何かを決めるときに迷ったら、リスクマネジメントの発想で考えよう! 例えば、投資をすべきかどうか…

プラスのシナリオを描き、短所について対策を考える

例えば、最近ブームが起きている「新しいNISA」を巡る、「投資をすべきかどうか」という議論について考えてみます。

図表1を見てみましょう。これは「不確実性(リスク)にどのように対応するか」という「リスクマネジメント」について簡単に示したものです。中心軸に今があり、そして、そこから将来に向かって矢印が伸びています。この中心軸を起点に将来を捉えたうえで、投資をすべきかどうかについて考えていきます。

図表1

※筆者作成

例えば、「将来、物価が少しずつ上昇していくなら、お金の価値が目減りしていくわけだから、それを防ぐために投資をして資産を増やそう」というストーリーを描いたとします。

これを「+シナリオ1」としましょう。+(プラス)は、「今の時点から将来に向かう人生の軌道上で、何らかの良い効果を生み出す可能性がある」という意味であり、このシナリオには「プラスの不確実性(リスク)」があるものとします。

そして、このプラスの不確実性(リスク)には長所と短所があります。長所は、投資をすることで資産が増える可能性があることです。これに対し短所は、投資をすることで損失を被る可能性があることです。長所については「良いこと」なので、極端にいえば考える必要はありません。

問題は短所です。短所は「悪いこと」なので、何らかの対策を講じる必要があります。つまり、このシナリオでは投資をすることで損失を被る可能性があるわけです。そのため、例えば、損失を被る可能性を減らすために、分散投資などを行うことが「リスクマネジメント」になります。

マイナスのシナリオを描き、短所について対策を考える

一方、「将来、物価が少しずつ上昇し、お金の価値が目減りしたとしても、損失を被る可能性があるので投資はしない」というシナリオを描いたとします。これを「-シナリオ1」としましょう。

-(マイナス)は、「今の時点から将来に向かう人生の軌道上で、何らかの悪い効果を生み出す可能性がある」という意味です。このシナリオには、「マイナスの不確実性(リスク)」があるものとします。

マイナスの不確実性(リスク)にも、長所と短所があります。長所は、投資をしないため損失を被らないということです。これに対し短所は、物価上昇でお金の価値が目減りするということです。長所については、そもそも投資をしないわけですから、考える必要はありません。

しかしながら、短所である「物価上昇によるお金の価値の目減り」については、何らかの対策を講じる必要があります。この場合は例えば、副業をする、配偶者とともに働く、資格などを取得し自分の労働価値を高める、などの方法で収入を増やすことが「リスクマネジメント」になります。

投資をすべきかどうかの結論は、自分で納得できればそれでよい

上記の両方のシナリオをもとに、どちらを選ぶほうがよいかを考え、行動を決めていきます。

経済行動としては、どちらの選択も間違いではありません。なぜならば、投資をする場合は資産が増える可能性がありますが、一方で投資をせずに収入を増やすことも、資産の増加につながる可能性があるからです。

重要なことは、自分のライフスタイルや人生観、家族観、労働観、健康面などに照らし合わせて、どちらを選ぶかを決めることです。自分で納得できるなら、それでよいわけです。

まとめ

このように、人生の選択においては不確実性(リスク)を想定し、手順を追って考えていくと、頭の中が整理され、決断しやすくなります。

できれば周辺知識や方法などを身につけながら考えるのがベターといえますが、仮にそのようなものがなくても、ある程度調べれば解決できる日常生活の問題や課題はたくさんあります。誰かに相談するのもよいでしょう。

なるべく頭の中を整理し、客観的に物事を組み立てていくと、物事の決断に役立ちます。人生に迷うことや、何か心配ごとがあったら、リスクマネジメントの発想で物事を捉えてみるのも、ひとつの大切な方法といえるでしょう。

執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)

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