「子持ち様」と言われたくない 育休から復帰する女性の不安 解消する方法は

職場復帰に悩むママ。しっかり働いて、育児をする方法はある?(写真はイメージ)【写真:写真AC】

新年度が始まり、新しい環境で働き始めた人も多いでしょう。仕事でつきものなのが、人間関係の悩みです。そこで、「好かれるリーダーに変わる50の技術 人手足を解消するチームのつくり方―」(セルバ出版刊)の著者で、魅力学・コミュニケーション講師の宮之原明子さんに、職場での人間関係を良好に保つためのポイントをアドバイスしてもらいました。今回は、育休から復帰を控えたワーキングママの悩みです。

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育休中の職場の雰囲気がわからず不安だらけ

メーカーに勤務する、30代の小原美咲さん(仮名)。昨年、第一子を出産し、この春に育児休業から復帰します。しかし、美咲さんには不安に思っていることが。

会社全体の男女比は5:5ほどですが、昭和体質で管理職は圧倒的に男性が多い職場です。育休中も男性上司が窓口だったため気軽に連絡しにくく、必要な手続きを確認するための連絡ですら、いつすればいいのかいつも悩んでいました。そのため、「育休中、職場がどのような雰囲気だったのかがわからず、復帰しても孤立しないか不安です」と美咲さん。

仕事は在宅勤務中心なことや、自分の親が近くに住んでいるため、美咲さんはフルタイムでの復帰を予定しています。しかし、夫が朝早くに家を出て残業も多く、平日はワンオペ状態になることが多そうです。

「社内全体にはママ社員も多いですが、私が働いている部署は育休や時短を取った人はいないので、周りからもとても気を遣われそうです。そうした環境のなかで『子持ち様』と言われず、しっかり働きながら子育てをするにはどうすればいいでしょうか」と、復帰後の人間関係に不安を感じています。

活躍できる日はくる それまでの期間は焦らない

共働き世帯の増加で、産休・育休後に職場復帰する人が増えている一方で、子育てしやすい職場環境づくりにはまだまだ課題が山積です。先日も、「子持ち様」という子どもを持つ人に向けられたネットスラングが大きな話題になりました。これは、育児のために休暇や早退を取る人のしわ寄せを受けた人が、職場での不満をSNS上で吐露する際に使われているようです。

自身も働きながら、一人娘を育ててきた宮之原さんも「育休からの復帰で不安を抱えている方は、まだまだ多くいらっしゃるのが現実だと思います」と、気持ちに寄り添いました。そして、これまでの経験も踏まえ、宮之原さんはまずは頭を切り替えて、「育休前と同じくらい、何もかも完璧に仕事をしなくてはならない」という気持ちをなくすことが大切だとアドバイスします。

「フルタイムで復帰したとしても、繁忙期の残業や休日出勤などは難しいでしょう。乳幼児期は、発熱などの病気を繰り返すことがほとんどです。ただ、これは免疫力をつけるため、子どもの未来にとって、とても大切なことでもあります」

個人差はあるものの、「保育園の洗礼」という言葉があるほど、入園したての頃は、子どもの体調不良に悩まされる時期があります。1週間から10日近く、休まないといけないことが頻繁に起こる可能性も。出産前と同じ量の仕事を完璧に行うことは、周囲の手厚いサポートがあったとしても、そもそも難しいといいます。

「もちろん、子どもの成長とともに病気の回数も減ってきますし、3年、5年と過ぎるとだんだん手もかからなくなってきます。必ず、育休前と同じくらい仕事をこなし活躍できる日はくるので、それまでの期間は焦らず『できる範囲で、一生懸命仕事をする!』という気持ちでいてください」

1万人以上のスタッフを指導した実績を持つ宮之原さん【写真:宮之原明子】

子どもがいるからこそ積極的なコミュニケーションを

宮之原さんによると、真面目で仕事ができる人ほど、完璧にできない状況に対して自己嫌悪に陥り、会社や周りの人、夫にも頼ることができず、ひとりでクタクタになりがちとのこと。ときには、子どもに当たってしまうこともあるといいます。

「私もそんな時期がありました。大事なことは、すべてひとりで完璧にしなくては、と考えないことです」と宮之原さん。そうした状況にならないためにも、職場では積極的にコミュニケーションを取り、一緒に働く人たちに協力してもらえる人間関係をしっかりと作ることが大切です。

また、子どもが小さいうちは、急な休みなど周囲に迷惑をかけてしまうことはどうしても避けられません。だからこそ、日頃から身近で一緒に働く方への感謝の気持ちを忘れないことも大切だといいます。

「『いつもありがとうございます』を口癖にするといいと思います。子育てと仕事の両立がいかに大変なのかは、多くの方は理解しています。なかでも、一緒に働く女性を味方につけることはとても重要です。すでに子育てを終えた女性や、これからその可能性のある方々に、あえて仕事の相談をしたり、感謝の気持ちを頻繁に伝えたりすることで距離も近くなります。ぜひ、自らコミュニケーションを取り、ご自身の味方になってくれる方を社内で増やしてください」

宮之原 明子(みやのはら・あきこ)
1974年9月25日生まれ、鹿児島県出身。人材サポート会社の株式会社清友、ほか2社代表取締役。一般社団法人 グッジョブかごしま理事。魅力学・コミュニケーション講師。著書に、接客・販売指導など1万人を超えるスタッフへの指導実績をもとに著わした「好かれるリーダーに変わる50の技術 人手不足を解消するチームのつくり方―」(セルバ出版刊)がある。2018年障がい者の就労支援事業として、一般社団法人グッジョブかごしまを立ち上げるなど、障がい者福祉事業へも積極的に取り組んでいる。

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