灯油配送にIoT活用 残量確認しやすいホームタンク専用キャップ、県内で導入拡大の動き

灯油タンクに付けるだけで残量などが把握できるキャップ型の「スマートオイルセンサー」を手にする小松祐一郎社長=長井市

 今月からドライバーの残業規制が強化されたことにより「物流の2024年問題」が喫緊の課題となる中、灯油の宅配にIoT(モノのインターネット)を活用し、配送を効率化する取り組みが県内で始まっている。今冬、本県の導入企業は配送頻度削減などの効果が上がり、利用者にとっても灯油切れの心配がなくなる利点がある。来冬に向けて導入拡大の動きも出ているという。

 導入されているのは、顧客のホームタンクのキャップを専用のものに換えるだけで、灯油の残量が配送業者の社内から確認できるシステム。センサーと通信機能を備えたキャップが残量データを送信し、自動発注配送管理システムが人工知能(AI)を使って配送ルートも提案してくれる。

 開発したのは札幌市のIT企業「ゼロスペック」で、20年にサービスを始めた。全国37都道府県で約300社、3万台のキャップが導入されている。残量確認できるシステムは以前もあったが、工事を伴うなど手間がかかったという。

 本県では5社が計千個のキャップを導入している。22年秋から同システムを使用する塩原屋(長井市、小松祐一郎社長)は同市や白鷹、飯豊、川西町の家庭など500軒以上に灯油を届けている。定期的に配達する客の場合、急に使用量が増えて灯油が切れる場合や配達に行ってもタンクがいっぱいで入らないこともある。これまでは配達員の経験でカバーしてきたが、業務の持続可能性の観点などから導入を決めた。

 同社は現在約170個を導入しており、配送頻度は2、3割程度を減らせたという。暖房用で需要が増す冬の宅配以外でも、重機などに使う軽油や重油への応用も可能。小松社長(37)は「配送の効率化により二酸化炭素(CO2)の排出削減にもつながる。さらに導入を進めたい」と話す。

 ゼロスペックの神大地マネジャーによると、県内ではさらに実証実験などを行う動きがあるという。企業の人手不足が深刻化し、過疎地域などでは灯油の入手が困難になる「灯油難民」の発生が全国的に懸念されているとし、「灯油配送業者の効率化をITでサポートすることで、社会課題の解決につなげたい」としている。

© 株式会社山形新聞社