諦めない姿見せたい ツエーゲン嶋田選手 熊本・益城出身

熊本地震に遭った時を振り返る嶋田選手=金沢市内

  ●二つの大地震 被災地に寄り添い

 能登半島地震の被災地・石川に拠点を置くサッカーJ3・ツエーゲン金沢の嶋田慎太郎選手(28)は熊本県益城町(ましきまち)で生まれ育った。J2・ロアッソ熊本在籍中に起きた熊本地震から14日で8年。図らずも二つの大地震と縁を持った背番号10は「どんな逆境の試合でも諦めない姿勢を見せたい」と被災地に思いをはせ、ピッチに立っている。

 2016年4月14日、嶋田選手は、熊本市内のアパートで大きな揺れに遭った。立っていられないほどの激しい揺れに恐怖し、収まるとすぐに外に出て家族や友人の安否を確認した。益城町は震度7を2回観測。実家は半壊し、家具などが倒れてぐちゃぐちゃになり、住めなくなった。

 「サッカーどころじゃなかった」と嶋田選手は当時を振り返る。チームは練習すらできず、全国から届いた支援物資を他の選手と一緒に避難所に配って回った。

 5月22日、千葉県柏市のスタジアムで久々に実施された「ホーム戦」では多くのファンから声援を受けた。被災地に向けられた温かいエールに「あらためてサッカーをする幸せを感じた」という。

 ロアッソ熊本、大分トリニータ、大宮アルディージャを経て、ツエーゲン金沢は今季で加入4シーズン目を迎えた。

 能登半島地震が起きた元日は、建て直した熊本の実家にいた。テレビの画面が災害報道に切り替わり、大津波警報の文字が目に飛び込んできた。「ただ事じゃない」。慌てて知人らに連絡を取り、無事を確認した。

 熊本と石川。二つの被災地を背負う運命は「驚きしかない」と嶋田選手。だが、「熊本で被災した経験があるからこそ、サッカー選手としてやるべきことは分かっている」と前を向く。

 「避難所で生活する人が試合に足を運ぶこともある。僕たちはピッチでひた向きにやっている姿を見せないといけない。そういう姿は被災地で見てくれている人に必ず響くと思うから」。寄り添う気持ちを胸に刻んでボールを追う。

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