出会いの春がつらい「人見知り」 オードリー若林にも指南の“対策のプロ”が語る克服のためのい・ろ・は

人見知りを克服したというオードリー若林正恭(C)ピンズバNEWS

新社会人や新入生が、新たな人間関係とともに生活をスタートさせている4月。さまざまな出会いに心躍らせる人がいる一方で、いつまで経ってもオドオド、モジモジしてしまうという“人見知りさん”もいることだろう。

春は、そんな人見知りの方にとって試練の季節でもある。大勢を前にした自己紹介では緊張のあまり声が出ず、せっかく上司や同僚が開催する歓迎会なのに居心地も悪い。若者言葉では、根明な人のことを”陽キャ”(陽気なキャラクター)と呼ぶが、そんな同期には気後れするばかり……。

そんな人見知りなのだが、改善ができるという。

一般社団法人あがり症克服協会代表理事で、『30ステップで人見知りさんがどこでもラクに過ごせるようになる』(明日香出版社)の著者・鳥谷朝代さんは、「人見知りは克服できる」と断言する。鳥谷さん自身も幼少期から極度の人見知りであがり症だったが、話し方講座でそれを克服したという経歴の持ち主だ。

今や鳥谷さんは、人見知りを自認するオードリー・若林正恭(45)やトレンディエンジェル・斎藤司(45)ら地上波番組で大活躍するトップ芸人に、その克服法を伝授したこともある“人見知り対策”のプロでもある。そこで、鳥谷さんに、初対面の人見知りを克服する「い・ろ・は」を教えてもらった。

まず、そもそも人見知りは改善したほうがいいのかという点について。鳥谷さんは「必要なければそのままでOK」としたうえで、「人見知りは生きにくさを感じやすく、損をすることもある」という話す。

「人見知りは、自己評価が低い人がなりやすい傾向があります。警戒心が強く、これを言ったら嫌われるんじゃないかとか、自分の話はつまらないんじゃないかなどと考えているうちに、人と接するのが億劫になってしまう。

思うように人とコミュニケーションができないと、人に自分という存在を認めてもらっている手応えも感じづらい。私がそうだったのですが、結果として生きにくさにつながってしまいます」(鳥谷さん)

■「人見知り芸人」はなぜ人前に立てるのか

人生において”損”をすることもあるという人見知り。前出の鳥谷さんが人見知り克服法を指南したこともある若林は2009年、『アメトーーク!』(テレビ朝日系)で“人見知り芸人”企画を敢行。当時MCの雨上がり決死隊(現在は解散)の宮迫博之(54)と蛍原徹(56)へ挨拶に行くまで廊下を何度も往復する、日頃も同じ楽屋になった他の共演者に話しかけられず、ドリンクのラベルを熟読するフリをするといったエピソードを披露し、多くの人見知りの人たちの共感を得たのだ。

この企画で一気に注目を集めた若林。その後、人見知り芸能人の代表格として活動していくが、18年に第3弾として放送された同企画では、「人見知り卒業生」として登場。番組MCを務める機会が増えたため、克服を試みたことを明かしている。

その背景について若林は、同年出版したエッセー『ナナメの夕暮れ』(文藝春秋)で、

《人見知りのせいで盛り上げるチャンスを逃したこともあって。さすがに何とかしないと、と思いました》

と記している。特殊ではあるが、人見知りは”損”をすることがあるという実例だろう。

「人見知りが悪いとか、絶対陽キャにならなきゃいけないとか、そんなことはありません。ただ、言葉を発しないと挨拶をしない人だと思われたり、仕事にやる気がない人だと思われたりしかねない。

芸人さんで人見知りだと聞くと意外に思う方も多いのですが、本来の自分が“こっち側”なら、人目を気にしないで誰とでも話せる“あっち側”にいくスイッチがあるんですよね。そして、本来誰しもがそうした“あっち側”と“こっち側”を切り替えるスイッチを持っている。そのスイッチを上手に切り替えるようにするのが、人見知り克服トレーニングです」(鳥谷さん)

■人に話しかける最初は「美容師や店員さんなど、サービス業の人」がおすすめ

スイッチの切り替えが大切だという人見知り対策。では、人見知り克服へのファーストステップとは何か。前出の鳥谷さんの著書には詳しくあるというが、まずは“体を整える”、そして“外に出て人とのコミュニケーションを実践する”方法が有効だという。

「太陽の光を浴び、腹式呼吸をして、よく声を出す。姿勢を良くする。歯並びを整える……。体調はもちろん、声や表情などに自信がないと、人と接するのは難しいものです。まずは一人でできるところから少しずつ改善していくと良いと思います」(鳥谷さん)

外で人に話しかけるといっても、最初は「美容師や店員さんなど、サービス業の人」がおすすめだという。若林も、克服法として「毎日のようにガールズバーに通った」ことを明らかにしていた。

「向こうは仕事なのでこちらを無視することはない。そのため、人見知りの人でも他人へと“話しかけることができた”という成功体験が得られやすいんです。日常生活の中での挨拶からやってみるといいでしょう。

次のステップは、“断られるかもしれない”シーンです。たとえば、電車の中で座席を譲る。職場の人にお願いをしてみる。ここで大事なのは、言ったら嫌われるかも、断られるかもという気持ちをなくすことです。”聞いてもらえたらラッキー”ぐらいのテンションで他人へと話しかければOKです」(前同)

また鳥谷さんは、話を広げる練習として、”シタシキナカ”という標語を挙げる。

「シ=趣味、タ=旅、シ=仕事(学校・勉強)、キ=気候、ナ=仲間、カ=家族、です。これらをテーマにすると、何を話したら良いかが見えてきます。

いわゆる“陽キャ”の人は派手で目立つので、どうしても人見知りの人はコンプレックスを抱いてしまいがちですが、全然そんな必要はありません。聞き役とか、調整役とか、存在感を発揮できるポイントはいくらでもあります。ただ、自分の主張すべきことは主張できて、断るべきことは断ることができれば理想ですよね」(同)

■「自分が嫌いじゃなくなると、人生は生きやすくなる」

自身も人見知りを克服した前出の鳥谷さんは、その体験を「“あっち側”へのスイッチのオン・オフができるようになって、すごく楽に過ごせるようになった」と振り返る。

「“あっち側”への切り替えスイッチを上手に入れられるようになると、自分が内向的であることも苦でなくなりました。それまでは人見知りな自分がイヤで嫌いだったけど、自分のことが嫌いでなくなると、人生はすごく生きやすくなることを実感しています。

皆さんがもし、人見知りが原因で自分のことを嫌いになりそうなら、それは必ず改善できます。少しずつ人見知りを克服し、人とのコミュニケーションが楽しめるようになっていただけたら嬉しいなと思います」(鳥谷さん)

「人見知りだから仕方ない」と思い込む前に、一歩踏み出すと新しい世界が待っているようだ。

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