【第3回WUBS】昨年大会王者NCCU(国立政治大/チャイニーズ・タイペイ)、2023-24シーズンも圧倒的な快進撃を継続中

2022年に初めて開催されたWUBS(Sun Chlorella presents World University Basketball Series=ワールド・ユニバーシティー・バスケットボール・シリーズ)が、今年もまた8月10日(土)から12日(祝・月)にかけて、日本のバスケットボールのメッカである国立代々木競技場第二体育館で開催されることが明らかになった。出場チームは大会公式Instagramでアナウンスされるので、是非チェックしていただきたい。さっそく月刊バスケットボールWEBでも各チームを順次紹介して今大会を展望していくが、まずスポットを当ててみたいのは、ディフェンディング・チャンピオンのNCCUだ。

WUBS2023のMVPバイェ、チャイニーズ・タイペイ代表ユー アイジェら既存戦力を軸にチーム力の底上げを図る

NCCUは昨年までにチャイニーズ・タイペイの大学リーグであるUBA(University Basketball Association)で3連覇を成し遂げ、現在4連覇に向けて2023-24シーズンを戦っている。WUBSには第1回大会から3年連続出場しており、昨年大会ではクォーターファイナルで東海大に81-73で勝利した後、セミファイナルでアメリカから来日したNCAAディビジョン1のラドフォード大を79-75で撃破。最終日のファイナルでは白鷗大相手に序盤から大量リードを奪い、終盤の攻防もしのいで90-84で勝利して初の王座獲得に成功した。印象的だったのは1-3-1ゾーンディフェンス。ラドフォード大のダリス・ニコルズHCは「あのファンキー・ゾーンには現時点で対応するのは難しい」と話し、オフシーズンとは思えない高い完成度に舌を巻いていた。

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今年のチームは、昨年UBA3連覇を達成したメンバー9人が残っている。経験と実績を持つ役者たちに新戦力も加わっており、実力的には底上げができているとみるのが妥当だ。

実際、昨夏WUBSを制した後の戦績も目覚ましい。9月には、チャイニーズ・タイペイに2つ存在するプロリーグ(P.LEAGUE+とT1 LEAGUE)およびセミプロリーグのSBLに所属するチームとの交流戦(インターリーグ)で5戦全勝の完全優勝を成し遂げている。この大会でMVPに輝いたのはNCCUのガードを務めるソン シンホー(宋 昕澔)。昨年のWUBS準決勝でラドフォード大相手に22得点、白鷗大との決勝で17得点を記録したプレーヤーだ。NCCUからはほかにも、FIBAアジアカップ2025予選のチャイニーズ・タイペイ代表に名を連ねているプレーメイカーのユー アイジェ(游艾喆)と、セネガルからの留学生で身長208cmのボボカ・ボウ(波波卡、アルファベット表記はBaubacar Mboup)がベスト5に選ばれた。

昨年のWUBSでNCCUの優勝に大きく貢献する活躍を披露したソン シンホー。昨年9月に行われたインターリーグ(プロ、セミプロとの交流戦)ではMVPに輝いていた(写真は昨年のWUBS決勝戦より/©月刊バスケットボール)

この3人に加えて2023-24シーズンのチームには、身長208cmのフォワードで昨年のWUBSでMVPに輝いたムハマド・ラミン・バイェ(莫巴耶)も健在。NCCUはUBAの2023-24シーズンでも3月24日に行われたファイナルまで負けなしの24連勝という圧倒的な強さでUBA4連覇を達成した。健行科技大とのファイナルも92-59という大勝だったが、この試合ではユーが12得点、11アシスト、10リバウンドのトリプルダブルを記録。ファイナルでは史上初という快挙で2年連続のファイナルMVPを獲得して王座に花を添えた。

戦い方としては、今シーズンのUBAが留学生を2人同時に起用できるルールにしていることもあり、バイェとポポカのサイズと身体能力を最大限に生かしながら、ゾーンディフェンスも積極的に使っている。得点面では、インサイドでもアウトサイドでも脅威となり毎試合20得点近くを稼ぐバイェが中心。ポポカやソンも2桁得点を計算できる。ユーは今シーズンでUBA通算600アシストのマイルストーンに到達したほど抜け目なく得点機を生み出す。チーム登録が18人なので、その中からWUBSでプレーする最終ロスター12人がどんな顔ぶれになるかは直前までわからないが、選りすぐりの12人は今夏もWUBSを席巻する威力を見せてくれるかもしれない。

昨年のWUBS決勝で豪快なダンクを叩き込むムハマド・ラミン・バイェ(写真/©月刊バスケットボール)

☆チャイニーズ・タイペイのバスケットボール

日本最西端の与那国島から約111kmしか離れていないチャイニーズ・タイペイは、バスケットボールの歴史においても日本と盛んな交流を重ねてきた。初代FIBA事務総長の名を冠して1977年から行われているウィリアム・ジョーンズカップへの日本代表男女チームの参加は友好の象徴。コロナ禍で2020年から3年間中止になったものの、昨年再開されている。

本文で紹介したユー アイジェは、河村勇輝(横浜ビー・コルセアーズ)と高校時代に対戦したことがあるといい、「河村選手のようにプレーしたい」と公言するほど昨今の河村の活躍に感化されている。日本とチャイニーズ・タイペイは、それだけお互いに影響を及ぼし合える身近な存在なのだ。

FIBAアジアカップ2025予選のフィリピン戦で得点を狙うユー アイジェ(写真/©月刊バスケットボール)

チャイニーズ・タイペイには、これも本文に出てきた通りプロリーグが二つあるほかセミプロリーグも存在する。EASL(East Asia Super League)の2023-24シーズンでニュータイペイキングスが琉球ゴールデンキングスと、台北富邦ブレーブスが千葉ジェッツと熱戦を繰り広げたことを見ても、今後さらに地域内のリーグが活性化する期待感もある。NCCUがWUBSで大きな成果を残したことで日本との交流もいっそう盛んになっていくのではないだろうか。

☆NCCUとは

NCCUは国立政治大学のアルファベット表記である「National Chengchi University」の略記で「エヌ・シー・シー・ユー」と読む。政治家をはじめとしたチャイニーズ・タイペイの有力人材を輩出しているエリート大学の一つ。バスケットボール部の創部は2017年と歴史としてはまだ若いが、名将チェン ツーウェイ(陳 子威)HC指揮下のUBA4連覇が示す通り、大学バスケットボール界でもトップに君臨している。グリフィンズ(Griffins=ギリシャ神話などに登場する聖獣、鷲獅子)という正式なニックネームがあるほか、ファンからはしばしば政大雄鷹(Zhengda Eagles)とも呼ばれている。

WUBSでは2022年の第1回大会で3位に入り、昨年初優勝。今夏はディフェンディング・チャンピオンとして来日することになる。

昨年のWUBS決勝で戦況を見つめるチェン ツーウェイHC。「強みはチームとしてプレーできること」と話していたが、現在のロスターもバックコートにもフロントラインにも頼れるタレントがそろい、主力のみならずベンチプレーヤーの貢献を十分期待できる顔ぶれだ(写真/©月刊バスケットボール)


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