「小惑星 南小田発見の地」兵庫・神河の私設観測所跡に記念碑 加古川の男性、仲間と15個見つける

小惑星「南小田」を見つけた南小田観測所跡に記念碑を建てた菅野松男さん(中央)と観測仲間の野村敏郎さん(右)、川西浩陽さん=神河町南小田

 兵庫県神河町南小田にある大林寺の駐車場近くの一角に、「小惑星 南小田発見の地」と刻まれた石碑が完成した。ここは26年前まで、加古川市のアマチュア天文家、菅野松男さん(84)による私設の「南小田観測所」があった場所。見つけた小惑星は15個に上り、地元の子どもらの学びの場にもなっていた。歴史を後世に残そうと、菅野さんが記念碑を設置し、住民らにお披露目した。(喜田美咲)

 趣味が高じ、団体職員から明石市立天文科学館の解説員に転職した菅野さん。1960年代、都市化の進む加古川の自宅周辺より明かりの少ない所で空を見ようと、妻の実家のある同町南小田に足を運んだ。71年に隣の大林寺の敷地を借りて、観測所を設けた。

 新たな小惑星を発見するには、星図に記された星との位置関係を測りつつ、未知の星が見つかれば4、5日空けて写真撮影を3度繰り返し、軌道を確認する。結果を国際天文学連合に報告し、別の観測者より早い日に観測していれば星に命名できる。

 菅野さんは65年、日本のアマチュア天文家2人が「池谷・関彗星(すいせい)」を発見したというニュースを見て、自身でも星を見つけようと観測し始めた。

 南小田観測所の屋根が開く小屋で望遠鏡をのぞき、未確認の星を探した。観測仲間の野村敏郎さん(69)=神戸市=や川西浩陽さん(65)=赤穂市=らと協力。別の人より先に見つけるため、仕事も休みも関係なく連絡を取り合い、徹夜することもしばしばだった。3人で見つけた15の小惑星には「南小田」やそれぞれの妻の名前などを付けた。

 近隣住民も、観測の日は電気を消すなど協力してくれた。夏には地元の小学生を招いた観測会も開き、星座を教え、流れ星を見た。

 しかし95年の阪神・淡路大震災で職場が被害を受けたため、休むことに。不安な日々を過ごす中、足が遠のいた。ちょうど借りていた土地が駐車場になる計画もあり、98年、仲間らに惜しまれつつ閉じたという。

 菅野さんは今も自宅のベランダで星を探す。次第に「フィルムなどの記録媒体は劣化しても、観測の証は残したい」との思いが芽生えた。長年の功績が評価され、科学や芸術の発展に貢献した兵庫ゆかりの人らに贈られる「井植文化賞(科学技術部門)」を昨年受けており、その賞金で記念碑を設置することにした。

 石碑には、観望会に参加した地元南小田小学校(閉校)の児童たちが作った「ほしぞらの かなたにきらりと みなみおだ」という詩も刻んだ。

 7日にあったお披露目会には野村さんや川西さんも集まり、当時の苦労話で盛り上がった。長年協力した大林寺の現住職の母、阪本須美子さん(83)は「子どもの数が減り、観望会のようににぎやかな声は聞こえなくなったけれど、懐かしみ、石碑へ足を運ぶ人がいたらいい」とほほ笑む。

 菅野さんは「人工衛星が星を見つけることが増えたが、今も空を見上げると胸が躍る。地元の皆さんにも改めて感謝している」と目を細めた。

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