大阪・関西万博 開幕まで1年 神戸のエキスポ・ウオッチャーが語る”レガシー(遺産)”とは?

「太陽の塔」プロジェクションマッピングと「1970大阪万博展覧会」東京会場での“エキスポ・ウオッチャー”二神敦さん

大阪・関西万博開幕まで1年。国と関西の各自治体は機運醸成策をはかる一方で、1970年大阪万博から50年の年月を経てもなお、何かと比較されることも多い。
”エキスポ・ウオッチャー”と自負する神戸市北区の会社員、二神敦さん(ふたかみ・あつし)さんは、1972(昭和47)年生まれ。1970年大阪万博のことは知らない。

【画像】エキスポ・ウオッチャーが見たものは…

二神さんは1981(昭和56)年、8歳の時に開かれた「神戸ポートアイランド博覧会(ポートピア’81)」以降、小規模なものも含めて国内外で開催された163の博覧会を訪れた。

学生時代には博覧会でのパビリオン運営業務に従事。就職後は、淡路花博や愛知万博などの博覧会はもちろん2002FIFAワールドカップ、2007世界陸上大阪大会、2019ラグビーW杯など スポーツ系も含めた数々のイベントでボランティアスタッフを経験している。
そして2018年11月、2025年に大阪での万博開催が決まった時は、フランス・パリで行われた決選投票を中継した大阪市内のパブリックビューイング会場にも駆け付けたほどだ。

大阪・関西万博をめぐっては、資材費の高騰などによる予算を底上げが物議を醸している。

当初の1250億円から2020年に1850億円、2023年には2350億円まで増額された。これ以外に少なくとも800億円あまりの国費負担が生じるという。
シンボルとされる「大屋根リング」の建設費は約350億円と、国会でも「無駄遣い」と批判されるなど、2023年11月の開幕500日前から批判の勢いが増してきた。

二神さんは2024年3月、1970年大阪万博の“レガシー”と最新テクノロジーが大阪・関西万博に繋がる“未来”を体感する「1970大阪万博展覧会」を訪れた。

「アート&サイエンスフェスティバル」は大阪・吹田市の万博記念公園で、「1970大阪万博展覧会」はこれに関連する神戸、東京の巡回展示で、単なるノスタルジーではない、“現在進行形”の大阪万博を堪能した。

そして、ラジオ関西の取材に対して、レガシー(遺産)として語り継がれる1970年大阪万博と、開幕1年前となった大阪・関西万博を比較して、次のように話した。

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当時のニュース映像や新聞記事、記録集などで振り返れば、高度経済成長期の大成功イベントとして、当時から礼賛一色だったと思われがちな1970年大阪万博でも、実は“ハンパク(反博=反万博)”といった風潮も生まれ、抵抗勢力の行動も活発だったようだ。

そう考えると、賛成派と同じくらい反対派もいるほうが、なんだか健全というか、抵抗勢力の存在をも認める当時の風潮こそ、まさに多様性を表していたように感じる。そういう意味では、今より先を行っていたのかも知れない。

そして、30年後に21世紀を控えたこの時代、”未来への憧れ度合い”はとても高かったように感じたが、その内容は意外にも現実的。数々の映像に見える携帯電話やドーム建築などは、現在すっかり生活に溶け込んでいる。
その一方で、一見突飛に感じられる「タカラ・ビューティリオン」のユニット建築はカプセルホテルに、「サンヨー館」の人間洗濯機は介護用の浴槽としてアイデアが派生するなど、奇をてらったように思われた当時の展示物が、予想もしなかった方向で生き残っていることが、なんだか不思議に感じられる。

2025年大阪・関西万博では、「何をレガシーとして残すのか?」というころが盛んに議論されているが、おそらくそれは、恣意的に残そうとして残るものではないように思う。意図をしなかったのに、半ばひとりでに残ってしまったものこそがレガシーであり、意識されないレベルまで到達したものが、万博の開催意義を静かに伝えてくれるのだと思う。

2025年から半世紀後、2075年に当たり前になっているもの、「実はコレ、50年前の万博で初披露されたモノらしいよ」などと発祥が忘れられるぐらい、未来の我々に欠かせないものが、真のレガシーなんだと思う。

1970年大阪万博をリアルに感じることができなかった第2次ベビーブーム世代の私が、いまやエキスポ・ウォッチャーとなり、当時の熱狂ぶりに加われなかったために、実体験した世代がうらやましい。その世代からは、「2度目の大阪万博は、オレたちの時代(1970年)を越せないと思う」と言われることもしばしばある。

しかし、新進気鋭の建築家や芸術家が総力を結集したパビリオンや催事が、メディアを通じて日々報じられている。きっとこの中から、未来の岡本太郎や丹下健三が誕生するのだろうと感じずにはいられない。

《「エキスポ・ウオッチャー」二神敦さんインタビュー 終》

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