな病院で、医者にならないといけないというプレッシャーの中の生活がずっと続いていたと思うんです。自身もしっかりこれまでたくさん勉強して医者になって、プライドもそれなりにある。知識もたくさんあるわけなんですけど、知識だけじゃ戦っていけないってことを物語の中で経験していくというか。

演じていても苦しいなって思う部分もたくさんありました。自分ではできると思っていたのにどんどん打ち負かされる感覚は、人生生きていたらそういう経験をたくさんの人がしていると思うんですけど、瀬戸はたぶんその経験の大きなものは初めてだったんじゃないかなとも思いました。

――演じるにあたり、役作りは大変でしたか?

小林:もともとフジテレビの医療ドラマが好きだったんです。『Dr.コトー診療所』は何回も見ていますし、『PICU』も見ていたので、おのずとイメージできるというか。医者ではなく研修医なのでガチガチに医者をまねようとは思っていなくて、『PICU』Season1の吉沢さん演じる志子田先生が近い立場というか、置かれている境遇が若干似ている部分もあったので、吉沢さんの演技を参考にさせていただきました。

――吉沢さんをはじめとする共演の皆さんはキャリアのある皆さんばかりです。

小林:皆さん何をやっても受けてくださる方たちなので、僕が物怖じするようなことは一切なくて。皆さんに身を預けて、感情を出していった感じでした。

――特に印象に残っているシーンはありますか?

小林:安田顕さんとちょっとシビアな、重たい雰囲気のシーンを一緒にする機会があって。吉沢さん、甲本雅裕さんと4人のシーンだったんですけど、気持ち的に僕もちょっとつらいシーンで、しかも4人もいるのでカットもそれなりに多くて、後半すべて同じ芝居が難しくなってきたときがあったんです。その時に安田さんが「大丈夫、大丈夫」って言ってくださって。僕もつい力みが心の中で出て来始めていたのですが、「大丈夫。全部受け止めるから」みたいな雰囲気を出してくださって、そこからまた僕の心も和らいで感情が出ることがありました。やっぱり、すごくたくさんの経験をされてきている方なので、そうした姿を見せてくれて、すごくやりやすかったですし、頼もしかったです。

――安田さんが演じられる植野先生そのものですね。

小林:植野先生にしか見えないですね。学ぶことが本当に多くて。

でも一緒にドラマをやっている以上同じ土俵に立っているので、クオリティを僕で下げるわけにはいかないっていう戦いもありました。大事なスペシャルドラマでゲストとして大役を任されたわけですから、世界観を壊しちゃダメだという責任感はありました。とにかく変な芝居をしたら俺は終わりだっていうプレッシャーの中でやっていました。完パケを見るのが怖くて、「頼む! 見れるものであってくれ!」っていう心境です(笑)。

――(笑)。今回演じられる瀬戸は、患者さんの推しアイドルに似ているイケメン先生という設定もあります。

小林:大丈夫かこの設定?って思いましたよ。実は今回一人二役でアイドル役もやっているのですが、なんならこの作品で最初にしたのはそっちの役の撮影なんです。小道具で登場するカレンダーやアルバム、ウチワなどの撮影をしたのですが、その時は周りのスタッフさんに乗せられながらやりました。最初はめちゃくちゃ恥ずかしかったんですけど、ついついそこは調子に乗っちゃいましたね。あんなに「調子に乗るな!」って言われていたのに(笑)。

撮影したものは芝居の場面に出てくるんですけど、恥ずかしくてしょうがないです。目の前には吉沢さんがいて、ニヤニヤしているわけですよ。「はっず!」って(笑)。吉沢さん演じるしこちゃん先生よりイケメンって言ってくれてる子どもとのシーンでは、勘弁してくれ~って思いました。

◆レッスン、バイトなど下積み時代の経験が今につながった

――小林さんが俳優を目指されたきっかけを教えてください。

小林:大学生の時に、就活の時期でインターンのことを考えないといけなかったんですけど、やりたいことがなくて。どこも行きたくねーな、でも行かないわけにはいかないなって考えてた時に、『ボヘミアン・ラプソディ』を父親と観に行って、その映画に衝撃を受けたんです。この業界は面白そうだなと。

――それまでも表に出ることはお好きだったんですか?

小林:ないですないです、なんなら苦手なほうで。人前は苦手だし、カメラも嫌いだしっていう感じでした。なので、僕にとっては挑戦だったんです。

――俳優を始めてみて、これまでの道のりはいかがですか?

小林:仕事が何もなくても、これが下積み時代だ!って思って楽しんでやってましたね。でもしっかり努力はしましたよ。レッスンもそうですし、家での過ごし方もそうですし、バイトもめっちゃしたし。一番長くやったのは、仕分け工場ですね。そこで、1人作業で重たい物をバンバン運んで、それでちょっと体も鍛えられました。

そうやって自分の余白時間を作らないようにやっていたから今があると思っています。いろいろやらなかったら『下剋上球児』も決まってないし、いい時間を過ごせたなって。でもここから、売れるための第2の下積み生活だと思っています。

――『下剋上球児』の壮磨役でインスタのフォロワーも一気に増えて、街で声を掛けられることも多いんじゃないですか?

小林:ないですよ。バレないように生きてるんで。最近はもう坊主じゃなくなったこともあって、帽子もかぶらなくなりました。地元の友達も茶化してきたりもしますけど、持ちあげたりもしないし、変わらないですね。

あ、一回、岡山のファミレスでバレました。サイコロステーキを食べていたら、“壮磨”ってワードが聞こえてきて、一緒にいた友達に「バレたかもしれん」って言って。でも(気づいた人は)気を遣ってくれて声をかけたりとかはなかったんですけど、ちょうど会計のタイミングが被っちゃって。そうしたら、友達が「壮磨っすよ!」とか言って(笑)。「写真撮りますか?」「握手しますか?」とマネージャーみたいなこと言い始めたんですよ。相手の方は喜んでくれていましたし、なによりドラマを見てくれていたということが一番うれしかったですね。

――先日26歳を迎えられました。20代の目標はありますか?

小林:役者としてのポジションを確立したいなっていうのもあるし、賞を取ってみたいですよね、20代のうちに。俳優って自信を持って言えるかといったら、今はまだそこまで自信満々に言えないんです。でも、そういう俳優の人がもらえる賞を取ったという形があったら、よりプロに近づけるのかなと思います。

――あまり自信満々な性格ではないのでしょうか?

小林:自信はないけど、あるように自分を洗脳します。元はないんですけど、そんな気持ちでやっていける業界じゃないから、「余裕!俺ならできる!」そう自分を洗脳しています。

――今後はどんな俳優さんになりたいですか?

小林:ありがたいことにいいチームとキャストの方に囲まれてやってきて、その中で得る経験が自分の役者としての糧になるものがとても大きくて。そういうところにいると、成長している実感をすごく得るんです。今後も作品の大小はそんなに考えず、それよりもいいチームでやれるかどうか、キャストの方にちゃんと尊敬できる方がいるかどうか、そういう環境で仕事をしていきたいですし、そういうところに恵まれたらうれしいなと思います。

――いずれ主演を!という思いは…。

小林:どっちかというと主演は大変そうだし、そんな責任を負いたくないって思っていたんですけど、鈴木亮平さんの背中を見ていたら、人としてもカッコいいなと思えて、僕もいつかやれたらいいなと思っています。

今、韓国ドラマにハマっているのですが、韓国のエンタメ全般、世界中にファンがいるじゃないですか。そういうのに少し憧れますね。僕もいつか世界中にファンのいる作品のメインキャストでいられたら幸せだろうなって思います。

(取材・文:近藤タイスケ 写真:高野広美)

ドラマ『PICU 小児集中治療室 スペシャル 2024』は、フジテレビ系にて4月13日21時放送。

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