中学時代は不登校。ゲーム漬けだった僕を変えたのは生徒会活動と砲丸投げだった。鹿児島県高校記録を更新しても「まだまだ伸びしろがある」と胸を張る

県記録会で砲丸投げに出場した弓削大輔さん=県立鴨池補助競技場

■生徒会長と砲丸投げを両立させた弓削大輔さん(18)=鹿児島市魚見町

 「支えてくれた人たちに恩返しする思いで頑張っている」。3月、鹿児島市の県立鴨池補助競技場であった県記録会に「開陽」のユニホーム姿で登場すると、大きく深呼吸をして6キロの砲丸を高々と掲げた。

 足の力も使い、サークルの中で右腕を一気に空へと突き上げる。鉄球は美しい放物線を描いて14メートル以上先へとずしんと落ちた。表情からは充実感がにじみ、「努力の成果が、結果として表れるのが面白い」と陸上競技の魅力を語る。

 高校3年で学校の生徒会長を務めた。今は人前で堂々と話せるようになったが、以前は集団生活が苦手だった。中学2年生の終わりごろから不登校を経験し、「他の人が怒られていても自分が怒られているような気分になってしまう。だんだんと学校に行けなくなった」と振り返る。

 高校進学に対して葛藤もあったというが、通信制の開陽高校に進むことを決断。そして生徒会活動が人生を変える。

 高校に入るまで、人前で話すことはリスクとしか感じていなかったという。そんな状態だったがイベントの裏方をしたり、周囲とコミュニケーションを深めたりすることで成長した。「文化祭の手伝いを通じて自分の行動を感謝されたり、発言を認められたりしたことが素直にうれしかった」

 不登校時代は、好きな時間に起きてゲームに没頭するなど規律とは無縁の生活。高校では生徒会活動や陸上競技で“経験値”を稼ぎ、自分自身のレベルアップにやりがいを感じるようになった。

 昨夏は目標としていた全国高校総合体育大会にも出場。「自分のためだけでなく、誰かのためにという思いが頑張る力になった」と笑う。友達や学校関係者はもちろん、アルバイト先の人たちも自分のことのように喜んでくれた。

 砲丸投げに例えると、苦しんだ中学時代は下半身で踏ん張って力をためる時期だった。24日に宮崎であった記録会で、自身が持つ県高校記録を更新する14メートル87をマーク。「まだまだ伸びしろがある」と胸を張る。

 高校で積み重ねることの大切さを知った18歳は、「言葉は大切。自分が変われば周囲の人たちも変わる」。大学に進んでも、自分なりのペースで歩みを進めるつもりだ。

 ゆげ・だいすけ 2005年生まれ。身長179センチ、体重81キロ。4月から鹿児島国際大に進み、陸上もクラブなどで続ける。小学時代にやっていたソフトボールにも意欲を見せる。

(別カット)砲丸投げの県高校記録更新に挑む弓削大輔さん=県立鴨池補助競技場
県記録会で砲丸投げに出場した弓削大輔さん=県立鴨池補助競技場

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