中国広西チワン族自治区、初の洋上風力発電プロジェクト加速

防城港市沖で建設中の洋上風力発電所で行われた洋上昇圧ステーションの吊り上げ作業。（2023年11月10日撮影、防城港＝新華社配信）

　【新華社南寧4月14日】中国広西チワン族自治区で初めての洋上風力発電プロジェクトが、防城港市沖で進められている。計画設備容量は180万キロワット、総投資額は約245億元（1元＝約21円）を見込む。完成後の年間送電電力量は50億キロワット時を超える見通しで、一般家庭の約500万世帯の電力を賄える。

　建設は国有投資企業、広西投資集団傘下でエネルギー分野の投資を手がける広西能源集団などが担う。プロジェクトは昨年3月に始動し、同6月30日に洋上での建設が始まった。建設現場でクレーンを操作する宋運祥（そう・うんしょう）さんは「1チーム40～50人で2交代制。3日に1基のペースで風力発電機を設置できる」と話す。

　中国送配電大手、南方電網傘下の広西電網で戦略企画部を率いる張寧（ちょ・うねい）総経理は「今年の1月28日に最初のユニットが電力系統に接続し、送電を開始した。先月19日までに発電機16基の設置が終わり、うち13基が送電を始めている。これまでの送電電力量は3630万キロワット時に上る」と説明した。

防城港市沖で建設中の洋上風力発電所で行われた洋上昇圧ステーションの吊り上げ作業。（2023年11月10日撮影、防城港＝新華社配信）

　広西チワン族自治区はここ数年、安定的なエネルギー供給の確保、エネルギーのクリーン化と低炭素化の加速、エネルギー分野の改革深化に重点的に取り組んでいる。新型エネルギーシステムの構築やエネルギー資源配置の最適化を継続的に推進し、陸上風力発電や太陽光発電の開発に力を入れるほか、洋上風力発電の開発も加速させている。

　広西投資集団の周煉（しゅう・れん）董事長はプロジェクトについて、国家総合エネルギー安全保障区の設置に向けた重要な取り組みで、自治区のエネルギー構造の最適化や南部の強固な生態学的障壁の構築に寄与すると説明。新エネルギー設備産業パークの建設を加速させ、探査・設計、科学研究・検査、施工・維持管理などを一体化した海洋産業チェーンの形成を促進するほか、洋上風力発電の「新たな質の生産力」（科学技術イノベーションが主導し、質の高い発展を促す生産力）の発展をけん引する、より多くの新たな「硬科技（革新的な中核技術）」の育成にもつながるとの見方を示した。

防城港市沖で建設中の洋上風力発電所で行われた洋上風力発電機のタワーの吊り上げ作業。（2023年8月15日撮影、防城港＝新華社配信）

　中国の洋上風力発電事業は今年に入ってから勢いを増している。福建、海南、山東など沿海各省が発表した今年の重要プロジェクト計画では洋上風力発電が「ホットワード」となり、各大手エネルギー開発業者は万全の態勢で準備を進めている。

　国家能源局の統計によると、昨年の風力発電の累積設備容量は400ギガワットを超えた。新規設置容量は75.9ギガワットと2020年の71.7ギガワットを上回り、過去最高を更新。中国の洋上風力発電の潜在性は高く、国家気候センターの最新統計によると、高度150メートル、離岸距離200キロ以内、水深100メートル未満の洋上での開発可能な風力エネルギーは27億8千万キロワットに上る。

防城港市沖で建設中の洋上風力発電所で行われた洋上風力発電ブレードの吊り上げ作業。（1月10日撮影、防城港＝新華社配信）

　新エネルギーのリスク評価機関、中国新能源電力投融資聯盟の彭澎（ほう・ほう）秘書長は「大手企業による洋上風力発電プロジェクトの進捗状況から見て、今年の新規設備容量は少なくとも昨年比で4割以上増えるとみられる」と説明。深海や遠海の風力発電技術の成熟に伴い、洋上風力発電の潜在力もさらに掘り起こすことができるとした上で、漁業や養殖業など他の産業との融合的な発展が可能なことから、市場規模はさらに広がっていくとの見方を示した。

　発電所の建設や運営を手がける広東大唐国際雷州発電のエンジニア、任佳炯（じん・かけい）氏は、洋上風力発電は洋上の新たな質の生産力を発展させる重要な推進エネルギーであると指摘。洋上風力発電の融合的かつ革新的な開発を加速させ、イノベーションチェーンと産業チェーンの的確な統合を促進することで、洋上の新たな質の生産力を持つ産業クラスターの発展を後押しすると語った。（記者/黄耀滕、田子駿）