男子シングルスV2の17歳小田凱人がライバルに抱いた〝リスペクト〟「100%の彼とパリで戦いたい。勝てると思う」飯塚国際車いすテニス大会

飯塚国際車いすテニス大会の男子シングルスメインで優勝し、ポーズを決める小田凱人(撮影・柿森英典)

◆第40回飯塚国際車いすテニス大会最終日(14日、福岡県飯塚市)

若き王者が飯塚の地で再び凱歌(がいか)を上げた。男子シングルスで小田凱人(ときと)が大会史上最年少で優勝を飾った昨年に続く連覇。勝利の瞬間、17歳の日本のエースはラケットを放り投げ「俺が一番」とばかりに天に向かって人さし指を突き上げた。

最大のライバルで2連敗中の難敵アルフィー・ヒューエット(世界ランキング1位)に対し、小田(同2位)は持ち味のパワーとスピードを生かして第1セットを6―1で奪取。だが第2セットは「(優勝した昨年の)全仏オープン以来」という緊張と重圧から競り合いで決めきれず、逆に1―5とリードを許してしまった。

「日本開催だし、前回優勝しているから負けられないという気持ちだった。自分で自分にプレッシャーをかけていた」。普段は生じない感情でもあり、「久しぶりに俺頑張っているな」とも思ったという。

それでも、ピンチでギアをチェンジできるのが小田の真骨頂。対角へのショットや技ありのロブなどで追い付き、タイブレークも強打で振り切った。「1―5からまくれたのはいい経験値になる。『もうやばいかな』というところから頑張れば奪い返せるということが(テニスを学ぶ)子どもたちにも届いてくれたらうれしい」と語った。

ヒューエットは前日の小田、三木拓也組との男子ダブルス決勝で古傷の左肩故障を再発。この日も第1セット終了後にコートで手当てを受けるなど万全なではなかったが「大勢の観客が楽しみにしているのに棄権できない」と全力で戦い、一時は小田を追い詰めた。

試合後、報道陣に事情を知らされた小田は「ボールの質やプレーの動きにけがの影響は感じず、やっぱり強かった。負傷してもあれだけのテニスをできるのにはリスペクトしかない」とライバルをたたえた。

世界の頂点を争う好敵手とは、8月のパリ・パラリンピックでも対戦が予想される。「100%の彼とパリで戦いたい。勝てると思う」と強気に語った。(山崎清文)

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