ジョージ・ミラー監督が明かす「MADな世界の作り方」とは?伝説創生『怒りのデス・ロード』&最新作『マッドマックス:フュリオサ』を紐解く

『マッドマックス:フュリオサ』©︎2023 Warner Bros.Ent. All Rights Reserved

“怒りの戦士”フュリオサの復讐の物語に備えろ!

2015年に公開されるやいなや、そのリアルで圧巻のノンストップ・カーアクションが世界中を席巻し、映画史を変えた『マッドマックス 怒りのデス・ロード』。その創始者にして偉大なる巨匠ジョージ・ミラー監督が再び世界に放つ、伝説のサーガ最新作『マッドマックス:フュリオサ』が、2024年5月31日(金)に全国公開となる。

SNS上では、「フュリオサを糧に生きて行く」「予告で鳥肌立っちゃった」「マッドマックスの新作! しかもフュリオサが主役!? 超見たい! V8を讃えたいッッッ!!!」と期待の声が相次いでいる本作。現在公開中の日本版劇場予告でも、迫力あふれるアクション映像や、謎に満ちたフュリオサの生い立ちが垣間見える映像が映し出され、その全貌が明らかになることが待ち切れないというファンが続出しているようだ。

記念すべき<『マッドマックス』サーガ>の幕開けとなる第1作目『マッドマックス』は、1979年4月12日(金)にオーストラリアで公開された。映画ファンから“神”と称されるジョージ・ミラー監督の生み出す狂気と熱狂の世界は、45年が経っても色あせることなく炎を燃やし続けている。

そんな『マッドマックス』サーガ最新作である『マッドマックス:フュリオサ』に、世界中から熱い視線が注がれる今こそ、前作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』で描かれた狂気的な世界観をおさらいしたおきたい。ということで、『フュリオサ』公開に備えて、あの唯一無二の世界をプレイバックしよう。

『怒りのデス・ロード』の“世界”はどう作られた?

2015年に公開された前作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』は、第88回アカデミー賞で6部門を受賞する快挙を果たす。アクション映画がアカデミー賞で多数獲得することはこれまでに例が少なかったため、映画史に残る伝説として今も語り継がれている。中でも注目したいのは、衣装デザイン賞、美術賞、メイク・ヘアスタイリング賞の受賞からも見られる、その圧倒的ビジュアルの数々だ。

誰もが見たことのない<MAD>な世界(=マッドワールド)を生み出すために、製作には10年以上の歳月がかけられた。何百人もの才能豊かなアーティストたちが集結し、全てが朽ち果てた荒廃した世界を創り出すべく、3500枚のストーリーボード、数千点の小道具、衣装が制作された。

ミラー監督と共に『マッドマックス』サーガを手掛けてきた敏腕プロデューサーのダグ・ミッチェルは、「ジョージ(・ミラー)がストーリーを“視覚的に描く”手間を惜しんでいたら、この映画はやはり実現しなかった。ストーリーボードのおかげで、彼は映画をショットごとに編集することができ、完成までのどの段階においても、それは私たちの指針になったんだ」と語っており、ミラー監督のビジュアルにかける並々ならぬ熱い想いをうかがい知ることができる。

さらに、前代未聞の撮影が行われた現場では、キャスト、スタッフ、そして手作業で組み立てられた、実際に走行可能な150台もの車両が、アフリカ南西部の国ナミビアの砂漠地帯を駆け抜け、激しすぎる究極のカーアクションが作り上げられていった。

「荒野だからといって、人間が美しい物を作らないとは限らない」

『怒りのデス・ロード』の舞台は、世界崩壊から45年後に飛ぶ。もはや大量生産はない。荒野に存在する物は何でも、以前は何かに使われていた物で、それらは再利用されている。そして、そのどれをとっても――武器にせよ、メガネにせよ、フュリオサのメカニカル・アームにせよ――それがいかに崩壊後の世界を生き延びたのかを説明できるロジックを持たなければならない。

そうミラー監督が語るように、終末を迎えた『マッドマックス』の世界では、現代の文明が滅んでもなお生き残ってきた人々の底知れぬ強さや、どこか懐かしさを感じさせるメカや車、バイクのかっこよさが細部までこだわりを見せ、作品の世界観を支えている。

さらに監督は、『怒りのデス・ロード』で意識した美的感覚のこだわりについてもこう語る。

人間が本能的に創意工夫をし、芸術を愛することを考慮に入れることも重要だった。荒野だからといって、人間が美しい物を作らないとは限らない。私は世界中を旅してきたが、貧困にあえぐ文化圏にさえ、パワフルな美的感覚がある。だから、この映画に登場する物はすべて機能をもたなければならなかったが、それだけではなく、愛情と個人的な要素を盛り込んで作られた。人間の体が衰えていく場所で、ああいう物体は生き延びてきた。だからこそ、それらはほとんど宗教的な重要性を持ちうるんだ。

ミラー監督の言葉からは、彼ならではの感受性や美的センスで捉えられたリアルの世界、それこそが『マッドマックス』サーガを唯一無二たらしめる重要なポイントなのだということがうかがえるだろう。

日本でも、映画ファンならば知らぬ者はいないであろう、「V8を讃えよ!」というセリフがバズったり、絶叫上映ほか有志によるイベントが大盛況となり、何度も劇場に足を運ぶ“信者”を生み出すなど、他作品には類を見ない熱狂的なファンダムが出来上がっている『マッドマックス』サーガ。ファンたちがこの世界観に魂を燃やし心酔することができるのは、そのビジュアルやガジェットに対して、ミラー監督をはじめとしたスタッフ陣が一貫したバッググラウンドを持たせているからこそだ。

アニャ・テイラー=ジョイ演じるフュリオサが復讐のエンジンを鳴らす!

そして最新作『マッドマックス:フュリオサ』でも、崩壊した世界の中で生き延びるために改造された渾身のガジェットやメカがエッジの効いたシーンの数々を作り出しており、前作からもさらにパワーアップした<MAD>な世界に期待が高まる。

世界中が待ち望む新たな『マッドマックス』サーガで、”怒りの戦士”フュリオサの新たな物語が明かされる最新作の舞台となるのは、世界の崩壊から45年後。荒廃したマッドワールドが広がる中、すべてを奪われたフュリオサが、復讐のエンジンを鳴らす!

主人公フュリオサを演じるのは、ハリウッド最旬の俳優として熱い視線を集めるアニャ・テイラー=ジョイ。対する宿敵ディメンタス将軍役には、ミラー監督と同じくオーストラリア出身で、MCU『マイティ・ソー』シリーズでもおなじみのクリス・ヘムズワースだ。

前作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』でも、トム・ハーディ、シャーリーズ・セロン、ニコラス・ホルトなどハリウッドを代表する豪華キャスト陣が、これまでの出演作品では見たこともないような狂気さえ感じる熱演で世界中の観客を虜にしたが、MAD<怒り>を体現する戦士フュリオサを新たに演じるアニャは、どんな演技を見せてくれるのか? また、キャリア史上最も非道な悪役になることが予想されるディメンタス将軍を演じるクリヘムも、その新たな魅力の発見に立ち会えることだろう。

『マッドマックス:フュリオサ』は2024年5月31日(金)より全国公開。

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