【家電女優・奈津子】2度の流産と不育症を経ての出産を振り返り。2歳児の育児や、仕事との両立は?

もうすぐ3歳になる男の子を育てながら、俳優、そして「家電女優」としても活躍中の奈津子さん。無事に出産するまでは、2度の流産と不育症の治療を経験しています。そんな奈津子さんに、不育症という不安を抱えながらの妊娠・出産で苦労したことや、最近の育児の様子や仕事との両立方法などを聞きました。

2度目の流産のあと、「不育症かもしれない」と思い、不育症専門クリニックを訪ねました

妊娠後期に、『たまごクラブ』の撮影をしたときのオフショット。このころ、妊娠を公表したそう。

―—1人目を出産するまでに、2度の流産を経験し、「不育症かもしれない」と不安になったということですが、そのときのことを詳しく教えてください。

奈津子さん(以下敬称略) 初めての妊娠で妊娠8週のとき、さらに、次の妊娠では、妊娠14週のときに流産を経験しました。どちらのときも自覚症状はまったくなく、妊婦健診で「心拍が確認できません」と言われて、診察台の上で頭が真っ白になりました。
日本の法律では妊娠12週以降の流産は「死産届」の提出と、胎児を火葬か埋葬をする必要があるので、2度目の流産のときは産声(うぶごえ)のないお産をし、火葬を行い、死産届を提出しました。私はこれまで感じたことのないような喪失感で、数週間は何もできないような精神状態でした。

2度目の流産のときには、胎児の検査もしてもらったんです。でも、とくに問題は見つからず、医師からは「おそらく、遺伝子の問題だろう。2回続くことも、数字的にはあり得ないことではない」と言われました。私は2度も続いたことがショックで、「また次も流産してしまうのでは…」と不安に。インターネットで「流産 2回」と検索ばかりしていました。そんなときに、「2回、あるいは3回以上の流産を繰り返す場合は不育症かもしれない」という情報を知ったんです。すぐに夫にも相談して、不育症の専門クリニックを訪ねて検査を受けることにしました。

―—不育症の専門クリニックはどうやって調べましたか? どのような検査を受けたのでしょうか?

奈津子 流産したことを知り合いに話したときに、その方も流産を繰り返した経験があったということで、不育症の専門医がいることを教えてくれたんです。私自身もたくさん調べるなかで、「この先生がよさそう」と目星をつけていた先生だったこともあり、自宅からは少し遠いのですが、通うことを決めました。

検査の内容は、私の子宮や卵巣、夫の精子の状態をチェックしつつ、血液の精密検査がメインでした。検査の結果、大きな問題は見つからなかったものの、私には妊娠中に血が固まりやすい性質があることがわかりました。先生からは、その性質が胎児に悪影響を及ぼして、不育症のような状態になっているかもしれないと指摘されました。不育症って、医師によって検査や治療方針など、診断についての考え方がさまざまらしいんです。なので、はっきりと不育症という診断があったわけではないのですが、先生は「自分の経験から、おそらく、この血液が悪さをしたのだろう…」と。自覚症状などはまったくなく、詳しく調べてみないとわからないことだったので、検査をする選択をしてよかったと思っています。

3度目の妊娠では、出産する産院の妊婦健診のほかに、不育症専門クリニックの指導を受けながら、出産直前まで血液の凝固を防ぐ薬を服用しました。出産する産院では不育症に関する治療は行っていなかったので、不育症専門クリニックに通院していることと、薬を服用していることを伝えていました。

3度目の妊娠は、周囲への妊娠報告もなかなかできずに苦労。励ましやアドバイスにもナーバスに

出産直後の写真(バースフォト)。笑顔で写っていますが、しばらくは局所麻酔の副作用で強烈な吐きけと寒けに悩まされていたそう。

―—流産を経て、不育症の治療をしながらの妊娠・出産で不安だったことや、大変だったことはありますか?

奈津子 毎回、妊婦健診で赤ちゃんの心拍を確認できるまでは不安で…。赤ちゃんの心音が聴ける胎児超音波心音計「エンジェルサウンズ」を購入して、毎晩のようにおなかに当てて心音を確認していました。
2度の流産があったので、周囲への妊娠報告もなかなかできなくて…。おなかが隠しきれなくなるほど大きくなってきた妊娠8カ月のときに妊娠を公表したんですが、それまではごく一部の人にしか話していませんでした。妊娠による体調の変化もそうですが、声の出方が変わったり、フェイスラインが変化したり、そういったささいなこともすごく影響する仕事なので、妊娠したことを言えないのは、つらかったです。

周囲からのちょっとした励ましやアドバイスの言葉にも敏感になっていました。「次は大丈夫だよ」という励ましの言葉も、やさしさから出た言葉ということはわかっているのに、どうしても傷ついてしまって。あと、できる限りのことはしたくて、妊娠中に控えたほうがいいと言われることにはかなり気をつけていたんですが、「そんなに神経質にならなくても、少しくらいなら大丈夫だよ」と言われると、これにもナーバスに。

逆に、同じように流産を経験した人から「自分の体を信じてあげて」と言われたときは、響きすぎて泣いてしまいました。結果はどうであれ、自分を信じるのは自由だし、すごく救われるいい言葉だなぁって。

―—無事に出産できたときのお気持ちはいかがでしたか?

奈津子 実はお産も結構大変で、計画無痛分娩の予定が、陣痛促進剤の影響もあってかお産の途中で胎児の心拍が乱れてしまって、緊急帝王切開に切り替わったんです。もうろうとした意識の中で、赤ちゃんが泣いている姿が見えた瞬間は心の底から安堵(あんど)し、無事に生まれてきてくれたことにひたすら感謝しました。

わが子はかわいいけれど、初めての育児は動揺の連続。メンタルクリニックや家事の外注など、頼れるものは頼るように

―—息子さんはもうすぐ3歳ということですが、これまでの育児で印象に残っていることは? 最近の様子も教えてください。

奈津子 息子は夜泣きが強烈なタイプで…。2歳くらいまで続いたので本当に苦労しました。「ひよこクラブ」をはじめ、夜泣きに関する情報を読みあさり、なんでも実践してみました。寝室を真っ暗にしたり、無音にしたり、生活リズムを工夫したり…。でも、残念ながら息子にはどれも効果がなくて。私も常に寝不足で疲れていて、当時の記憶があまりないほどです。

イヤイヤ期もうわさに聞いていたとおり大変でした。「食べない」「着ない」はしょっちゅう。あと、「保育園から帰らない」には困りました。母親としてちょっと悲しかったですね。対策として、こっそり大好きなチーズを隠し持って迎えに行って、「チーズあるから帰ろう」って誘っていました(笑)。

私の育児での唯一のこだわりは、絵本の読み聞かせをたくさんすること。息子も絵本が大好きなので、わが家には100冊以上絵本があります。求められたらなるべく読むようにしていて、1日に10冊くらいは読んでいます。そのおかげか、2才後半になると語彙(ごい)がぐっと増えて、最近は「ぼくはどうやって生まれてきたの?」なんて聞いてくることも。こちらも回答力が問われているな…と感じています。

―—育児と仕事の両立で大変なことはありますか? 両立するための工夫は?

奈津子 産後は記憶力や集中力が低下する「マミーブレイン」がひどかったんです。仕事現場のスタッフさんの名前が覚えられないし、台本も入ってこない…。出産や育児で自分の体や脳がこんなに変化することに戸惑いました。生まれてきてくれたわが子には感謝しているし、もちろんすごくかわいいんですけれど、初めての育児は常に動揺の連続だった気がします。

息子は平日の日中は保育園に預けていて、ラジオの生放送などで夜に仕事があるときはベビーシッターさんにお願いしています。夫も家事育児に協力的ではありますが、私の仕事のスケジュールが限界値のときは食事の作り置きや掃除を外注することも。夫婦ともに親が高齢で遠方に住んでいて気軽には頼れない状況なので、第三者の力も借りて回しています。

―—妊娠中から定期的にメンタルクリニックにも通っているとお聞きしましたが、今も継続しているのでしょうか?

奈津子 はい、3度目の妊娠の途中から、出産までの不安やコロナ禍のストレスを解消したくて、メンタルクリニックに通い始めました。今も年に5~6回ほど受診しています。悩んでいることに対して精神科医としての客観的な視点の意見をもらえると気持ちがラクになるし、自分の悩み方の癖のようなものも自覚できるんです。
ストレスケアの方法として「瞑想(めいそう)」をすすめてもらったんですが、私にはそれもすごく合っていて。子どもが寝たあとや、仕事に出かける前などの隙間時間で、瞑想を取り入れて気持ちを切り替えることを習慣にしています。ゆっくり深呼吸をしながら、自分の気持ちを整理することで、育児中の動揺やマミーブレインも少しずつ解消されていきました。

「少しでも誰かの参考になれば…」と、自身の経験を包み隠さず語ってくれた奈津子さん。仕事と育児の両立のため、時には家事を外注していることや、メンタルクリニックへの通院についても詳しく教えてくれました。隙間時間にできる瞑想や深呼吸も、気になる人はぜひ試してみてくださいね。

取材・文/渡辺有紀子、たまひよONLINE編集部

忙しいママ・パパ向け、家電女優奈津子のおきらく家電ライフ

奈津子(なつこ)
Profile
ドラマ「野ブタをプロデュース」で女優デビュー。以降、多くの作品に出演。俳優業と並行してSDN48のメンバーとしてアイドル活動も経験。その際、劇場が秋葉原の電気街に近かったことから家電にハマりグループ卒業後に難関の「家電製品アドバイザー」を取得。現在は家電女優の愛称で活躍しTOKYO FM「スカイロケットカンパニー」レギュラー。4/1放送「GTOリバイバル」などに出演。私生活では150台以上の家電と3歳になる息子を育児中。

公式Instagram natsuko_kaden

公式X @natsuko_twins

公式YouTube 奈津子の家電クリニック

「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。
●この記事は個人の体験記です。(記事に掲載の画像はイメージです)
●記事の内容は2024年3月の情報で、現在と異なる場合があります。

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