今年から始まった新しいNISA制度を使って私も投資を始めるべき? 年代別に解説

NISAとは

NISAは、「NISA口座(非課税口座)」内で、毎年一定金額の範囲内で購入したこれらの金融商品から得られる利益が非課税になる、つまり、税金がかからなくなる制度です。2024年から新しくなった制度の特徴は次の通りです(※1)。

__●非課税保有期間の無期限化
●口座開設期間の恒久化
●つみたて投資枠と、成長投資枠の併用が可能
●年間投資枠の拡大
(つみたて投資枠:年間120万円、成長投資枠:年間240万円、合計最大年間360万円まで投資が可能。)
●非課税保有限度額は、全体で1800万円
(成長投資枠は、1200万円。また、枠の再利用が可能。)__

NISAはするべきなのか

投資を始めていない人にとっては、NISAについて説明されても、「今までの制度もよく分からないし、税金がかからないから得だということしか理解できない」という人もいるでしょう。

そもそもNISAは投資なので、利益に対して税金はかからないとは言え、元本保証があるわけではありません。つまり、利益どころか損をする可能性もあります。そのため、「税金がかからないから得だ」という理解は避けてください。

NISAは、人生100年時代に必要なお金の準備をするために有効な手段として国が推進する制度です。この有効な手段を自分に合った上手な使い方をするのが一番です。間違っても「○○さんからこうしたから得をした、と聞いたから私も同じことをした」ということはやめた方が良いです。

投資は自分のライフスタイルに合った方法を見つけることが一番難しくはあります。しかし、見つけてしまえばその後がスムーズになります。次はその見つけ方を年代別に解説します。

50代以上の人

50代以上の人は余剰資金の管理の1つとして投資をするのが良いでしょう。間違っても「○○に必要な資金△△万円を作るのだ」という目的型投資は避けてください。

例えば「60歳の人が退職金のうち500万円を介護施設に入るお金として10年後に800万円にする」という目的を設定し、一括投資をするのは危険です。介護施設に入るお金は、その人にとって必ず必要となるお金です。必ず必要なお金全額を投資で作るというのは危険です。

考え方としては、「分散」を意識してみてください。また、少しずつ積み立てていくと、積み立てるたびに経済状況の変化や損得(利益)を判断することができます。

一方、一括投資をしてしまうと、投資をした時点と投資をし終わった時点でしか損得などを判断できません。少しずつ積み立てていくとポイントだけの判断ではなく、継続的に投資判断をすることができます。

また目標額を設定したものの到達しなかった場合、ストレスもたまり、焦りもでます。投資の大敵は自分の心のストレスです。そのため、「老後資金」といったような目的ではなく、「○○に必要な資金△△万円を作る」という具体的な目的型投資はあまりおすすめできません。

30代・40代の人

30代・40代の人は50代以上の人と比べると、少しの挑戦があっても良いかもしれません。余剰資金があるのであれば、一部の一括投資と積み立ての併用が良いでしょう。

しかし、この年代の人は子どもの教育費の準備などに重点をおかなければいけない世代でもあるため、余剰資金が少ないかもしれません。一方で、その後に必ずやってくる自分の老後資金の準備を始めないと間に合わない世代でもあります。

まずは自分の預貯金の残高の確認と、これから必要となる教育費等を洗い出し、いくらまでなら投資に回せるかを導き出し、その範囲内で、投資の基本の1つである「期間」を最大限利用するため、できるだけ早く投資を始めてみるのも1つかもしれません。

20代の人

20代の人は投資に必要な「期間」を最大の味方にできる年代です。さらには一番冒険のできる世代でもあります。しかし、余剰資金はないという人も少なくないのではないでしょうか。

そのため、積み立てでコツコツ投資を始めるのがおすすめです。少ない金額でも構いません。始めたときから将来に必要になるときまで、投資をやめることなくやり続ける覚悟で始めましょう。 そうすることで、数十年後に投資のメリットである複利(※2)の恩恵をしっかり受けましょう。

投資を始めるか悩んでいる人へ

日本の金銭教育は、いまようやくスタートラインに立ったにすぎず、30代以上の人のなかには、「投資はすべきでない」、「投資は悪だ」といった教えを受けた人もいるぐらいです。筆者もその教育を受けていたので、ファイナンシャル・プランナーでありながらも、頭の片隅にこの考えがあるのも事実です。

しかし今の時代、給料は上がらず、上がるのは物価ばかりです。ただ、このような局面はむしろ、貯蓄から投資へ意識を向けるチャンスかもしれません。もちろん投資には損がつきものであるという一端もぬぐいきれませんが、投資と預貯金のバランスをとりながら、自分にストレスがない方法で投資を始めるとよいでしょう。

出典

(※1)金融庁 新しいNISA
(※2)金融庁 資産運用シミュレーション

執筆者:秋口千佳
CFP@・1級ファイナンシャル・プランニング技能士・証券外務員2種・相続診断士

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