「期待」首都3クラブ、横綱不在で「混戦」、優勝は「夏の補強」「新ACL」が鍵【J1リーグ2024年シーズン「波乱の序盤戦」ウラ事情】を大激論(7)

選手層が厚いヴィッセル神戸だが、秋にはACLがスタートする。その影響は…。撮影/原壮史(Sony α1使用)

2024年のJ1リーグが開幕して、1か月半が過ぎた。毎年、予想外の展開となるJリーグは、今季もJ1初昇格のFC町田ゼルビアが首位に立つなど、いくつものサプライズを提供している。驚きにはネガティブなものもあるが、それもまた課題や問題を解決することで、今後のチーム上昇へのヒントとなるだろう。第7節までの発見、そして今後の展望を、ベテランジャーナリストの大住良之と後藤健生が語り明かす!

■東京のチームに「優勝争い」をしてほしい

――今後の注目チームはどこですか。

後藤「まだ見ていないから、セレッソ大阪の試合を早く見たい。第7節で、そのC大阪に0-1で負けたけど、アルビレックス新潟も良い試合をするよね」

大住「東京ヴェルディは勝点が伸びずにいるけど、あの試合内容だったら、これから少しずつ上がっていくんじゃないかなと期待できるよね。FC町田ゼルビアは徹底したインテンシティ(プレーの激しさ、強さ、素早さ)の高いサッカーで首位にいるし、同じ首都のクラブとしてFC東京にも頑張ってもらわないといけないね」

後藤「頑張る雰囲気が出てきたと感じるけどね。良いことだよ」

大住「東京のチームが上位を争うようになったら、Jリーグの雰囲気も変わるんじゃないかな。今まで東京のクラブは優勝していないから」

後藤「ヴェルディが優勝したときは川崎のクラブだったもんね」

■横綱チームの「不在」と町田が「優勝する」条件

――今シーズンのJ1を勝ち抜く要素は何ですか。

後藤「絶対的な力を持って、あらゆる相手を叩き潰していくようなチームはいないよね。数年前の川崎フロンターレやアンジェ・ポステコグルー監督が率いた横浜F・マリノスのようなチームはない。だから、安定感があって落ち込まずに最後まで行けるかが勝負の分かれ目になるんじゃないの」

大住「Jリーグを長い目で見ると、圧倒的なチームがいた時期のほうが短いんだよね。ただ、この5~6年そういうチームがいる状態だっただけで、今は横綱のようなチームはいない。ファンやメディアの中にも、そういう状態に不安を感じる人はいるかもしれないね。とにかく、後藤さんが言うように、最終的に優勝するかは肝となる試合で勝ち切るとか、ケガ人が出ないなど運も影響するかもしれない。でも、ケガを減らすというのは、マネジメントの問題でもあるはず。その辺りをJリーグのチームは、もっと突き詰めていくべき。筋肉系の負傷が続くのには、何かしらの問題があるはずだからね。そういうところもレベルアップさせないといけない。もしも町田が今の固定されているメンバーで最終節まで戦い抜けたら、優勝すると思うよ」

後藤「今年のJ1は2チーム増えて、全38試合になったもんね」

■勝負は「新しいACLが始まる」9~10月

大住「さらに、秋になったら新しいACLが始まる。現在2位のサンフレッチェ広島や連覇を狙うヴィッセル神戸としては、Jリーグとの並行で苦しくなるよね」

後藤「広島はもともと、選手層に問題があるからね」

大住「そうなると9~10月辺りで良いコンディションに仕上がっているチームが、優勝に一番近くなるんじゃないかなあ。そういう状況になっているのが、セレッソかもしれないし、もしかしたら町田かもしれないし。夏の補強も大きいかもしれないよね。うまくチームの弱点を克服できるような選手を取れたら大きいよね」

――スタートダッシュに成功した町田も、2度目の対戦では対策を施されるでしょうし。

大住「それがJリーグの厳しいところなんだよね。フロンターレは町田戦の前半、相手がロングボールを蹴ってくるという意識が強くて間延びしたと鬼木達監督が話していた。選手に対処してほしいところだったけど、2周目の対戦に入ったら、全然違う展開になると思うよ」

後藤「とりあえず、どのチームも町田にロングスローから点を取られないように対策してほしいな。夏の補強もそうだけど、ヨーロッパからの選手の引き抜きも影響するから、どうなるか分かりませんねえ。逆に考えればチャンスのあるチームはけっこうありますよ、ということ。ここ数年のタイトルをほぼ独占してきたマリノスとフロンターレ以外にも、優勝の可能性がありますよってことだね」

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