私人権利の制限、緊急事態対応……自民・和田政宗参院議員が憲法改正の「今」を解説 選挙ドットコムちゃんねるまとめ

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2024年4月3日に公開された動画のテーマは「憲法改正を求める理由」。

岸田首相が憲法改正の実現を目指す考えを明言し、改憲の議論が前進しました。ゲストの自由民主党・和田政宗参議院議員が力を入れていらっしゃる政策のひとつでもある、憲法改正の現在地についてお話しを伺いました。

【このトピックのポイント】
・憲法改正の国民投票、早ければ今年夏に
・なぜ憲法改正?まずは緊急事態対応から
・日本は「スパイ天国」?SNS上の言論にも注意

和田政宗氏のプロフィールは以下の通りです。

1974年東京生まれの和田氏は、慶応大学卒業後にNHKにアナウンサーとして入局。原稿を読むだけではなく、現場を取材し良い番組を作るジャーナリストを目指して働いていました。

東日本大震災の時には、仙台放送局に勤務していました。震災から2年後に、特集番組の制作で沿岸部の取材をしていた時、それまで復興に尽力していた男性が「この先どうなるかわからない」と辛そうに泣きながら話す姿を見て「民主党政権のままではこの国が終わる」と感じたのが、政治の道に進むきっかけでした。

NHKを退職して、2013年にみんなの党から立候補して当選。その後は、みんなの党、次世代の党、日本のこころを大切にする党を経て無所属へ。自民党には2017年に入党しました。入党直後の衆議院議員選挙では、自民党の広報本部副本部長として、選挙統括や広報統括の任に当たり、安倍元首相のCM制作チームの総監督も担った経験もあります。

今回は以下の質問からいくつかピックアップして和田氏に回答していただきました。

憲法改正の進捗は? 早ければ今夏に国民投票か

岸田首相は1月30日の施政方針演説の中で、自らが総裁任期満了を迎える9月までに憲法改正の実現を目指す考えを明言しました。

憲法改正といえば、長らく政治の論点のひとつに語られてきた問題です。改正の日は近づいているのでしょうか?

和田政宗氏「私は近づいていると思います」

和田氏の説明では、衆議院の憲法審査会で、自民・公明・維新・国民と無所属の有志の会などが、

・衆議院議員・参議院議員の緊急時の任期延長
・議会機能の維持、国会機能の維持

で、すでに意見が一致しているとのこと。

昨年12月に憲法審査会の筆頭幹事である中谷元氏の提案により、条文作成のための作業機関を作ろうとしており、自民を含めた5会派が賛意を示しています。

条文作成で一致すれば、憲法審査会で議決をし、過半数で提出可能です。

もしくは政党による、議員発議も可能(国会議員ひとりにつき100人/参院でひとりの提案に50人の賛成)。

今回の5会派で人数を満たしているため、憲法審査会での議決でも、議員発議でも国会提出は可能となります。

ですので現在の焦点は、どのように条文を作成し、国会に提出するかということになる、と和田氏は語ります。

MC伊藤由佳莉「岸田総理の任期中というお話しになると、提出するのは現在開催中の通常国会になるのでしょうか」

和田氏は、議員の動きでなく、岸田総裁自らが憲法改正を発議すると語っているとの観測も示します。

この「発議」には、

・国会提出
・国民に対する発議

の2つがあります。

もし、国民に対する発議なら、6月末までの通常国会中に決定し、8月ないし9月に国民投票になります。

国会提出なら、通常国会中ないしは9月の早い段階で臨時国会を召集、提出。その国会内で議論をした後、年末ごろに憲法改正の国民投票の運びとなる、というのが和田氏の見立てです。

和田氏「しっかりやれば、今年中に憲法改正・国民投票という形で、現行憲法における1回目の憲法改正の国民投票が行われると思います」

まずは緊急事態対応から〜現行憲法の改正が必要な本当の理由

機が熟している中ですが、改めて、なぜ憲法改正が必要なのかを確認しましょう。和田氏は、現行憲法に改正が必要な理由を、次のように説明します。

現行憲法で自衛隊を保持できるのか、多くの憲法学者が疑義を呈している現状がありますが、その一方、現実には自衛隊は、国防を目的に国を守ったり、災害派遣で活躍しています。

そういう状況の中、教科書で「違憲の疑いがある」などと言うと、現場で活躍している自衛隊員や家族がどう思うだろうか、と和田氏は疑問を投げかけます。

和田氏「我が国の国防上も、自衛隊というものを明記することがきわめて重要であって」

和田氏は、現行の憲法は、私たちの祖父母の時代が非常に強く戦ったことで、アメリカは日本に二度と軍事力を持たせない、アメリカが日本の防衛を担うという中で、GHQが作った憲法だと説明します。

当然、そういった憲法では国防に対する規定がありません。しかし、その後アメリカが朝鮮戦争に注力する中で、日本に防衛軍のようなものを作ってよい、という流れになり、結果として警察予備隊、保安隊、自衛隊ができていったという経緯になっています。

本来、この経緯に合わせて憲法で規定すべきところでしたが、

和田氏「第二次安倍政権まで、いわゆる改憲に必要な勢力(衆参それぞれで2/3)を取れませんでしたので」

和田氏は、国防以外に衆参両議員の災害時の任期延長についても言及します。

非常時に議員の任期が満了となってしまったらどうでしょう。現に、関東大震災の時は、3か月帝国議会が開催できなかったとの記録が残っています。

衆院が解散して選挙ができない時、参議院議員の緊急集会で決めることができるとはいえ、基本的に日本は二院制です。緊急集会で決めたことが、あとから衆院によってひっくり返ることがある、と和田氏は警告します。

選挙ができないうちに任期が切れてしまったら。また、任期切れとなったのが衆参同日選挙の結果だったりしたら。制度上では、参院の改選でない人数で議会運営を行うとしても、選挙ができないほどの非常事態下で、120〜130人という少ない人数で議員としての活動ができるのか、と和田氏は表情を厳しくします。

加えて、現行憲法では緊急時に、私人の権利の制限ができない、ということを和田氏は指摘します。

私権制限とは?例えば東京都内で大震災が発生して、公共の避難場所が使えなくなった中、たまたま民営のホールが利用可能な状態だったことがわかります。即座に避難所として使用したいのに、現行法では、そういった建物に避難者を入れるよう、建物オーナーに強いることができないのです。

和田氏は、「普通の国はOECD加盟国、不文憲法であるイギリスや、いざというときの政府の権限が大きい構造のアメリカ合衆国憲法以外のほとんどは、緊急事態条項を規定している」と眉をひそめます。

海外の多くの国や地域では、「民間の施設に避難させる場合は、政府が強制的に借り上げて、避難者を収容する。滞在中に建物内の設備が傷んだらお金で保障するか、原状復帰で返す」となっているのに、日本ではこれができない、と和田氏はコメントします。

また、緊急事態対応のひとつとして、新型コロナ禍の初期の頃の事例も紹介しました。

武漢から日本人が帰国した際、経過観察で千葉県内のホテルに入所する中、数人が、経過観察を嫌って帰宅してしまったということがありました。

感染リスクがある中、緊急事態時に憲法で移動の制限ができるという構造になっていれば、そういう問題は防げた、と和田氏は解説します。

和田氏「緊急事態条項と9条に自衛隊を明記することは、絶対に、速やかにやらなければならない。第一歩として、緊急事態対応の、衆参両院議員の任期延長ということになるのではないかと考えます」

MC伊藤「さまざまな災害を経験する中で、私権制限と公共の利益をどうやってバランスを取っていくかというのが、身近な問題になりました」

なんでも政府が政令を定めて国民を戒厳令的に抑えるのか、という反対意見がありますが、和田氏は「我々は民主主義国家として、大日本帝国憲法の頃から長年やってきていますので、強権的な政権は極めてできにくい」と述べます。

和田氏「ですので、改正すべきであるというのが考えです」

日本だけが気づいていない、情報漏えいやスパイの問題も

続いては、再生可能エネルギー導入に向けた規制の見直しを目指す、内閣府のタスクフォースで提出された資料の一部に、中国企業の透かしが入っていたことが明らかになった事案についてです。

和田氏は、この件に関しては、「原因を明らかにすることと、再発の防止が必要」とコメントします。

その上で、日本の情報に関するそもそもの脇の甘さに警鐘を鳴らします。

和田氏「日本は外交的なスパイも、経済安全保障的なスパイも、もう『スパイ天国』なので。これに対してセキュリティクリアランスで網をかけていくんですけれども」

和田氏「スパイ防止法が必要だというと、国民がスパイでしょっぴかれるということを懸念されるが、居酒屋トークなどではなく、対外国の情報機関などによる、情報を盗み取ろうとする行為に対して、スパイ防止法は必要だと思いますし、国民の理解も得られると思います」

MC伊藤「今、現状がかなり危なっかしいということですか?」

和田氏は、SNS上でも情報工作がかけられており、中でも警戒すべきは、中国が台湾に対して行う情報工作であると、次のように説明します。

和田氏によると、中国が台湾を侵略する際は、いきなり軍事的なことを行うのではないそうです。

先にデモやテロといったような、何かしら政権に対する疑義を生じさせ、その上で、SNSなどを悪用し、台湾はもちろん、日本に対しても頼清徳政権が人民を守らないと喧伝。干渉する名分を作った後、内政問題として軍事的に介入する、というストーリーが考えられます。こうした動きにもSNSが使われ、情報機関が暗躍するのだ……とのこと。

和田氏「それを含めスパイ防止法を迅速で進めないと、世論をゆがめようとする勢力によって世論がゆがめられる危険性があると思っています」

匿名のSNSでももちろんのこと、日本国内で氏名や顔を出すYouTuberの中にも、世論をゆがめようとする動きで外国からマークされているような人もいるのだそうです。

動画本編はこちら!

9条だけじゃない!憲法改正を急ぐ本当の理由を解説します。

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