悔やんでいます…40代娘と同居解消、年金20万円・70歳の父「老人ホーム入居」も3ヵ月で<体重10キロ減>→<退所>の「まさかの理由」

妻に先立たれた夫。全面的に家事は妻が行っていたから、ひとり残された夫の生活は荒れに荒れる……よくあるパターンです。そんな心配を解消するひとつの選択肢が「老人ホーム」への入居。食事から掃除、洗濯……と身の回りのことはすべてやってくれるから、家事はてんでダメという人でも安心です。しかし入居したらそれで安心というわけではなく、なかには退所に追い込まれるケースも珍しくありません。みていきましょう。

実家で暮らす父娘だったが…娘の再婚を機に同居解消も「父を残していくのが不安」

再婚を機に、夫の母国に移住することになったという40代女性。気がかりだったのは、同居している父の存在だったといいます。

前回の結婚の際に実家に戻ってきたのは、遡ること10年前。そのときは母も存命で、むしろ父からは「離婚で出戻りなんて……」と嫌味をいわれたといいます。しかし母が亡くなってからは、女性が母代わり。身の回りの世話はすべて行ってきました。

――家事なんて、何もできない人だから

そんな父を残していくのはあまりにも不安なことでした。とはいえ、「私と一緒に海外にいく?」というのもあまりに非現実的。そんなときに親戚から勧められたのが老人ホーム。介護を必要としない健康な人でも入ることのできる施設があるといいます。

民間企業が運営する「有料老人ホーム」は大きく「介護付き有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」「自立型有料老人ホーム」の3つがあります。

介護付き有料老人ホームは介護を必要とする高齢者が、洗濯や清掃等の生活支援と、食事や入浴、排せつなどの介助サービスが受けられる老人ホーム。介護度が軽い人から重い人まで、また認知症の症状がある人まで、幅広く受け入れています。家賃の前払いにあたる入居一時金はゼロ~数千万円。月額費用は15~30万円程度。

住宅型有料老人ホームは、自立状態の人から要支援・介護の人まで幅広く受け入れている施設で、生活支援が受けられるほか、介護が必要な場合は外部サービスを利用します。入居一時金はゼロ~一千万円程度。月額費用は15~30万円程度。

自立型有料老人ホームは、自立状態のある人だけが入居可で、生活支援サービスがついた老人ホームです。健康な状態を維持することを目的のひとつとしているので、設備も充実。要介護になった場合は退去となりますが、介護施設や病院が隣接するケースも珍しくありません。入居一時金はゼロ~数億円、月額費用はおよそ15~40万円程度。

40代娘は海外へ、70歳の父は老人ホームへ…3ヵ月後の再開で娘、驚愕

国土交通省の資料によると、有料老人ホームを含む、高齢者向け施設に入居しているのは全国で224万人。2023年9月15日現在、日本の高齢者は推計で3,623万人なので全体の6%。決して、高齢者の住まいの主流ではありませんが、少ない数字ではありません。

――自宅で住み続けるのは大変だからと、老人ホームに入居する人も増えているみたい

と親戚。確かに、老人ホームであれば、家事が苦手(というよりも、やっているのを見たことがない)な父にとってはうってつけだと考え、父に提案したとのこと。初めは「俺はまだ70歳だぞ、老人ホームなんて」といっていたものの、実際に見学しにいくと「悪くはないな」と満更でもない様子だったといいます。

父の希望は、

・月額費用は毎月の年金で賄えるところ(父の年金は月20万円ほど)

・自宅に戻りたいときに戻れるよう、ある程度の自由がきくところ&自宅からの比較的近いところ

そんな条件にあう施設を3軒ほど見学し、そのなかのひとつに無事、入居が決まったといいます。

同居を解消し、父は老人ホームへ、娘は海外へ。新しい生活が始まって3ヵ月後、女性はたまたま帰国する機会があり、ついでに父の様子を見にホームに面会しにやってきたといいます。そこで衝撃的な父の姿が……。

――おっ、お父さん、どうしたの?

以前よりも明らかにげっそりしている父。3ヵ月で体重が10キロほど落ちてしまったといいます。

――何があったのよ

――……美味しくないんだ

――えっ⁉

――食事が美味しくないんだ

話を聞いていくと、ホームで提供される食事は味が薄く、口に合わないんだとか。「一緒に住んでいるときは、私の口に合わせて食事を作っていたから、濃い味付けだったからな……」。健康に気を遣った食事も、父の口には合わず、日に日に食べる量が減っていったといいます。たまに自宅に戻って自炊……これも父には無理な話でした。

――外で何か買ってきて食べるというのは?

――そんなもったいないことできるか。ちゃんと食事代を払っているのに

健康に良い食事のはずが、父は不健康に……なんとも皮肉な話ですが、このままでは父が倒れてしまうと、一旦、老人ホームは退所し、一時的に親戚の家へ。「きちんと見学には行ったが、きちんと試食をさせてもらうべきだったな」と後悔の念を口にする父。新たに「食事が口に合うところ」という条件を加えて、見学を続けているといいます。

[参考資料]

厚生労働省『高齢者の住まいに関する現状と施策の動向』

© 株式会社幻冬舎ゴールドオンライン