【早出し】芭蕉の内面に迫る 山形・山寺芭蕉記念館の企画展

松尾芭蕉直筆の句文懐紙や「蕉門」との交流を紹介している企画展=山形市・山寺芭蕉記念館

 山形市の山寺芭蕉記念館で12日、企画展「芭蕉の周辺と蕉門-芭蕉と江戸俳壇-」が始まった。松尾芭蕉直筆の句文懐紙、弟子「蕉門」への書簡など計三十数点が並び、周囲との交流にも注目して芭蕉の内面に迫っている。

 直筆の句文懐紙「世にふるも更に宗祇のやどりかな」は15世紀の連歌師宗祇に敬意を表したもので、前文には旅に明け暮れ文筆を磨いた中国の詩人杜甫や日本の歌人西行らの名前がある。同館学芸員の相原一士さんは「旅の中で生きるという芭蕉の志が読み取れる」と話す。1681(元和元)年ごろに書かれ、「元和風」といわれる躍動感ある書体も目を引く。

 「奥の細道」行脚で知り合った羽黒(現鶴岡市)の近藤佐吉への書簡では、「あなたのことを曽良となつかしく話している」と親しみを込めつづる。近藤が亡くなった時には、庄内藩士岸本八郎兵衛宛てで「これほど悲しいことはない」と嘆き、門人への気遣いと深い交流がうかがわれる。

 芭蕉が句会の作法を説いた「会式」懐紙、青山永耕が芭蕉と高弟10人を描いた「蕉門十哲之像」も並ぶ。6月9日まで。

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