期待の若手なでしこ、浜野まいかに大注目!W杯の涙を強さに

浜野まいか 写真:Getty Images

チェルシー・ウィメン(WSL)に所属し、日本女子代表(なでしこジャパン)で活躍するFW浜野まいか。若干19歳にしてスウェーデン、イングランドのトップリーグ経験をもつ期待のエースだ。

4月にアメリカで行われた4カ国が参加する女子サッカー国際大会シービリーブスカップでも、ブラジル女子代表と対峙した3位決定戦(日本時間4月10日)で決め手となるアシストを披露。前半34分にクロスをあげ、FW田中美南(INAC神戸レオネッサ)の先制ゴールに繋げた(同試合結果1-1PK0-3)(大会結果4位)。

にっこりと微笑んだ顔が印象的な浜野だが、一度ピッチに立てばその表情は一変。キリリとした顔つきで風を切ってボールを追いかけ、時には悔し涙を見せることも。注目の若手選手、浜野まいかとはどんな選手なのだろうか?


浜野まいか(INAC神戸レオネッサ所属時)写真:Getty Images

なでしこジャパンの一員となるまで

2004年5月9日生まれ、大阪府出身の浜野は、2017年にセレッソ大阪女子チームの育成組織(セレッソ大阪堺ガールズ)に入団。当時から、なでしこジャパンの一員になりたい想いを胸にサッカーと向き合い練習に励んできた。

浜野まいか経歴

  • 2017:セレッソ大阪堺ガールズ(セレッソ大阪堺レディースの育成組織)
  • 2020:セレッソ大阪堺レディース(現セレッソ大阪ヤンマーレディース)
  • 2021:INAC神戸レオネッサ(WEリーグ)
  • 2022:日本女子代表(なでしこジャパン)に初選出
  • 2023:チェルシー・ウィメン、9月までハンマルビー(スウェーデン1部)に期限付き移籍

2021年、WEリーグの9月の開幕を前に、INAC神戸レオネッサでクラブ史上最年少のプロ契約を結び完全移籍。2019年から各年代別で招集されている日本代表では、2022年にFIFAU-20女子W杯コスタリカ大会(8月10〜29日)で6試合で4得点を挙げる活躍が称され大会MVPに輝いた(日本は決勝戦まで上り詰めるも、スペイン代表に対し1-3で惜しくも優勝を逃した)。

そして同年の10月6日、国際親善試合ナイジェリア戦で初のA代表デビューを果たしたのである。同年末には慣れ親しんだ関西の地を離れ、海外を舞台に挑戦することを決心。12月25日にINAC神戸から浜野の退団が発表された。


浜野まいか(左)ヨンナ・アンデション(右)写真:Getty Images

忘れられない2023年W杯の涙

ときに悔しさが涙となって溢れてしまう浜野だが、それは周囲の選手たちの心も動かしてしまうほど。とくに印象的だったのが、浜野にとって生まれて初めてのW杯出場となった、FIFA女子ワールドカップ(W杯)オーストラリア&ニュージランド大会準々決勝(2023年8月11日)での出来事だ。

なでしこジャパンは、当時FIFAランキング3位のスウェーデン代表と対戦。先にスウェーデンに2得点を許し、後半87分にMF林穂之香(ウェストハム・ユナイテッド・ウィメン)が1点を返すが、1-2で敗退となった。2大会ぶりのベスト4進出はならなかった。

この試合でアディショナルタイムの92分に途中出場した浜野。ゲーム終了のホイッスルが鳴り響くも悔しさで泣き崩れ、こぼれ落ちてくる涙と感情とで立ち上がることができなかったのだ。その姿に、相手国スウェーデン代表のDFヨンナ・アンデション(ハンマルビー)がすぐさま駆け寄り抱きしめ、さらにGKゼチラ・ムショビッチ(チェルシー)も駆けつけ、今にも押しつぶされそうな浜野の感情を分け合うようにして支え合ったのである。

この光景は、開催国オーストラリアの放送局(SBSニュース)でも取り上げられた。当時、筆者は画面を通じてなでしこ達の活躍を見ていたが、この場面が映し出された時のことをしっかりと覚えている。そして現在でも想い起こしてしまうほど、非常に印象的だった。日本を代表すること、そして周囲の多すぎるほどの期待を背負ってピッチに立つことの重さが、立ち上がれなかった浜野の姿から痛いほど感じられた。

浜野に駆け寄ったDFアンデションは、同年1月に海外挑戦をスタートした浜野の同僚でもあった。そしてGKムショビッチは現在の同僚だ。

チェルシー・ウィメン FWサム・カー 写真:Getty Images

海外挑戦の旅は始まったばかり

W杯が行われた2023年の1月から、浜野にとって初の海外クラブ挑戦の旅が始まっていた。

移籍先となったチェルシーは、イングランドのトップリーグ(WSL)で直近4シーズン(2019/20〜2022/23)連続優勝を誇る強豪クラブだ。浜野と同じポジションには、オーストラリア代表キャプテンでもあり世界が注目するストライカー、FWサム・カーの存在が大きくある。筆者は流星の如く日本からやってきた浜野が、カーを含めたチェルシーのメンバーとどんな化学変化を生むのか?と期待を膨らませていた。

しかし浜野はチェルシー移籍と同時に、スウェーデン1部のハンマルビーへと期限付き移籍。同年夏には肩を負傷してしまい、治療のためにハンマルビーとの契約満了期間を前倒してチェルシーへと戻ることになる。ハンマルビーの情報によると「浜野は公式戦で22試合出場、11得点を挙げてチームに非常に貢献してくれた」と活躍を称賛。また同クラブのスポーツディレクターを務めるヨハン・ラガー氏も「彼女は私たち(チーム)にとって重要な選手であり素晴らしい人だ」とコメントしている。

2023年も終わりに差し掛かっていた12月17日、数ヶ月間におよび肩の怪我と闘ってきた浜野がついに復帰。WSL第10節チェルシー対ブリストル・シティの試合で、浜野は背番号23のブルーユニフォーム姿で途中出場し、チェルシーでのデビュー戦を迎えた。現時点、チェルシーでは公式戦3試合に出場。旅はまだ始まったばかりである。


チェルシー・ウィメン FW浜野まいか 写真:Getty Images

「決して諦めたくない」という心の強さ

なでしこ選出から瞬く間に海外へと飛躍した浜野の根底にある強さとはどんなものなのか?そのヒントがFIFA公式ウェブサイト内のドキュメンタリー短編動画コンテンツ『Queen of WE(WEの女王)』でもチラリと見える。

動画には、当時INAC神戸に在籍中の浜野とご両親が出演。幼い頃の浜野について「とにかく一言でいえば負けず嫌いな子。プレーが上手くいかなかったら泣く、試合に負けたら泣く。もうずっと泣き虫です」と語っている。幼い頃から勝負や挑戦することに対して「決して諦めたくない」という浜野の心の強さが、現在のプロサッカー選手への道を強固なものにしていったと感じる。

浜野自身は動画内で「サッカーをしてなかったら一体どんな生活を送っていたのか、自分も想像できない」と口にしている。この言葉に沿っては、同時に周囲の人々もまた、想像ができないかも知れない。それほど浜野の姿やプレーは見ている者を魅了し、そして未来への期待がかかっているように感じる。

これからイングランドの地で「MAIKAがいないチェルシーは想像できない」という声が湧き上がることを期待している。

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