京大防災研/ダム再生技術で産学の研究開発拠点設置、改修手法や堆砂対策検討

京都大学防災研究所は既存ダムを最大限に活用する「再生技術」について、産学による研究開発拠点を立ち上げた。ダムの運用を高度化する気象予測技術や、貯水・放流量を増やす改修手法などを研究。ダムの堆砂対策も検討し、土砂を下流に還元する技術も開発する。設置期間は2024年度から5年間。技術開発だけでなく、人材育成や海外支援にも取り組む。
気候変動による雨量の増加などを背景に、既存ダムを有効活用する「再生技術」の開発がソフト・ハード両面で進んでいる。気象予測に応じて放流量を調整したり、堤体をかさ上げし洪水調節容量を増やしたりする取り組みがある。京大防災研らはこうした技術開発を一層加速。既存ダムの状況も評価し、さらに運用効率を高める方策を提案する。
ダムに土砂がたまると貯水容量が減るだけでなく、本来は下流の河川に流れるべき土砂をせき止めてしまう課題も発生する。土砂が減ると、河床の低下や海岸侵食といった環境問題につながる。このため、下流への効率的な土砂の供給方法を含めた堆砂対策を研究する。
研究開発拠点は、京大防災研の角哲也特定教授を総括リーダーとして▽関西電力▽電源開発▽中部電力▽九州電力▽建設技術研究所▽ニュージェック▽西日本技術開発▽水源地環境センター▽ダム技術センター-の9者が参画する。各企業・団体の若手職員で構成する研究会を立ち上げて技術を開発し、人材育成にもつなげる。
12日に研究開発プロジェクトに関する記者説明会をオンラインで開いた。角特定教授は「ダムは新設から管理が中心になりつつある。さまざまな再生技術が社会実装されるよう、モデルケースを作っていきたい」と話した。

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