凄腕サラリーマンから転身の魚屋 能登半島地震で支援に動く「まだまだ大変」知ってほしい

能登半島地震の水産業者の自立支援をする鈴木さん(甲賀市)

 鈴木隆将さん(45)は能登半島地震で被災した水産業者のために毎月1回、滋賀県長浜市で鮮魚販売イベントを開く。自身も鮮魚販売をしており同業者からの「仕事ができない」という苦境を聞いたのがきっかけだった。

 考えたのは「自立支援」だ。物資提供や炊き出し、義援金も必要だが、最終的に被災者が自身の生活を立て直す必要がある。このため現地から本人を招き対面販売してもらっている。地震から3カ月以上たっても「現地で仕事が再開できない」という水産業者の直接的支援に加え、「『まだまだ大変なんだ』と来場者に知ってもらうのも大事」と話す。

 物流機器大手の県内工場に勤めていた。マネジャー時代には労務費節減や工場の黒字転換、障害者雇用の拡充を成し遂げ、何度も社内の表彰を受けたという。

 だが、激務だったサラリーマン時代の自分の時間を取り戻すべく「収入が半分になっても年間半分休む」という目標を掲げ退職した。鮮魚販売だが店舗を持たず、利益率のいい商品を軽乗用車で仕入れて売るスタイルを確立。8年目の今では年間半分を休みながら会社員時代とほぼ同じ収入を得るようになった。

 ちなみに魚屋を選んだのは趣味が釣りだからだ。屋号である「コイタロウ水産」の元になったコイ釣りでは雑誌に寄稿するほど知られた存在だった。

 「夢をかなえすぎて、今は自分で達成するより周囲の人に感謝される方が幸福感が強いんです」と笑う。被災者支援の原動力にもなっている。

 他にも県内の大型商業施設で販売機会の創出を目指し企画を進めているという。甲賀市在住。

© 株式会社京都新聞社