上司から、「タバコを吸ってくるからその間に報告書作っといて」と言われました。これって”不公平”じゃないですか?

不当な業務の強制はパワーハラスメントにあたる可能性がある

職場で上司あるいは高い地位にある役員から不当な業務の強制や時間外労働を強いられた場合、パワーハラスメント(以下:パワハラ)に該当する可能性があります。パワハラの定義は厚生労働省によって定められており、主な条件は以下のとおりです。

__・優越的な関係に基づいて(優位性を背景に)行われること
・業務の適正な範囲を超えて行われること
・身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、又は就業環境を害すること__

パワハラは暴力行為や発言のみが当てはまるわけではなく、一定の立場にある人間がその権力を不当に振りかざす行為も含まれます。

就業規則に抵触する可能性がある

一般的な企業の就業規則では、パワハラにあたる行為は違反の対象になります。例えば厚生労働省が掲載しているモデル就業規則においては、パワハラについて以下のように禁止しています。

「職務上の地位や人間関係などの職場内の優越的な関係を背景とした、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により、他の労働者の就業環境を害するようなことをしてはならない。」

今回の事例のように、上司がタバコ休憩の間に不当な業務を強制した場合、当該基準に照らし合わせればパワハラとみなされる可能性もあるでしょう。ただし、状況と条件次第ではパワハラに該当しないケースもあります。

パワハラにあたるかは状況次第

今回のケースでは「上司のタバコ休憩中に報告書の作成を指示された」といった問題です。このような行為がパワハラに該当するかは、前後の背景と頻度が大きく関与します。

例えば、指示の前後に自身が休憩をもらっていて上司がその間に働いていた場合、勤務時間の釣り合いはとれているといえるでしょう。また今回のケースが高頻度ではなく、一時的に発生しただけの場合には、パワハラと断言するのは難しいかもしれません。

上司がタバコ休憩をとる行為自体は問題がないため、重要な点は指示の内容と前後に不公平な要素があるかどうかになります。

パワハラとして訴訟におよんだ場合にかかる費用や賠償金

上司の不公平な指示が日常的に発生しており、対象となる従業員に身体的・精神的苦痛をおよぼした場合、パワハラとして訴訟する選択肢も考えられます。そこで、パワハラで訴訟に発展した場合にかかる費用や賠償金の目安について解説します。

訴訟費用

訴訟を起こした場合、まずは原告側(訴訟を起こした側)が裁判費用を負担します。勝訴すれば訴訟費用を被告側(訴えられた側)に請求できますが、一時的にこちらが負担しなければならないケースがほとんどです。

この場合には、具体的な訴訟費用として以下のものが挙げられます。

__・裁判所手数料
・書類などの郵送にかかる郵便料
・証人の旅費__

これらの費用のうち、裁判所手数料に関しては訴訟の請求額に応じて金額が変動します。訴訟時にかかる裁判所手数料は、表1の方法で算出されます。

表1

裁判所「手数料」を基に筆者作成

例えば、訴訟時の被告への請求額が400万円の場合「1万円+1000円×(400万円-100万円)÷20万円」で、裁判手数料は合計2万5000円となります。

なお、訴訟に際して弁護士をたてる場合には、弁護士費用は訴訟費用に含められませんので、気をつけましょう。

損害賠償

勝訴した場合、こちらの被害相当額に応じて損害賠償を相手に請求できます。損害賠償として請求できるお金は、主に以下のとおりです。

__・慰謝料
・治療費
・休業被害__

不公平な指示は訴訟の前に相談しよう

パワハラは現代では大きな社会問題として考えられます。直接的な損害を被った場合は訴訟も視野に入りますが、訴訟にはお金や手間もかかるため、最終手段として行使する方法をおすすめします。そのため、まずは会社や労働基準監督署に相談して、待遇の改善に努めましょう。

出典

厚生労働省 パワーハラスメントの定義について 職場のパワーハラスメントの概念について(1ページ)
厚生労働省 モデル就業規則について モデル就業規則(令和5年7月) 第3章 服務規律 (16ページ)
裁判所ウェブサイト 訴訟費用について
裁判所ウェブサイト 手数料
裁判所ウェブサイト 別表(民事訴訟費用等に関する法律別表第1(第3条,第4条関係))
裁判所ウェブサイト 手数料額早見表

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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