【阿武隈川水害試算】危機意識高めて対策を(4月13日)

 気候変動による降水量の増加を踏まえた国土交通省東北地方整備局の初の試算で、福島、宮城両県の阿武隈川流域は4万4100世帯が浸水する可能性があるとされた。気候変動を考慮しない従来の2万世帯を2倍以上も上回る。住民の生命、財産を守るため、治水対策の強化とともに県民の意識を高める取り組みが一段と求められる。

 阿武隈川の河川整備は、1986(昭和61)年に発生した「8.5水害」の降水量を基準に進められている。試算では、平均気温が2040年までに2度上昇し、雨量は基準の1.1倍、流量は1.2倍に増えると仮定した。この結果、現在整備中の堤防では十分にしのげず、浸水地域は上流から下流にかけて広範にわたって拡大する見通しが示された。

 浸水が懸念される4万4100世帯のうち、本県は2万3200世帯で、2019年の台風19号で被災した1万1500世帯の2倍に達する。気候変動との関連が指摘される自然災害が世界各地で起き始めている現状を考えれば、試算を踏まえた対応は欠かせない。

 国交省は今年度、阿武隈川の整備計画見直しに着手し、水害を最小限に抑える対策を具体化させる。川底の土砂を取り除いて川幅を広げたり、堤防を強化したりする事業を今後10~20年程度をかけて展開するとみられる。

 全国で氾濫の危険が懸念されるのは阿武隈川だけではない。いかに財源を長期にわたり確保していくかといった議論も不可欠だ。

 阿武隈川の管理は国の責務とはいえ、住民の安全確保に向けては流域自治体の役割も大きい。郡山市は、地下に雨水貯留管を埋設して洪水を防いでいる。大雨時などに水をためる田んぼダムの有効性も注目されている。県と市町村は先進事例などを参考に地域の実情に合った多角的な対策を検討すべきだろう。

 住民一人一人が水害に対して正しい知識を持つことも一層大切になる。降雨時は、浴槽の水を下水道に流さないだけでも効果があるとされる。豪雨は河川整備の完了を待ってはくれない。いつ起きても被害を避けられるよう、避難の在り方を含め、各家庭のルールを普段から話し合っておきたい。(角田守良)

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