【全日本】元付け人・諏訪魔 曙さんの魂を背負いCC制覇誓う「あの迫力でやりたい。横綱のためにも」

曙さんとの思い出を語った諏訪魔

亡きライバルとともに――。全日本プロレスの〝暴走男〟こと諏訪魔(47)が、心不全で死去した元横綱曙太郎さん(享年54)の魂を背負って春の祭典「チャンピオン・カーニバル」(18日、後楽園で開幕)に臨む。曙さんがプロレスに進出した2005年、最初に付け人を務めたのが諏訪魔だった。曙さんと祭典の優勝決定戦を戦った15年大会の記憶がよみがえった暴走男が、16年ぶり2度の制覇へ一直線だ。

Bブロックにエントリーした春の祭典は、諏訪魔にとって8年連続19回目の出場。44回目のCCで史上最多出場を更新し続けている。開幕に向け、14日には都内で公開の会見が行われたが、暴走男だけは神妙な面持ちだった。先日、曙さんの訃報が届いたからだ。

「ビックリした。時間が止まったよ…」。曙さんは05年から全日本に参戦し、武藤敬司をプロレスの師匠とする「武藤部屋」に入った。当初付け人を務める予定だった雷神明が脳振とうで欠場となったことから、役目が諏訪魔に回ってきた。すでに04年10月にデビューし武藤の付け人を終えたばかりだったが、プロレスでは新人の曙さんをサポートすることになった。

「第一印象はでけえし、すげえ人だなって。日本国民では誰でも知ってる人だけど、優しいんだよ。だって怒られた記憶がないし」と振り返る。巡業では毎日のように飲みの席に同席し、曙さんが好きだった焼酎「鍛高譚(たんたかたん)」を大ジョッキで駆けつけ3杯飲まされるのは当たり前。ホテルでは団体創立者の故ジャイアント馬場さんも使った延長器具を使って、203センチ、210キロの巨体を誇った曙さんのベッドをつくった。

忘れもしないのが鹿児島巡業だ。夜の街に繰り出すとまたたく間に人だかりができ、対処しきれない事態に。諏訪魔が通行人をかき分けると、曙さんは「いいよ」と一人ひとり写真を撮ってあげていたという。「地域の有力者に会うときとか、本当に腰が低いんだよ。横綱になった人がだよ。自分もこういうふうにならないとダメなんだなって学んだね」。

プロレスにも真剣に取り組み、試合が終わると和田京平名誉レフェリーやベテランの渕正信に「どうでした?」とアドバイスを求める姿を何度も見た。諏訪魔は「『こうやったらいいじゃない』って面白いアイデアを出すこともあった。お客さんを喜ばせるにはどうすればいいか、いつも考えていた」と証言する。

付け人から離れた後、諏訪魔はめきめきと頭角を現し、いつしかライバル関係に。3冠ヘビー級王座戦だけでなく、15年4月25日のCC優勝決定戦(後楽園)で直接対決し、曙さんの初優勝を許した。

「久々に横綱との試合映像を見たんだよ。すげえ迫力だったし、お互いにぶん殴っていた。あのころの気持ちを思い出したから、今回のCCは、あの迫力でやりたいなって思ってる。横綱のためにもね」。偉大なライバルに勝利をささげる。

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