【テニスギア講座】どんなのを買えばいい? 後輩や初心者へのラケット購入のアドバイス<SMASH>

この季節、部活の新入生やサークルの新メンバーなどから「先輩、ラケットを買いに一緒に店へ行ってください!」と頼まれることもあるでしょう。そんな時、どんなアドバイスをしてあげればいいのでしょう?

前提として、初めてテニスをする人と、スキルアップした人が使うラケットが、どのように違うかを再確認してください。まずは基本的な3要素「面サイズ」「重さ」「グリップサイズ」について、初心者の身になって、どれくらいが使いやすいかを考えてあげましょう。

初心者には、面が100平方インチ以上で、重さ300グラム未満が1つの基準になります。「できるだけ早くボールを打つ楽しさを感じてもらえるラケット」であることが大切。振れない、飛ばないでは、楽しくないですからね。

ここで注意してほしいのは「自分が使うわけじゃない」ということです。皆さんそれぞれに「いいラケット」のイメージを持っているとは思いますが、自分の勝手な思い込みや、好みまで押し付けてしまうことなく、初めての購入をサポートしてあげてください。

そのために必要なのが「本人へのヒアリング」です。ショップへ行く前に、テニスや他のスポーツ経験の有無、好み、予算など、できるだけ事前情報を仕入れて、購入アドバイスに臨むことです。

それから「男女による適正ラケットの違い」も把握しましょう。男子は根源的にスピードやパワーを求めるものですし、早く上達するケースも多いので、そこそこなレベルのスペックを薦めてあげるといいですね。

男子の初ラケットは「軽すぎない」「飛びすぎない」くらいが、ツラくもなく、上達も妨げないと思います。

そして女子には「非力でも振れるモデル」を選んであげること。まずはスイングを自由にコントロールできる重さで、面にボールを正しく当てられるくらいの軽量モデルが向いています。
次に意識すべきは「体格」です。体格はパフォーマンスとパワーの指標でもありますから、立派な体格の人に、初心者だからといって軽すぎるラケットを使わせると、かえって上達しにくくなります。もちろん、非力な人に重すぎるラケットは禁物。

購入者のパフォーマンスを把握して、それに適したラケットを薦めましょう。安易に、全ての人に「安くて軽いエントリーモデル」を押し付けてはいけませんね。

そのように客観的に判断して、「これいいんじゃない?」というものを幾つか挙げて、その中から本人が気に入ったものを選んでもらうようにしましょう。それぞれに購入予算もあるでしょうし、デザインの好みというのも、楽しくテニスをする上では大切な要素です。

最後に1つ、覚えておいてほしいのが「ラケットはフレームを選ぶだけで終わりではない」ということです。フレームとストリング(ガット)があって初めて機能する道具がラケットです。テニスは最初が大切。初めてボールを打った時「気持ちいい!」と感じると楽しく続けられますが、「なんかツライなぁ」となると、一気にやる気を失います。

そこで初心者、初級者には、ハードヒッターのために作られたポリエステル系を薦めるのは避けた方が無難です。できるだけ軽快に弾けるか、打球感の柔らかいストリングを薦めてあげてください。

アドバイスの最終目的は……後輩の「笑顔」です!

文●松尾高司(KAI project)
※『スマッシュ』2022年6月号より抜粋・再編集

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