「イッペイのことなんだけど」 “直球質問”を即遮断…大谷翔平へド軍が見せた優しさ

試合後に取材に応じたドジャース・大谷翔平【写真:小谷真弥】

ド軍広報が声を張り、「野球の質問のみでお願いします」

■パドレス 8ー7 ドジャース(日本時間13日・ロサンゼルス)

ドジャース・大谷翔平投手に二重三重の人垣ができた。松井秀喜氏に並ぶ日本選手最多175本塁打を記録した12日(日本時間13日)のパドレス戦後。「イッペイのことなんだけど……」。ドジャース番記者が“水原事件”の反応を聞こうとしたところ、人垣の外にいたフアン・ドラド広報が声を張った。

「野球の質問のみでお願いします」。質問を遮る毅然とした声。百戦錬磨の米記者も「OK、OK……」と聞き入れるしかなかった。

試合前から重苦しい空気が流れていた。大谷の口座から不正送金したとして訴追された元通訳、水原一平容疑者が午後1時47分にロサンゼルスの連邦地裁に出廷。黒のスーツ、白シャツ姿だったが、両足に金属製の足かせをつけていた。13分後、保釈金2万5000ドル(約383万円)、パスポート返上、大谷と接触しないなどの条件で保釈が決まった。

現地では朝のニュース番組からトップニュースで報道。この日の地裁前にはテレビカメラ20台、スチールカメラ20台、報道陣100人近くが集まるなど、大きな注目が集まった。そして、1か月前まで大谷の超側近だった水原氏が頬がこけた状態で登場する。メディアに身を置く者としては、もちろん質問しないわけにはいかない。それでも……。「オオタニを守る」。ドジャース広報から優しさを感じた。

一番信頼していた水原氏の裏切り。どれだけ切り替えても、大谷の心の傷は消えないだろう。この日の取材では「個人的にもうれしいですし、日本の野球界にとっても大きいこと。個人的には次の1本。切り替えて、また次頑張りたいと思います」と前を向いていた。せめて野球をする時だけは……。辛い思いを忘れる時になって欲しい。(小谷真弥 / Masaya Kotani)

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