「軍艦島(端島)を忘れないで」~亡き妻に贈る 第6話~

夫婦岩から見る風景

春待ちこころに さえぎる冷たい風

季節はすでに春 いつまでも上着が軽くならない

そんな奇妙な日々でも 心のどこかに

凍りついた気持ちは 次第にとけてゆく

春待ち時間は 誰も変わらない

花筏~今年の春~

明日はきっと 上着の一枚が 風に舞うはず

春待ちこころに 本当の春がくる

軍艦島の春待ちも近い

公園の花筏には 河の流れのやうな

散りぬる模様の心の迷いがある

桜の川に流れる瞳そこにあらず 遠い未来にある

髪にひとひらの桜の花が舞う日

人生もひとつひとつの季節を 迷いながら流れているのだろう

できることならば、妻に語りかけてみたい

旅立った妻に追いつく、流れはないだろう。しかし、妻が見なかった季節をいつか同じ川に乗り継いだら、彼女にたくさん語りたい。

船から端島小中学校の姿を見る

人は人生の試みの中でそこに集中していく時間が何度もある。

生きているという実感には程遠い日々もあるけれど、だけど、そこに執着する日が来たときに、何故かその場所に命をかけようとし始める。敵もいる味方もいる。どちらかといえば敵の方が多いのが、自分の夢の場所かも知れない。

「そのような場所であっても、そこに行き着くのですか?」と考える若い日の自分がいるのです。でも、苦労をしてでも、そこに到達したい生きる自分がいるとすれば、そこに導いていく自分でありたいと思う。

桜花をバックに妻の姿

明日など、だれも予想できる神様でないのであれば、明日に希望をかけてみても良いのかな、と生きてきた時間に魔法でもかけてみたい今夜でもあります。

だけど、不思議なことに、夢の世界遺産になりました。今はたくさんの方が訪れる軍艦島の裏に隠れた私達の思いが伝われば幸いです。

母さん(妻)と私の夢が実現した。

けれど、母さんが先に天国にいってしまったのは語れる一番の私の夢が失くなった「20年前から今の自分へ」

今日14日は、半年目の月命日です。

(つづく)

夢を語る筆者

これまでの寄稿は、こちらから(https://tms-media.jp/contributor/detail/?id=21)

寄稿者 坂本道徳(さかもと・どうとく) NPO法人 軍艦島を世界遺産にする会 理事長

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