「反戦平和×パンクの精神」伝える コザゲート通りで無料のDIY路上パンクフェス!  国内外13バンドが出演

中心運営メンバーの一人で、バンド「アルカシルカ」ボーカルのU=3月23日、沖縄市のゲート通り

 モヒカン野郎や鋲(びょう)入り革ジャンなど、これでもかとパンクスが集い、地域の人たちも交えて盛り上がる。沖縄の軍事基地やパレスチナ・ガザ地区についての会場展示は「反戦平和」の精神をひしひしと訴えかけるー。

 3月23日。沖縄市のコザゲート通りの一部を歩行者天国状態にし、無料で参加できるDIYの路上パンクフェスティバルが行われた。その名も「AFTER LAND」。県外はもちろん、台湾からもパンクバンドが参加し、計13組が出演。県内外から約20店が出店した。

 準備期間はなんとたった2カ月間。中心運営メンバーの一人であり、バンド「アルカシルカ」のボーカルUは言う。音楽を通した交流で、横のつながりを強めて「遠い場所を少しだけ身近に感じてほしい」。開催への思いをインタビューした。(ライター・長濱良起)

一口メモ:パンク文化とDIY
パンクロックは1970年代に生まれた音楽ジャンルで、激しい演奏、シンプルな曲調、強いメッセージ性などが特徴。音楽のみならず、ファッションやアートなどもひっくるめたカルチャーの視点で語られることも多い。その一つに「DIY」も挙げられ、「他に依存するのではなく自分自身でやる」という精神が根付いている。

今、世界中で大変なことが

「AFTER LAND」の路上ライブ=3月23日、沖縄市のコザゲート通り

-県外や海外からも多くのバンドが参加しました。これまでにもUさんはいろんなイベントを企画しています。

 「ツアーで県外や海外を回る中で、仲良くなったバンドが多くいます。交流を大事にしていて、お互いがもっと仲良くなってほしいなと思っています。特に、パンクシーンは国や地域の垣根を越えて横のつながりが強いんですよ。全国各地、世界各地に友だちが一人でもいたら、世界が少しだけ身近になるのではと考えています。台湾のバンドとも、音楽やアートを通して交流を続けた結果、台湾に若いバンドが増えてきているなどの好循環も起こっています」

台湾のパンクバンド「L-Schema」=3月23日、沖縄市のゲート通り

-パレスチナ・ガザ地区の展示など、世界平和や反戦への姿勢も色濃く出ていました。

 「今、世界中でいろんな大変なことが起きています。香港の民主化デモやミャンマーの軍事クーデター、ウクライナとロシアの戦争、イスラエルとパレスチナの軍事衝突など。それらがひとごとのように思えないんですよ。ライブでロシアに行った時にお世話になった人が、インスタグラムで『俺は戦争に行きたくない』って言っていたり、香港の友人は政治犯として締め出されて地元に帰れなくなったりしています。新しく起こったことがフォーカスされがちですが、どれも一つ一つが現在進行形で、真剣に向き合わなければならないことばかり。いつも武力によって被害を受けるのは市民です。立場や姿勢を問うのではなく、まずは知ったり考えたりする機会をと思って、展示を設けました」

パンクで意思のあるイベントを

-ゲート通りで「AFTER LAND」を開催するに至った経緯を教えてください。

 「もともとは、自分のバンド『アルカシルカ』のライブを少し特別な場所でやるつもりで、国内外のバンドに共演をオファーしていたんです。それが、1月半ばぐらいに諸事情でできなくなってしまって。別の会場を、と案を出し合っていたところ、地元である『ゲート通りでやろう』と思いつきました。パンク関係に限らず、さまざまな分野の友人・知人の賛同や協力の下でDIY実行委員会を立ち上げ、実現できました」

-全ては思いつきから始まり、それを実行したということですね。

 「パンクバンドは社会的なメッセージを発信していることが多いんですけど、基本的には『売れてやろう』という目的でやっていないので、アンダーグラウンドの音楽シーンに存在しているんですよ。バンドのメッセージが届く範囲が狭いな、とは以前から感じていて。もっと外に発信していく機会をつくっていかなくてはならないことは、メンバー間で話していたところでした。それも相まって、この機会に『意思のあるイベント』をやろうと決めました」

バンド「アルカシルカ」ボーカルのU=3月23日、沖縄市のゲート通り

-その時点でもう、開催まで2カ月ですよね。

 「大変でしたよ。道路の使用許可なんか取ったことないですから。とにかく警察署や市役所に行って、どんな手続きが必要なのかを調べるところから始まりました。準備期間のうち、僕は1カ月間ぐらい書類ばかり書いていました。運営に当たって、決まったリーダーというのは特にいなくて、それぞれがそれぞれの役割をこなしていった、という感じです」

路上パンクフェスティバルの様子=3月23日、沖縄市のゲート通り

あえて「道路」にした理由は

-そもそも、無料のDIYフェスとして位置付けて開催したのはなぜでしょうか。

 「道路って、誰のものでもなければ、誰しものものでもあるじゃないですか。道路でイベントをやるのに、お金なんか取れるわけない。誰でもふらっと遊びに来てもらえたら、という思いでした。お金がない中でやりたいことをやろうと思ったら、自分たちの手足を動かさないといけず、その目的達成のために、必然としてDIYという選択肢になりました」

アルカシルカのU=3月29日(リモート取材で)

-今後も継続して開催していく予定ですか?

 「次回の開催も考えています。地域の理解を得られたことも後押しになりました。満足な準備期間が取れなかったので、一緒にイベントを作り上げていった友人らに大変な思いをさせてしまったり、本来やりたかったことができなかったりしたので、反省点を次回につなげていきたいと思います」

■出演バンド
THE QUESTIONS/Unskilled Lab +Daigo/BIRDHELMS/END of pollution/L-Schema/HELL型/KUOLEVA/ABIZMO/Archer Archer/BUENOS CAMINOS/SKIZOPHRENIA!/アルカシルカ/SHOCKING桃色

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