『6秒間の軌跡』続編も高橋一生の愛おしさは健在 宮本茉由が初回から強烈なインパクト

偏屈でめんどくさくて、だけど誰よりも愛おしいあの男が約1年3カ月ぶりに帰ってきた。地方都市で代々続く望月煙火店の花火師・星太郎(高橋一生)のゆるやかな成長を描いた『6秒間の軌跡~花火師・望月星太郎の憂鬱』の続編『6秒間の軌跡~花火師・望月星太郎の2番目の憂鬱』(テレビ朝日系)がついにスタート。今作から新たに宮本茉由が参戦し、初回から強烈なインパクトを残した。

父親の急逝により1人取り残されてしまった望月煙火店の5代目・星太郎。しかし、幽霊になって帰ってきた父・航(橋爪功)と、星太郎の花火に惚れ込み、住み込みで働くことになったひかり(本田翼)の後押しもあって、幼い頃に家を出て行った母・理代子(原田美枝子)と出会い直したことで止まっていた彼の時間は動き出す。星太郎は誰のためでもなく、自分のために花火を極めていくと決意し、そんな息子の姿を見届けて航も成仏した……はずだった。

その一年後、なぜか星太郎は自室に引きこもる生活を送っていた。望月煙火店も開店休業状態に。そんな状況を見かねてか、再び幽霊の世界から舞い戻ってきた航。星太郎がやる気を失ってしまった理由がひかりの口から語られる。

コロナ禍で中止が続いていた花火大会が昨年から復活し、しばらくは仕事への意欲が高まっていた星太郎。だが、テレビ取材を受けたところ、「ニッカポッカ姿が可愛い」とSNSで話題となり、プチ有名人に。雑誌でもイケメン花火職人として取り上げられ、個人花火の依頼が殺到。けれど、人々が注目しているのは星太郎の見た目や、「コロナ禍を乗り越えた」という分かりやすいストーリーであって、肝心の花火はどうでも良かった。そのことに星太郎の花火職人としてのプライドは傷ついてしまったのだ。

中には、ひかりのように星太郎が航から受け継いだ技術を認めてくれている人だっているはずで、そういう人を相手に仕事をすればいい。だけど、根が優しい彼は頼まれたら断ることができないのだろう。全てがめんどくさくなって放り出してしまう子供の頃からの性格を航とひかりにからかわれ、星太郎はいじけモードに突入する。43歳になった星太郎は相変わらず、思春期を更新中。一方で、航が帰ってきたことで、このまま煙火店を潰してしまっていいのかと思い悩むところが星太郎らしい。めんどくさいけれど、航やひかりのフィルターを通したら、実は素直で扱いやすいことがわかる。高橋、橋爪、本田が好テンポで繰り出す会話劇の応酬も健在で、1年3カ月という空白の期間はあっという間に埋まっていった。

そんな中、煙火店を訪れてきたのが、宮本演じる野口ふみかだ。ふみかは開口一番に、「私を弟子にしてください!」と弟子入りを志願。そればかりか、出会ったばかりの星太郎に結婚を迫る。あまりに突拍子もない申し出に、航やひかりは相手に恋愛感情を抱かせてお金をだまし取る“頂き女子”なのではと疑うが、ふみかは本気だった。

「あれは、誰にも出せない紅です」と、星太郎が出す花火の赤色に惚れ込んだことを明かすふみか。それは、ひかりも花火職人としての腕を磨くべく他店でバイトする中で気づいたことだった。夜空で色とりどりに輝く打ち上げ花火。花火師たちは金属化合物を火薬に混ぜ、炎色反応を利用して色を作り出している。

例えば、赤色はストロンチウム化合物やカルシウム化合物が使われるが、誰がやっても同じというわけではない。少しの配分で夜空に映し出される色は変わってくる。作りたい色がある、だけど思い通りにならないからこそ美しい。星太郎たち花火師はそういう葛藤の中で生きている。それを理解しようともせず、ズカズカと自分たちの世界に踏み込んでくる人たちに星太郎は腹が立っていた。一方で、どこかで自分に腹を立てるだけの技術があるかと言われれば、返答に困ってしまうところがあったのではないか。だけど、ひかりやふみかに指摘され、ようやく自分が航からしっかりと望月煙火店の技術を受け継いでいることに気づけた星太郎。気づいたら、イケメン特集の出版社からの電話口で「花火師舐めるな! 俺は花火師だ!」と啖呵を切っていた。やはり、星太郎は花火のような男だ。周囲の存在が火薬となり、さまざまな煌めきを見せる。

ひかりのように、星太郎が分かりきってる未来にどれだけこじらせて行きつくのか、長い目で見守るつもりだったが、ふみかのおかげで早々に現状は打破された。ただ、田中(小久保寿人)が羨ましがるその謎の才能で星太郎はふみかを虜にしてしまう。彼女の登場で、もう一人の弟子であるひかりとの、付かず離れずな関係がどう変化していくのかも見ものである。

(文=苫とり子)

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