映画「アイアンクロー」が話題のエリック一家 84年四男ケリーのNWA王座奪取に父は涙

父譲りのアイアンクローを王者に決めるケリー

【昭和平成スター列伝】故ジャイアント馬場さんと伝説的名勝負を展開し、アイアンクローを武器に一時代を築いた“鉄の爪”ことフリッツ・フォン・エリック一家を描いた映画「アイアンクロー」が5日から公開され話題を呼んでいる。

3万8000人の大声援を背にフレアーにコブラツイストを決めるケリー

エリックの息子たち(ケビン、デビッド、ケリー、マイク、クリス)はいずれもレスラーとなったが、5人のうち4人が10年間で相次いで病死や自殺などで死去。幼少期に亡くなった長男を含めて6人中5人が若くして亡くなり「呪われた一家」と呼ばれた。しかし映画は淡々と悲劇を描きながら、結束を固める家族の絆に焦点を当てた感動的作品となっている。

1984年2月10日には全日本プロレスに来日中だった三男デビッドが病死。これが最初の悲劇だった。同年5月6日には地元テキサス州ダラスのアービング・テキサス・スタジアムに3万8000人の大観衆を集め追悼興行が行われ、四男ケリーがNWA世界ヘビー級王者リック・フレアーを撃破して初のNWA王者となった。

「大歓声に迎えられたケリー。次男ケビンと五男マイクが寄り添う。23歳のケリーは父譲りのアイアンクローを狙う。だが王者は落ち着き払って一気にレッグドロップから足4の字固め。ロープに逃げたケリーは頭がい骨にクローを決め、マットに叩きつけると豪快なブレーンバスター。フレアーはパンチに活路を求めてダウンさせるとコーナーポストへ。だがケリーは素早く起き上がると殺人投げ。フラフラの王者が無意識に腰投げに出ると、バックを固めたケリーはフレアーを放り投げ、一瞬の逆さ押さえ込み。18分35秒、23歳の王者誕生だ。デビッドが愛した黄色いバラとテキサス州旗が投げ込まれフリッツ、ケビン、マイクと抱き合って喜んだ」(抜粋)

自分も果たせなかったNWA王座奪取の快挙に父フリッツは涙を流して祝福した。5月24日横須賀のリマッチで敗れて短期王者に終わるも、エリック一家には何よりの栄光だった。結局、ケリーも93年2月18日に自ら命を絶つ。確かに不幸に見舞われた一家だったが、ケリーの快挙は歴史に残る。2009年にはエリック一家(フリッツ、ケビン、デビッド、ケリー、マイク、クリス)としてWWE殿堂入り。セレモニーにはケビンが出席した。

悲劇ばかりが有名になってしまったが、映画は兄弟たちが苦悩しながらプロレスに人生を捧げる人間ドラマになっている。「呪われた一家」のイメージも変わるかもしれない。

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