創立100年迎えた小学校に6年ぶり新入生 緊張しながら「運動と算数を頑張ります」 沖縄・西表島の船浮小で入学式 船が唯一の交通手段 集落挙げて祝賀会

学校の前で緊張した面持ちの池田佑斗さん(左)と笑顔を見せる姉の真歩さん=8日、竹富町西表の船浮小中学校

 【西表島=竹富】西表島最西端の船浮集落にある竹富町立船浮小中学校(山城篤校長)で8日、6年ぶりに小学校の入学式があった。入学したのは池田佑斗さん(6)。中学生になった姉の真歩さん(12)以来となる新入生だ。この日に合わせて県外から駆け付けた人もおり、集落はお祝いムードに包まれた。(八重山支局・矢野悠希)

 船浮集落には約40人が暮らす。陸路が整備されておらず、船が唯一の交通手段で、隣の白浜集落まで10分ほどかかる。「陸の孤島」とも呼ばれる。

 同校は1924年に「船浮部落学校」として開校し、ことし創立100年を迎えた。創立当初から児童生徒数は少ないが、近年は特に、減少傾向が著しい。本年度の在籍は小学生2人、中学生2人で、前年度より1人多い計4人。同学年生はおらず、学年をひとまとめにした複式学級だ。

 そんな極小規模校だからこそ、地域との関わりが深い。住民は学校のどんな行事にも顔を出し、成長を見守る。教員宿舎の修繕や校内外の草刈り、グラウンドの整備なども、ここでは住民が「やっておくよ」と率先する。

 山城校長は「人数が少なくても地域の大きな愛に包まれ、子どもたちが主体的に、豊かに学べる環境がある」と胸を張る。

 雨の予報が出ていたこの日は朝から青空が広がり、蒸し暑くなった。シャツにネクタイを締めた佑斗さんは母親の由夏さん(51)、中学校のセーラー服に身を包んだ真歩さんと一緒に登校した。式開始前になると住民らが続々と体育館に集まった。

 大人たちに見守られながら入場した佑斗さんは緊張からか小さな声で「運動と算数を頑張ります」、真歩さんははきはきと「小学校にはなかった出会いや授業、行事などが楽しみです」とそれぞれあいさつし、会場から温かい拍手が送られた。

 夕方には、教員や住民、県外からの知人らが近くの飲食店に集まり、祝賀会が開かれた。山で捕れたイノシシの鍋や新鮮な魚介類の刺し身などが振る舞われ、船浮のごちそうに舌鼓を打った。

 テレビニュースで同校の入学式が取り上げられ2人が映ると、会場は大盛り上がり。佑斗さんは頬を緩めて画面を見つめ、真歩さんは「見ていられない」と照れくさそうに柱の陰に隠れた。

入学式を報じる夕方のテレビニュースに見入る住民ら(いずれも写真家・山下恒夫さん提供)

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