ひきわり納豆の九州シェア5割 丸美屋(熊本県和水町)、「国産」にこだわり商品開発【地元発・推しカンパニー】 

「国産」を前面に打ち出した納豆と豆腐を手にする丸美屋営業部の福田紘之さん=和水町

 「お城納豆」や「トントンとうふ」で知られる、熊本県民になじみの深い納豆・豆腐メーカー。九州でのひきわり納豆のシェアは5割で、トップを誇る。関東の大手メーカーもひしめく市場で、「国産」を前面に打ち出した商品展開に力を入れている。

 九州自動車道菊水インター近くに工場があり、自社ブランドの納豆18種、豆腐9種などを製造。九州を中心に販売している。

 主力のひきわり納豆は、大豆を砕いているため納豆菌が付着する面積が増え、粒納豆よりビタミンKが豊富で健康志向から人気が高まっているという。「以前は子どもや高齢者向けのイメージがあったが、7年ほど前から販売を強化しシェアを拡大してきた」と小幡浩之執行役員営業部本部長(44)。

 茨城県の大手メーカーが1996年、九州に進出したことで〝納豆戦争〟といわれるほど競争が激化。半面、マーケット拡大や各社の商品開発につながった。魅力ある商品作りは今も欠かせず、丸美屋では国産大豆を使った商品を増やしている。「安心安全なものを」という消費者ニーズに対応し、先進国の中で最低水準といわれる日本の食料自給率を上げたいという東健社長の思いからだ。

国産大豆を使った丸美屋の納豆や豆腐。ひきわり納豆のシェアは九州トップだ=和水町

 2012年には子会社の農業法人「農匠なごみ」(和水町)を設立。協力農家を含め、年間約600トンの大豆を生産している。災害時などの調達リスクを分散するため北海道産も増やしており、将来は5割を国産で賄うことを視野に入れている。

 若い消費者に手に取ってもらおうと、昨年から若手社員によるプロジェクトが始動。納豆に「フルーティ梅風味」や「クリームチーズおかか風味」のたれを付けて試験販売し、インスタグラムでお薦めレシピを発信している。

 海外にも販路があり、東南アジア向けに納豆を年間約40万パック輸出。健康食材として納豆人気が高い中国に、グループ企業「大連美屋食品」を置く。

 納豆は約400年前、加藤清正が朝鮮出兵の際に携えた大豆が由来という説もあり、熊本には縁の深い食品だ。消費量も多く、総務省の家計調査によると、熊本市の1世帯当たりの年間消費額(21~23年平均)は、全国の4368円を上回る5136円で九州1位。全国52都市で13番目だ。

 小中学校に出向き、大豆の栽培や納豆作り教室を開くなど食育活動に取り組んでいる。地域密着の活動も粘り強く続けていく考えだ。(伴哲司)

 メモ 1956年、「のりたま」などを製造販売する丸美屋食品工業(東京)の前身の東京丸美屋から、ふりかけの営業を継承し創業。現在は経営面で同社との関係はない。和水町の本社のほか、南関町と熊本市北区植木町に工場がある。23年度の売上高は約70億円。従業員約300人。

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