皇居は、海外の旅行者が訪れる東京の人気観光スポットのひとつです。皇居東御苑内にある皇居三の丸尚蔵館は、ほぼ通年開放されており、御苑内にある土産店には、二重橋の絵はがきなどを買い求める訪日外国人観光客の姿も多く見られます。一方で、東御苑や皇居三の丸尚蔵館に入れることを意外に知らない日本人も多いとか。テレビ東京で活躍したフリーアナウンサーの横井弘海さんが、皇居三の丸尚蔵館を紹介します。
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第3期「近世の御所を飾った品々」は5月12日まで開催中
昨年11月に開館30年を迎えた三の丸尚蔵館は装いを新たにして、開館記念展「皇室のみやび―受け継ぐ美―」を開催。6月23日まで、皇室に受け継がれてきた多種多様な収蔵品を4期に分けて、日時指定制で公開しています。
長い歴史と伝統のなかで培われてきた皇室ゆかりの品々。江戸時代の画家、伊藤若冲の国宝「動植綵絵」全30幅のうち8幅などが展示された第1期は注目を集め、予約が殺到しました。
現在は第3期「近世の御所を飾った品々」が5月12日(日)まで開催中(途中展示替えあり)。第4期「三の丸尚蔵館の名品」は5月21日(火)~6月23日(日)です。
学問や文化芸術に造詣が深く、それらの保護にも熱心だった歴代の天皇や皇族が大切に受け継いできた書画や工芸、楽器、また国宝・藤原定家「更級日記」など、「御在来(ございらい)」と称される京都御所に伝来した文物や旧桂宮家伝来の伝狩野永徳「源氏物語図屏風」ほか、近世の御所や宮家を飾った品々が展示されています。
展示品はどれも繊細で、それぞれの時代を代表する逸品。とくに、「更級日記」に記された藤原定家の個性的な文字の美しさに目を奪われました。
訪日外国人観光客にも人気 日本人との鑑賞の違いは?
訪日客にも人気の本展。島谷弘幸館長にお話を伺いました。
――海外の方はどんなふうに鑑賞しているのでしょうか?
「どう感じたら良いのか、一生懸命に感じようとするからでしょう。じっくりとご覧になっていらっしゃいます」
――出身の国によって、鑑賞の違いなどはありますか?
「駐日大使館の方などをご案内するときに、国によって興味の度合いの違いを多少感じることはあります。知識がないから鑑賞できないということはなく、みなさま、ご自身の持っているテリトリーのなかで『日本』を理解しようという感じで観てくださいますので、とてもありがたいです」
――日本人と鑑賞の仕方は異なりますか?
「日本の方のほうが、最初から最後まで全部観ようとする傾向があるかもしれません」
島谷館長がおすすめする鑑賞方法3選
日本人はもちろん、インバウンドのお客様に対しても、皇居三の丸尚蔵館を「ここは観ておいたほうが良いよ」と言われる日本を代表する博物館にしていきたいと語る島谷館長。展覧会をより楽しむアイデアも伺いました。
1. 自分の家に飾ったら……と想像して観る
「展覧会の雰囲気を味わうだけではなく、書でも屏風でも『自分の家に持って帰りたい!』という作品を探してみてください。『これは良いけれど、大きすぎて、自分の家には無理だなぁ』とか『展覧会で観るなら華やかで良いけれど、家に飾るならあちらかな』などと考えながら、しっかり頭の中に思っていただくと、次にいらしたときに『これは観たことがある』とか『前に観たものはこうだった』などと比較などもできます」
2. 3点に絞る
「観たものを全部覚えているのは、なかなか難しいものです。楽しもうという姿勢で、3点ぐらいに絞り込むと心に残ります」
3. 誰かに感想を伝える
「家に帰ってから『今日はこういうものを観て楽しかった』と伝えてみてください。意外にうまく伝えることができず、もう一度観に行こうと思うかもしれませんよ」
島谷館長による第3期の見どころとしては、展示物から時代の移り変わりを感じてもらいたいのだそう。「どれがというより、京都御所や旧桂宮家に伝わったものを通じて、それぞれの時代に何が好まれたかを観ていただくのが良いかと思います」
皇室に受け継がれてきた貴重な品々。長い歴史と伝統のなかで培われてきた、皇室と文化の関わりを堪能したいですね。