従来、CB缶を燃料にするガスストーブは燃料が安価でどこでも手に入りやすいという利点はある反面、寒さに弱く、重量とパッキングサイズが大きいことがデメリットであることが広く知られています。つまり、登山や寒冷地には不向き、OD缶タイプの方が向いているとされてきました。
しかし、そんな「従来の常識を覆す画期的なCB缶タイプのガスストーブが誕生する!」というニュースが入ってきたのが昨年末。そして、ついに来る4月19日、SOTOから話題の主役「レギュレーターストーブTriTrail(以下、トライトレイル)」が発売されます。
このストーブの一体なにがすごいのか。発売前にいち早く実機をフィールドに持ち出して試してみたので、レポートしてみましょう。
■CB缶タイプなのに、驚くほど軽量コンパクト
まず、トライトレイルの特筆すべきポイントは、CB缶タイプのストーブとは思えないほどの軽さとコンパクトさでしょう。
五徳の素材に軽量なチタンを採用し、支点の一部をガス缶で代用することで大胆な2本脚にするなど、思い切った軽量化を図っています。
実現した本体重量は、バナナ1本分にも満たないわずか136g。OD缶タイプのコンパクトなシングルバーナーにも劣らない数値に収まっています。
従来のCB缶タイプのストーブと比べてみると、その軽量コンパクト具合がよくわかります。
例えばキャンパーの御用達、SOTOの超ベストセラーモデル「レギュレーターストーブ ST-310」と比較すると、59%もの軽量化、45%もの収納サイズのコンパクト化に成功しているんです。
半分ですよ、半分!
この軽さとコンパクト具合は、山以外の用途でも大きなメリットになりそうです。
■炎のクオリティは名作「ウインドマスター」譲り
たとえ軽くても、アウトドアで使うストーブは機能性が犠牲になっていては元も子もありません。その点、トライトレイルは耐風性の高さと安定した火力も特長のひとつです。
風防なしでも風に強いすり鉢状のバーナーヘッド構造と、寒い環境下でも安定した火力を提供する独自のマイクロレギュレーターは、シングルストーブのロングセラーモデル「マイクロレギュレーターストーブ ウインドマスター」から引き継いだディテール。
カタログ上の発熱量のスペック値は2,200kcal/hと、ウインドマスター(2,800kcal/h)よりも少し低い数値ですが、外気温が20℃でもマイナス5℃でも変わらない火力を提供してくれるそう。実際に、気温が氷点下を下回る雪中泊でも使ってみましたが、従来のレギュレーターストーブよりも圧倒的にドロップダウンが起きづらかったのが印象的でした。
また、鍋を載せた重さがかかってしまえば、軽さによる不安定感はまったくありませんでした。
■併せて使いたい「山向きなCB缶」も同時発売
従来のCB缶でも十分ですが、雪山のような寒冷な環境下でもよりトライトレイルの性能を最大限発揮するCB缶燃料「CB TOUGH(シービータフ)」も同時発売されます。
こちらもストーブ同様、従来のCB缶の常識を覆す製品。より容器自体の耐圧性能を高めることによって、OD缶よりもリーズナブルながら、OD缶と同等の環境下でガス器具の使用を可能にする画期的な燃料となっています。
パワフルなだけでなく、持ち運びに便利な125サイズがラインナップしていること、使用時になくしやすいキャップを缶のボトム部分にはめておけることも見逃せないポイントです。
■あえて言うなら、ここが少々気になるかも
あえて言うならば、という程度ですが、いくつか気になった点も挙げておきましょう。
1つ目は安定感。ガス缶と一体型になっている構造上、テーブルの上のような平面であれば安定しておけるが、岩がゴロゴロした山のテント場のような不整地では、まっすぐに置ける場所を探すのに少々苦労します。その点においては、使用環境次第で分離型のストーブやOD缶タイプに分がある部分かと思います。
また、棒状の五徳の径は小さめ。溝を掘ってはあるものの、組み合わせる鍋によっては滑りやすく感じました。1人用のクッカーで使う分には問題なさそうですが、五徳の径よりも鍋底が大きい複数人用に中〜大型のクッカーを使う際には、慎重に扱う必要がありそうです。
とはいえ、「CB缶とOD缶、どちらのストーブを選ぶか」という永遠のテーマに対するアンサーとなりそうな本製品。可能な限り荷物を削りたい、大人数の料理用に大きな火力が必要など、特別な目的があるときは別として、初めてストーブを買うなら間違いない1台です。
<撮影協力>
SOTO(新富士バーナー)