万博まで1年

 巨大なカプセルにモデルが入る。ジェットバスのように泡が噴き出し、全身を洗う。1970年の大阪万博で1日に数回、実演された「人間洗濯機」は人気だったが、実用化されずじまいだった▲いや、“挑戦”は終わっていない。今や80代となった当時の設計者が若い技術者と組み、大阪・関西万博で再び人間洗濯機を展示するよう準備を進めているらしい▲時を隔てて再び夢を追う人は、大阪万博の頃には20代だった。この人に限らず、当時のスタッフは若手が主流だったという▲その万博を彩った、例えば建築家の黒川紀章さんは開幕時に35歳。美術家の横尾忠則さんは33歳。コシノジュンコさんは30歳…▲「万博の歴史」(小学館クリエイティブ、平野暁臣(あきおみ)さん著)によれば、未知の万博にベテランの経験値は用をなさず、〈若い情熱や探究心が最良のエンジンだった〉。それから55年後の博覧会のエンジンはさて、何だろう。大阪・関西万博の開幕日までちょうど1年になった▲経費は膨らみ、準備は遅れて…と、いい話はあまり見聞きしないが、子どもや若い世代が明るい未来をのぞく場であることは古今、変わらない。人間洗濯機の技術者は、いつか介護の分野で実用化されることを望んでいるという。その夢を若い人につなげ、託す好機になるといい。(徹)

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