殺虫剤効きにくい「スーパートコジラミ」確認 広島 メーカーや大学が耐性研究

研究のためスーパートコジラミを飼育するフマキラーの佐々木部長

 国内外で被害が拡大している害虫トコジラミ。広島県内でも相談件数が増加の兆しを見せている。広島市内では、耐性がついて従来の殺虫剤が効きにくい「スーパートコジラミ」と呼ばれる個体も確認されており、殺虫剤メーカーと大学も耐性のメカニズム解明や商品開発を進める。

 トコジラミは肉眼でも確認でき、成虫は体長5~8ミリ。カメムシの仲間で幼虫、成虫ともに人間や動物を刺して血を吸う。刺されると赤い発疹が出て強いかゆみに襲われるという。

 殺虫剤製造のフマキラー(広島県廿日市市)によると、約10年前に広島市内で捕獲された個体は、家庭用殺虫剤の主要な有効成分ピレスロイド系が効きにくい特徴を持っていたという。通常のトコジラミと比較すると2500倍の耐性があり、基礎科学研究部の佐々木智基部長は「同じ種類の薬剤を使い続けることで、強い個体が生き残って増える。国際的な人の行き来が増える中で、海外から持ち込まれた可能性が高い」と説明。既に国内のトコジラミは大半が耐性を獲得しているとみる。

 そこで同社は23年4月、広島大と共同研究を開始した。県の補助金600万円も活用し、ゲノム(全遺伝情報)を調べて耐性を高めているメカニズムの解明を進めてきた。「国際的な観光都市の広島は、東京や大阪と並んで潜在的リスクは高い」と指摘し、今後さらに研究を続け耐性個体にも効く殺虫剤の開発に取り組む。

 害虫駆除業者などでつくる日本ペストコントロール協会(東京)の集計では、2022年度の相談件数は全国で683件と、09年度から5倍に増えた。

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