Qi10 ツアー フェアウェイウッドを稲場智洋が試打「芯の広さを感じるツアーFW」

“10K”を受け継ぐFWのツアーモデル 大谷似な豪快スイングコーチの評価は!?

テーラーメイドが提唱するやさしさの新世界基準“10K”。上下左右の慣性モーメント合計値1万kg・m2超えを果たしたドライバーシリーズを受け継ぎ、同社史上最高という慣性モーメントを実現したフェアウェイウッド(以下FW)をピックアップする。果たして、そのやさしさはドライバーに通ずる? いや、それ以上!? ヘッドスピード(以下HS)の異なる有識者3人が採点。顔は“控えめな大谷翔平”&スイングは豪快(HS50m/s)なゴルフテックコーチ・稲場智洋(いなば・ともひろ)がツアーモデル「Qi10 ツアー FW」の試打評価を行った。

「ミスヒットしても飛距離が落ちない ピンにもタイトにも通じる顔」

少し引っかかり気味ではあるが 高さを抑えた強弾道

―率直な印象は?
「チタン製ということでフェースの弾きがしっかり感じ取れ、フィーリングがとても心地よかったです。性能面でも、ミスヒットした際に飛距離が落ちず、常に270~280yd内が安定して出るところは大きなメリットに感じます。少しボールがつかまったり、逃げてしまうケースもありましたが、確実にミートしたときと距離がそれほど変わらない。スイートスポットの広さを実感できるFWだと思います」

セレクトストア限定のチタンモデル

―飛距離性能は高い?
「そうですね。純正シャフト(Diamana SILVER TM50)がやや頼りないところもあり、スピン量は多めに出ていると思いますが(平均2966rpm)、適正な硬さのモデルを挿せば、スピン量は落ち着いて平均飛距離の向上につながるでしょう。ただ、純正シャフトのままでも、意外なことに強弾道で、高さも低めに抑えられていたところを見ると、同シリーズのドライバー同様に飛距離性能は高いことが実感できます。あとはソールのスライディングウエートを、後ろ(HIGH)に持っていけばキャリーが出せますし、前方(LOW)に移せばより球筋を強化できる。標準位置のまま動かさない人も多いと聞きますが、私はウエートをいろいろ動かして調整する派です」

3段階で調整可能な50gのスライディングウエート

―マイクラブと比べてどう?
「現在はピンの『G425 LST FW』を使っていますが、比較すると『―ツアー』のほうがフェースがややディープで、少し上下のミスヒットに強い印象を受けます。形状は同社独特のトウ側に膨らみのあるシルエットですが、ヘッドサイズはほぼ一緒。ピンの使用者も違和感なく構えることができると思います。また、全体的な形状では小ぶりで操作性がイメージできる作りは、タイトリストのFWにも通じる要素が感じられ、長い間使用していた私にとって違和感なく構えることができました」

従来のシルエットを継承した精悍な顔つき

―兄弟モデル「―MAX」、スタンダードモデル」と比べると?
「『―MAX』は、他2機種と比べて顔が極端に違い、後方がかなり長く広く感じられます。大型ヘッドが苦手な私には、どうしても構えたときに弾道イメージが湧かず、出球がどういうふうに生まれるかが想像できないほど…。実際にかなり球が上がりすぎてしまい、飛距離ロスを起こしている感じでした。一方、スタンダードモデルは、『―ツアー』より若干つかまるくらいの微小な違いで、弾道も飛距離もほぼ変わりません。ソールの可変ウエートを利用しない、より軽快に安心して振っていきたい方には、スタンダードがお勧めです」

カチャカチャ(ロフト調整)も含め可変機能は豊富

―3機種の中で選ぶとしたらスタンダード?
「そうですね。選ぶとしたらスタンダードです。私は元々スピン量が少ないため、ドライバーもFWも、スピンが少なすぎてドロップ回転してしまうことが怖い。ですからどちらもスタンダードモデルが一番気楽に振っていける気がします。さらにシャフトを硬くすることを考えるとスピン量がより減ってくるので、『―ツアー』より安心。フィーリング面では、確かにチタンの響きのよさは魅力ですが、スタンダードでもそれほど打感がボヤける感じはありません。それならば、より安心して振っていけるほうを選びたいというのが本音です」

「FWにそれほど操作性を求めていない私は『ツアー』よりスタンダード」(稲場)

―どのような人向き?
「ある程度HSが速く、スピン量が多い人向き。(ドライバーで)45m/s以上はないと理想の弾道の高さは維持できないでしょう。また、シャフトを合わせてハードヒッター向けにセットすることを考えれば、スピードがある人のほうが可能性を広げられます。一方でスタンダードは、その扱いやすさから、かなり幅広い層向け。『―MAX』のサイズの大きさが気になる方はもちろん、『―ツアー』の小ささが気になる方にも当てはまる守備範囲の広さを有しています。逆に、『―MAX』のほうが限定されてしまうのではないでしょうか。弾道が低くて悩んでいる方、インパクト前後では常にソールを滑らせて打つイメージの方に限られてしまう気がします」

選ぶならスタンダードだけど「―ツアー」もしっかり評価【総合評価4.6点】

【飛距離】4.5
【打 感】4.5
【寛容性】4.0
【操作性】5.0
【構えやすさ】5.0

・ロフト角:10.5度
・使用シャフト:Diamana SILVER TM60(硬さS)
・使用ボール:リトルグリーンヴァレー船橋専用レンジボール

取材協力/トラックマンジャパン株式会社、リトルグリーンヴァレー船橋

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