幻のポールが見えた2台の速さ。23号車MOTULのクインタレッリと8号車ARTA松下信治が振り返る予選

 2024年のスーパーGT開幕戦岡山の予選、合算方式となった初めての予選では戦前の予想どおり、36号車au TOM’S GR Supraがポールポジションを獲得したが、その36号車のポールを脅かしたのが23号車MOTUL AUTECH Zと、8号車ARTA MUGEN NSX-GTの2台だった。23号車MOTUL Z、8号車ARTAはそれぞれ速さを見せながらも、ミスやQ2での中古タイヤのアタックでチャンスを逃す結果になってしまった。

 予選Q1で2番手にコンマ2秒差をつけてトップを奪ったのは、23号車MOTUL AUTECH Zの千代勝正だった。これまでGRスープラ勢の圧倒的優勢が聞こえてきた中での、Q1トップはまさにサプライズ。そのままポール獲得かと思われたが、予選Q2を担当したロニー・クインタレッリがまさか、Q2で10番手タイムに沈んでしまった。

 23号車MOTUL Zは合算タイムで予選は6番手と悪くないポジションだが、当然、クインタレッリは厳しい表情だ。

「今日の自分の結果には、全然満足していないです。午前中からいろいろ中古タイヤでのセッティングをやっていて、これでタイムが(ニュータイヤに比べて)落ちないだろうというセットアップに変えたのですけど、午後になって路面がだいぶ良くなって、Q2ではかなりクルマのバランスが崩れてしまって気持ちよくは走れませんでした」と、クインタレッリ。

「2周アタックしたのですけど、2周ともフィーリングが思い通りにいかなかった。特にセクター1と、最後のセクターの高速コーナーでバランスが良くなくて、乗りきれなかった感じです」と、予選Q2を振り返る。

 これまでのニュータイヤでの予選に比べて、中古/ユーズドタイヤでの予選アタックには難しさがある。

「やっぱりニュータイヤのようなピークグリップのフィーリングがなくて、微妙なグリップで走らないといけないので、アジャストは難しいですね」と、クインタレッリ。

 特に、これまで13年に渡ってミシュランタイヤを装着してきたクインタレッリとしては、今年から変わったブリヂストンタイヤへの習熟は、まだまだ十分ではない。

「(ブリヂストンタイヤへの慣れは)この周でこの内圧でアタックに入ればいいというような、細かい微調整はもちろん、まだですね。この前の公式テストでは中古タイヤでも予想以上に問題ないなと思って、今日もその感覚で行ったのですけど、うまくいかなかったです」

 それでも、予選6番手。決勝に向けてはまだまだチャンスが残っている。

「ここに来る前に初戦で表彰台に乗って、第2戦、第3戦にという目標があります。予選を終えて6番手で、千代選手のQ1のタイムからも優勝を狙えるポテンシャルはあるので、まずは決勝で最低限、表彰台に乗りたいですし、チャンスがあれば勝ちたいです」

 磐石のGRスープラ、そして王者36号車au TOM’S GR Supraにニッサンのエースチームがどのように挑むのか、楽しみだ。

 そして23号車MOTUL Zと同じく、今回の予選でポールを狙える速さを見せたのが、8号車ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GTだった。練習走行から36号車auに続く2番手タイムをマークして、予選Q1では松下信治が担当し、セクター1では全体ファステストタイムをマークする速さを見せた。

 しかし、松下は最終セクターで飛び出してしまい、四輪脱輪でベストタイムを除外。107パーセントルールによってピットレーンスタートになってしまった。

「すごくいい感じでアタックできていて、たぶんトップタイムレベルの争いができていたと思うのですけど、最終コーナー前のマイクナイトコーナーでギャップがあってジャンプしてしまって、そこでアウト側に飛び出してしまいました。でもそこでは四脱(四輪脱輪)ではなかったのですけど、その勢いのまま最終コーナーで縁石に乗った時に四脱になってしまいました。正直、クルマの出来はすごく良かったので、本当にチームには申し訳ないです」と、アタックを振り返る松下。

「シビックは最初のテストではすごく苦戦していたのですけど、だんだんチームがいいクルマに作り上げてくれて、それを確認することができたので、きちんと形にしたかったです。Q1のクルマのフィーリングはすごく良かった。ですので、本当に申し訳ないです。決勝はピットレーンスタートになってしまうので、あまり何かできる感じではないですし、僕がミスしたわけですけど、ワンミスで今週が終わってしまう感じになってしまうのは……ルールなので仕方ないですけど、切り替えて、明日、頑張るしかないですね」と、肩を落とす。

 GRスープラ優勢の開幕戦で、サプライズとも言える驚きの速さを見せた8号車ARTA、そして23号車MOTUL Z。果たして、決勝ではどのようなパフォーマンスを見せるのか。2台のポテンシャルは、まだまだ高そうだ。

松下信治(ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT)

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