「東京ダービーは引き分けも許されない試合。勝てなくて悔しかったです」
4月13日の東京Vとの一戦(2-2のドロー)を終え、FC東京のGK波多野豪はミックスゾーンでそう話していた。ただ、前半だけで0-2とされ、43分に安斎颯馬を退場で失ったわけだから、そこから引き分けに持ち込めた点は評価に値した。
10人で0-2の逆境をなぜ撥ね返せたのか? この日2ゴールを決めてヒーローとなった遠藤渓太は逆襲のきっかけとして「割り切り」を挙げた。
「もう攻めるしかないので、割り切っていました」
実際、後半のFC東京は4-2-3システムに近い形でアグレッシブな姿勢を示した。カウンターを食うのを承知で攻めのスタンスを貫いたのだ。遠藤は言う。
「チームとしてがむしゃらにやって、それが勝点1を拾える結果につながりました。何が正解で不正解とかじゃなくて、やっぱりがむしゃらにやったところが全てだったと思います」
そんな遠藤の魂に火をつけたのは、奇しくも相手のゴールだった。
「染野(唯月)選手に2点目を決められ、ゴールパフォーマンスでFC東京のゴール裏を煽られているように見えて、そこで自分的にはスイッチが入りました。自分がピッチに入ったらプレーで見せてやろうと思ったし、その意気込みが良い方向に行って良かったです」
遠藤に限らず、後半のFC東京は選手一人ひとりが身体を張りつつ、走りまくった。例えば右サイドバックの白井康介は何度も上下動を繰り返して遠藤のゴールをアシスト。ボランチの高宇洋と小泉慶は労を惜しまず、相手ボールになっても必死に食らいつく。そして、トップ下の仲川輝人だ。時には組み立てにも参加し、最前線でボールを受けようと色んなところに顔を出す。
試合後の囲み会見では比較的控え目だった仲川。口よりも足を動かした彼のこの日のスタンスは、プロ戦士のそれだった。
戦術はもちろん重要だが、それ以前に戦う姿勢。割り切りとがむしゃらさというサッカーの根本を、FC東京は東京ダービーで示してくれた。
取材・文●白鳥和洋(サッカーダイジェストTV編集長)