『ザ・ノンフィクション』話題の婚活回で“パロディー”にもなった50代男性の現在

内田さん(左)とマリーミー代表の植草美幸氏(C)日刊ゲンダイ

東京・青山の結婚相談所「マリーミー」の代表・植草美幸氏と婚活中の男女に密着したフジテレビ『ザ・ノンフィクション』(2月4日、11日前後編で放送)の「結婚したい彼と彼女の場合~令和の婚活漂流記2024~」は大きく話題になった。密着者のひとりである内田さんは再婚希望の55歳。「夫婦ならラブホ」発言がSNSでも話題になったが、お見合い相手の女性たちとの距離感がつかめずに”空回る”姿に親しみを感じる視聴者も多かった。

現在も、運命の人を探して活動中の内田さん。植草美幸氏との対談形式で、密着の裏側と近年増えている中高年ならではの婚活の現実を振り返ってもらった。

放送後はX(旧ツイッター)をはじめ、SNSでも大きな反響があった。激励もあれば批判もあったが、婚活にも影響があったという。

◇ ◇ ◇

――番組放送後、周囲の反響はいかがでしたか。

内田さん(以下、内田) 会社は家族経営なので、身内を含めて何か言われることはありませんでしたが、取引先からオンエア中に「今、テレビ出てますよね」って連絡がありましたね。友人からLINEが来たり、友人をつくるために入った社会人サークルでは「ウッチの良さなんて1、2時間で分かるわけないでしょ。付き合ってみなきゃわからないよ」なんて言われてありがたかったです。一方で、「滑舌が悪くて何を喋ってるか分からない時があるから、そこは気をつけてね」ってアドバイスくれた人もいましたね。結構、僕はインパクトあったのかな? 街を歩いていてもすごく声をかけられて。女の子から「一緒に写真お願いします」って。

植草美幸氏(以下、植草) パロディーにもなったのよね?「M-1」優勝者のお笑いコンビ「令和ロマン」さんは、内田さん役が「夫婦だからラブホもいいよね」って言っていて、私役が「(結婚相手の)顔は付いていたらいいのよ」と長い髪のかつらを被ってましたよ(笑い)。ものまねタレントの古賀シュウさんのインスタグラムも内田さんから教えてもらって見たんですが、内田さんが歩いて語っている番組のシーンの動画をアップしていて、「これ内田さん?」と思ったら違うんですよ。ちゃんと芸人さんがやっていて、私(?)も出てきてなんやかんや言っていて(笑い)。

内田 ほかにも、僕は筋トレをやって有酸素運動した後に、スーパー銭湯に行くんですが、ある朝サウナに入っていた時に、隣に座っていた70代くらいのダンディな方から「失礼ですけどテレビに出られていた方ですか」と声かけられて「あの番組が好きで見ていて、あなたの考えと行動は尊敬に値します」って言われたんですよ。それはすごく嬉しかったですよね。

――Xの書き込みなどで戸惑ったことは?

内田 Xの反響は予想していましたけど、一時は常時炎上していましたよね。いやー、みんな僕のこと好きなんだって思いましたよ(笑い)。わざわざ僕の経歴をコピーして「この男実はハイスペック」とか、書いてくれたりね。騒がれるほど僕の価値は上がると思うから、それはいいんですよ。

植草 すごい。内田さんは、そういう考えなんですよね。おおらか。マイナスもプラスに変える方なんです。

内田 そうです。僕は社会人になりたての頃、ハウジング会社に勤めていて、飛び込み営業をしていました。何もない土地に素人で営業しに行って、結果的に6800万円のアパート建設に至ったんです。それは無から有を生んだという意味で、僕にとって大きな成功体験になりました。それが僕の人生の根底にあって、今回の密着も同じで、何もない僕が先生を介してテレビに出ることによって無から有を生んだんです。だから皆さんのXの言葉は僕へのエールなんですよ。そのエールを素直に聞こうと思っています。髪型がおじさんくさいって言うならば直します。肌も汚いって言われたんできれいにします。ピンチをチャンスに変えるのが本来の僕の姿なので。

――「ザ・ノンフィクション」を見て、内田さんとお会いしたいという問い合わせはありましたか。

植草 内田さんと会いたいからと入会の問い合わせがありましたが、実際に資料を送ってもその後は音沙汰なしですね。興味本位だったのかもしれません。

「体重をあと8キロ絞る。まだまだメンテが必要です」(内田)

最近は内田さんのように50代で結婚相談所を訪れる人も増えているという。政府の統計によると、2020年の「50歳時の未婚率」は男性が28.25%、女性は17.81%。前回調査からは男性は約3.5ポイント、女性は約2.9ポイント上昇していて、婚活市場にも中高年の男女が集まっているのだ。ただ、内田さんのような再婚希望者は少ない。

植草 私が結婚相談所をはじめてもう15年経ちますが、当時40歳を過ぎた方は中高年と言われていたんです。『中高年専用』と呼ばれる結婚相談所がいくつかあって、基本的にパーティーを開催していました。徐々に40代、50代が珍しくなくなって専用ではなく一般の結婚相談所に入る時代になっています。マリーミーの場合、40~50代の入会者のうち、男性は84%が結婚歴なし、女性は75%です。つまり、男性のおよそ15%、女性だと25%が再婚希望の方たちです。

――初婚の方は多いのですね。なかでも50代となると厳しいのでしょうか。

植草 50代の男性は「子供が欲しい」という人が多い。ところがこれは現実とのギャップがあります。まず、お子さんを授かる前提となると、お相手について「できれば20代がいい」「35歳までがいい」と望みます。ただ女性側は、例えば53歳の男性が結婚して55歳で子供が生まれたとすると、お子さんが大学卒業の時には77歳ですから、「仕事を65歳で引退するとその後12年間の収入はどうするのか。誰が子供の教育費を出すのか」と不安になります。

また年齢差が20歳以上にもなると女性の父親とも年齢があまり変わらず、まず女性の親が許しません。「歳の差婚」の出産はごくまれに見かけますが、男性がとても高収入だとか、前の結婚で子育ての経験があり人間力があるとか、男性に安心材料がいくつもある場合です。

考え方が昭和な方も苦労しています。いまだに「若い方がいい」と外見で決めることが多い。若くて女優さんのような相手だと嬉しいなっていう夢を見ている人がいます。女性の人間性を考えたり尊重する視点が抜けているので、相手の意見をちゃんと聞いて話しあおうとしません。

たとえば、デートの約束を勝手に決めたり、レストランでも「俺が支払いをするんだから」とメニューも決めてしまう。20~30代の女性の価値観では、まだお互いによく知らないのならば、友達のように話し合って決めるわけです。もちろん50代の男性は、女性に払わせるなんて失礼だとか、マナー違反だというサービス精神が根底にあるんですね。考え方に違いがあるのでマッチしない。

――アラフィフ以上なら同世代婚が結婚の近道でしょうか。実際、増えていますか?

植草 最近になって増えてきましたね。55歳の男性が子どもさんを希望しなければ、お相手が50歳でもいいわけです。年が近い人ということは、同じように時を重ねていって、同じように老いていって、同じように歩幅を合わせて生きていける。そういった結婚も幸せですよ。年齢とか子どもさんの話でいうと、内田さんも入会当時から考え方が変わってきましたよね。

内田 僕の振れ幅はすごいですよ。26歳から62歳までですから(笑い)

植草 最初は内田さんも子どもが欲しいおっしゃったので、26歳の若い女性をご紹介したんです。でもやっぱり若過ぎる方は合わないなと考えるようになって、内田さんの要望に合わせて30代から60代の方を紹介していますが、内田さんはお相手の年齢に合わせて、自分の生活のスタイルを変える覚悟ができたんです。それは結構大変なことですよね。

内田 植草先生に紹介していただいた方とは、なるべくお会いしたいと思っています。相手が子どもが欲しいって言えば同じように考えますし、夫婦だけでと考えるなら、尊重したい。僕は相手が望むことに対応できると思っています。資産もあるので、相手によって生活を、人生を変えられると思っています。将来アパート経営もできますし、僕は死んでも奥さんにね、お金が遺せるので、話し合っていきたいですね。

植草 なかなか奥様や子供さんに多額の財産を残してあげられる方は少ないので、彼の場合ちょっと特殊なんですけどね。

内田さんは現在も自分磨きを続けている。密着では筋トレや全身脱毛に通う様子も放送された。今後の婚活への意気込みは――。

内田 今の体重は78キロですが、あと8キロは絞ります。目尻や眉間にあるシワを取るためにボトックスも必要かな。まだまだメンテナンスが必要ですよ。写真よりも本物の方がいいぐらいでないと。女性も写真以上に奇麗にされている方はやっぱり素敵だなって思います。それでつい熱くなってしまい興奮して失言してしまったこともありましたが(笑い)

「植草美幸の6秒」っていう言葉があります。お見合いで会った瞬間に、お相手に上から下まで見られる時間が6秒だそうなんです。その印象で判断されるので、自分磨きが大事。見合いしてよかったと思ってもらうのか、それとも残念だったと思われてしまうのか。その6秒に命を賭けろと言うことを意識してやっていきます。

植草 お見合いは1時間ですが、最初にお辞儀をしたところでほぼ答えは決められてしまうと言っても過言ではない。だから第一関門は見た目、外見です。笑顔とか挨拶の声のトーンを大事にしていただきたいんです。6秒を超えないとその次はないってことです。女性も男性も歳をとっていけばそのままで奇麗でいられるわけがないですよね。歳をとればとるほどそれ以上の努力をしなきゃいけない。結婚しようっていう男性は特に努力が必要です。50歳以上になって男女ともに色気とか、情熱とか、そういうものがないと結婚は難しいですね。

内田 加えて、植草先生がよく「顔は付いていればいいのよ」「心を見なさい」と仰います。今年、ドジャースの大谷翔平さんが結婚されましたよね。テレビの会見で「とにかく一緒にいて楽しいんだ」って話していました。それがすごく大事なんじゃないか、そこに大きなヒントがあるんじゃないかなとも思っています。

植草 内田さんはピュアな方ですから、ある意味子どもみたいなところがありますけど、そういうところが分かってくれる女性と巡りあってほしいといつも思っています。内田さんのキャラクターをひっくるめて受け入れる女性との縁を願っています。

――最後に、番組の視聴者の方に内田さんの姿を通して伝えたいことはありますか?

植草 50歳を過ぎて、本当に結婚したいんだったら、勝手には結婚はできませんというのは伝えたいですね。結婚相談所に来たから全員結婚できると思ったら大間違いで、男女共に、「あなたと結婚したいかは相手が決めること。あなたが決めることではないですよ」と伝えています。異性から自分がどう見られているか、学ばないと結婚は難しい。

でも、50という年齢で結婚しようと思うのは素晴らしいことです。人生長いですから、90まではあと40年、100歳まで生きるなら50年あります。人生の折り返し地点ですから、ちょっとでも結婚したいと思うなら、努力を惜しまず婚活してもらいたいですね。

◇ ◇ ◇

【前編】では、番組内でシングルマザーの40代女性とのお見合いし「旅館が満室だったら、夫婦ならラブホテルでもいいよね」と話して炎上した"事件"の真相を話しています。詳しくは【関連記事】へ。

© 株式会社日刊現代