ソフトバンク2年目のイヒネ・イツアが公式戦初アーチ 飛躍誓うドラフト1位の19歳逸材は「全然、ホント、心配とかはないです」

5回1死、右越えソロを放つイヒネ(撮影・永田浩)

◆ウエスタン・リーグ 阪神3―5ソフトバンク(13日、鳴尾浜)

昨年のドラフト1位、イヒネ・イツア内野手(19)がウエスタン・阪神戦で公式戦初本塁打をマークした。「9番遊撃」でフル出場し、5回の第2打席に津田の131キロ直球を捉え、右翼席への勝ち越し1号ソロとした。

プロ2年目で記念すべき公式戦初アーチは、高い放物線を描いた文句なしの一発で、打った瞬間に「まあ、いったかなという感じです」。ナイジェリア出身の両親から受け継いだ高い身体能力を買われ、今季のウエスタン・リーグで「開幕スタメン」にも座った期待の星が今、着実に成長の跡を見せている。

米大リーグでも、未来のスター候補と見込まれた逸材に関しては、マイナー時代から一定の出場機会を与えることで試合に出るリズムをつかみ、プレーのレベルも上げていくという〝英才教育〟が施される。

ルーキーイヤーの昨季は、右膝痛などに苦しんでウエスタン・リーグの公式戦出場はなく、3、4軍の非公式試合でも22試合出場にとどまったが、184センチ、78キロの、まだまだ成長中の恵まれたサイズを誇る大型ショート。ポスト今宮の期待がかかるプロスペクトについて、松山2軍監督も「彼は持っている身体的能力にすごくいいものがある。その〝いいもの〟が出ればと思っているんです」と語る。

今季は22試合中14試合で「9番遊撃」でスタメン起用。この日の公式戦初ホームランを含めてもまだ4安打目で、ちょうど1割という低打率だが、そうした成績を度外視してでも、将来を見据えての経験を積ませている、その真っ最中というわけだ。

その〝本格デビュー〟ともいえる今季のスタート時は「守備の方が不安やったんですけど(打と)逆転していますね」と松山2軍監督。ここまで出場18試合でショートでの守備は失策0。この日は5回に高寺の緩いゴロを素手でつかむと、ステップを踏まずにスナップスロー。セーフにはなったものの、身体能力の高さをうかがわせる躍動感あふれる動きは随所に目立ち「守備は予想以上。もっと大変かと思ったんですけどね」と松山2軍監督は語る。

ところが、打つ方では〝プロの壁〟に早々にぶち当たってしまった。「別にスピードとかに戸惑ったわけじゃないです。ただ(ボールを)捉えられなかった、という感じです」。先月19日の出場3試合目で初安打を放ったが、その後は出場11試合でヒットが出なかった。

今月10日のオリックス戦(タマスタ筑後)で2本の二塁打を放って「兆しが見えてきました。その中でも良かったり、良くなかったり、色々という感じですけど」という上昇機運の中で飛び出した公式戦初アーチ。イヒネも「きょうは結構、いい感じでいけました」と手応え十分だ。

松山2軍監督も「彼にとってもホントにいいタイミングでいいホームランが出た。これを機に乗っていってほしいですね」と期待をこめ、さらに「当然、1軍でやることが目的。そこに乗っかっていくためには、今のままでは全然無理だけど、かといって、全然悪いわけじゃない。今の守備も打撃も日々進歩しているのは感じる。それを続けていってほしいですね」とハッパをかけた。

「これからも(試合に)出続けたいな、と思っています。たくさん練習していますし、自信を持ってプレーしているというか、その中でもミスはあるかもしれないですけど、自分の中では全然、ホント、心配とかはないです」とさらなる飛躍を誓う19歳。近い将来にペイペイドームで躍動する日が待ち遠しい。その夢を託せる逸材であることは、間違いなさそうだ。

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