『毎日1万歩歩く』『野菜ジュースで食物繊維』はNGだった!“健康のプロ”たちが明かす、生活習慣と食事の新常識

歩きすぎはむしろ良くない?

広く知られ、実践されてきた “健康常識” は本当なのか。

東京都市大学人間科学部学部長・早坂伸哉医師、明治国際医療大学鍼灸学部鍼灸学科学部長・伊藤和憲氏、東北大学大学院医学系研究科運動学分野准教授で運動疫学者の門間陽樹氏、管理栄養士の望月理恵子氏ら専門家は、そんな“常識”に異を唱える。

今回は、常勤の専門家らが、「やってはいけない健康法」を解説。アナタの常識は、もう古いかも?

【1】目標は1日1万歩! 歩けば歩くほど健康にいい
<40~50代は8000歩が目安>

「1万歩は歩きすぎです。40~50代では1日8千歩が目安。心拍数を上げすぎると体に負担がかかって、疲れが溜まってしまい、逆効果です」(伊藤氏)

【2】寝不足なので、休日は10時間寝溜めしている
<毎日7時間程度の睡眠を>

「7時間睡眠を上回っても下回っても、糖尿病のリスクがあることが研究でわかっています。睡眠は『総量』より7時間程度に保つことが重要。休日も寝すぎないことです」(伊藤氏)

【3】風呂の温度は42度、熱めのお風呂に入って体を休ませる
<40度で10分浸かる>

「熱い風呂は体を目覚めさせてしまいます。40度までのお湯に10分間肩まで浸かると、副交感神経のスイッチが入り、安眠効果が期待できます」(早坂氏)

【4】マッサージは強めに、痛いくらいやるからコリがほぐれる
<「痛い」は強すぎるサイン>

「マッサージで痛いのは、筋肉が傷つけられている証拠。血流改善のためには、『やさしく撫でる』程度が最適です」(早坂氏)

【5】風呂やサウナには、汗をかいても我慢して長く入る
<「我慢する入浴法」は厳禁>

「汗をかくまでの入浴やサウナは、体温が上がりすぎていて、熱中症の危険があります。汗をかいたら出る、風呂でも水分補給を欠かさずに」」(早坂氏)

【6】関節の硬さは疲れの原因。無理してでも伸ばしたほうがいい
<ケガ予防は「無理なく伸ばす」>

「痛いほどのストレッチは逆効果で『伸ばすな』のサインです。40~50代なら、無理のない範囲でのストレッチが、ケガの予防につながります」(伊藤氏)

【7】痛みがあるところには冷たい湿布を貼り続けている
<熱感がなければ温湿布に>

「冷湿布は炎症を抑えるためのもので、最初の2日ほどは効果的ですが、以降は血流を悪くするので逆効果。ケガをした箇所に熱感がなければ温湿布で温めて、血流をよくしたほうが回復には有効です」(伊藤氏)

【8】片頭痛持ちなので、気圧が低いときは事前に痛み止めを飲む
<別の痛みを引き起こすかも>

「痛み止めの一部は、痛みがある箇所への血流を悪くして症状を和らげます。頭痛などが起こる前から薬を飲むと、「薬物依存性疼痛」になる可能性も。自己判断はNGです」(伊藤氏)

【9】エレベーターは絶対使わない。階段を4階ぶん上っている
<健康のためなら1~2階>

「階段で複数階上ると、筋肉に血液を循環させるため、心拍数が急上昇して心臓に大きな負担をかけます。40~50代なら、1~2階ぶんなら適度な運動になりますが、それ以上はオーバーワークです」(伊藤氏)

【10】昨日は食べすぎたから、今日は1食ぶん減らそう
<毎日同じ回数と時間に>

「食事も睡眠も、毎日のリズムが大事です。例えば毎日2食しか食べないと、2回で栄養を吸収しようとする体質になってしまい、例外的に4食食べると、栄養を吸収しすぎて栄養過多に陥ります。毎日同じ量・タイミングでの食事を心がけましょう」(伊藤氏)

【11】とにかく歩くときは早歩き。少し汗をかいてリフレッシュする
<100歩/分、ゆっくりが◎>

「ストレス軽減のための散歩なら、ゆっくりと15分ほど歩くのが効果的。ちょうどよいのは、『アンパンマンのマーチ』と同じテンポ、1分間に100歩程のリズムです」(門間氏)

【12】平日はジムに行けないから、休日はみっちり3時間筋トレ
< 週130分超で死亡リスク増>

「研究結果によると、週130分を超える筋トレをおこなっているとまったくやっていない場合よりもリスクは高まることが示されています」(門間氏)

【13】運動のあとはクールダウンすれば筋肉痛にはならない
<しなくても効果に差はない>

「運動後にはストレッチなどのクールダウンをおこなうのが一般的ですが、研究ではストレッチをしなくても、筋肉痛を防ぐ効果に差はないと報告されています」(門間氏)

【14】熱中症予防のために、スポーツドリンクを何本も飲む
<糖分多いので水道水で十分>

「スポーツドリンクや経口補水液には多くの糖が含まれており、脱水症でないのに飲みすぎると、糖尿病の発症リスクがあります。日常生活では、普通の水を2時間おきにコップ1杯飲む、で十分です」(望月氏)

【15】夜食のカップ麺は、低糖質にして健康に気を使っている
<2個以上で食物繊維過剰に>

「低糖質カップラーメンの多くは20kg以上の食物繊維が含まれています。厚労省の基準値は、女性18kg以上、男性21kg以上ですから、2個以上食べると基準値の倍以上の過剰摂取となってしまい、便通トラブルや栄養素の吸収阻害リスクが高まります」(望月氏)

【16】太りたくないし体によくないから、油物は極力控える
<油物の控えすぎが便秘促進>

「油は腸の運動を活発にするので、油を極端に減らすと便秘のリスクが高まります。体重が気になる人は、代謝改善にいいとされる魚油や亜麻仁油、エゴマ油がオススメです」(望月氏)

【17】心臓病予防のため赤ワインでポリフェノールを摂取
<赤ワインより緑茶が◎>

「『赤ワインに含まれるポリフェノールが、心疾患に効果的』と言われていました。しかし、健康効果より、アルコールによる害のほうがはるかに大きく、肝臓にダメージを与えます。心疾患予防には、同様の効果が報告されていて、多くのポリフェノールを含む緑茶を飲みましょう」(望月氏)

【18】飲む乳酸菌ヨーグルトで、体調を整える
<飲むタイプは血糖値上昇に >

「乳酸菌摂取のためにヨーグルトを摂取する人は多いですが、固形タイプと比べて飲むタイプは糖類が添加されていることが多い。固形より液体のほうが糖質の吸収効率が高まるので、血糖値上昇を招きやすくなってしまいます」(望月氏)

【19】タンパク質はなるべくたくさん摂って、体を丈夫に
<取り過ぎで尿路結石発症も>

「肉や魚などの動物性たんぱく質の取り過ぎは、尿中に尿酸が多くなり、尿路結石の原因になりえます。成人なら、1食で20kgずつのたんぱく質が体にいいとされています」(望月氏)

【20】濃い味は体によくないので、なるべく薄味を心がけている
<薄味が食中毒リスク高める>

「塩や砂糖など、多くの調味料には殺菌効果があり、控えすぎると食中毒菌が繁殖しやすくなります。春夏にはある程度の使用が安全です」(望月氏)

【21】風邪予防のためにビタミンCをたくさん取る
<ビタミンCは効かない>

「たしかにビタミンCには、免疫を整え、細胞の老化を防ぐ効果があります。しかし、ビタミンCで風邪の罹患期間が短くなるという報告はあるものの、風邪予防になるという研究結果はありません」(望月氏)

【22】グルテンフリー食(小麦抜き食)を取り入れている
<糖尿病リスクを高める>

「小麦などを抜いて、脂肪や糖の過剰摂取を抑えようとする『グルテンフリー』は、米国の学会誌でも『健康な人に効果的という根拠はない』と報告されています。むしろ、2型糖尿病の予防に働く食物繊維の摂取量が減り、発症リスクが高まります」(望月氏)

【23】野菜ジュースを飲めば、食物繊維摂取はバッチリ
<野菜ジュースでは取れない>

「野菜ジュースは野菜や果物から加工されると、食物繊維の80%が失われるといわれています。効果を期待するなら、ジュースではなく野菜そのものを食べましょう」(望月氏)

【24】朝は油物じゃなくて干物を食べる
<塩分が多いので夜が◎>

「朝に取った塩分は、排泄が悪く体に蓄積されやすい。干物の塩分濃度は、1~4gと非常に高く(目玉焼きは通常0.5gほど)、食べるなら排泄がいい夜がオススメです」(望月氏)

【25】貧血対策のために、ほうれん草をたくさん食べている
<食べるなら肉や魚と一緒に>

「ほうれん草には、鉄分が多く含まれています。しかし、植物性の鉄分は吸収が悪いうえ、ほうれん草には鉄分の吸収を阻害するシュウ酸が多く含まれています。アク抜きをして肉や魚などと食べると、鉄分の吸収がアップします」(望月氏)

【26】便秘予防のためになるべく多く食物繊維を取り入れる
<「ストレス性便秘」が悪化も>

「生活習慣やストレスなどが原因の『痙攣性便秘』は、腸の緊張と運動の高まりで起こります。ごぼうや玄米、きのこ類など腸を刺激する『不溶性食物繊維』が多いものを食べると、腹痛や胸やけが生じます。海藻や山芋などの『水溶性食物繊維』がベターです」(望月氏)

【27】一日のご褒美に高カカオチョコレート
<高カカオチョコで不眠に>

高カカオチョコはカフェインが多く、夕方以降に食べると眠気がなくなり、入眠しにくくなったり、眠りの質が悪くなったりします。午前中に食べるのがオススメです。

この春、健康法を「新常識」に!

写真・本誌写真部

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