環境NGOが3メガ銀と中部電に株主提案、取締役会の監督能力問う=関係者

Makiko Yamazaki

[東京 15日 ロイター] - 国内外の環境団体が共同で、3メガ銀行と中部電力に気候変動対策に関する株主提案を行ったことが分かった。昨年までは脱炭素に向けた投融資計画などの開示を求める提案が中心だったが、今年は対象企業のガバナンス(企業統治)に照準を定め、気候関連の事業リスクに関する取締役会の監督機能の強化を促す。事情を知る関係者が明らかにした。

株主提案を出したのは、環境非政府組織(NGO)の豪マーケット・フォースと気候ネットワークで、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループに対しては、米レインフォレスト・アクション・ネットワーク所属の個人株主も共同提案者に含まれる。

マーケット・フォースなどが3メガ銀すべてを対象に株主提案を提出するのは2年連続で、中部電力については3年連続の株主提案となる。

これまでは、2050年に二酸化炭素排出量を実質ゼロにする目標の実現に向けて、より信頼性の高い移行計画や投融資方針の策定と開示を求めてきたが、不十分な開示の背景には、取締役会の監督機能が不十分というガバナンスの問題があると分析。

今年は、気候変動の事業リスクに関して取締役が適切な監督能力を持っているかを評価する方針や手続きを策定し、開示するよう定款変更を求める。

気候変動に関するガバナンスを問う株主提案は、いずれの企業に対してもこれが初めて。ESG(環境・社会・企業統治)投資のための国際的な開示基準を策定する国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)等を通じて投資家が求めるガバナンス関連の情報開示にも合致するという。

3メガ銀に対してはさらに、排出量の多いセクターの顧客の脱炭素移行計画の評価と、信頼性のある計画が得られない場合の措置を開示するよう提案した。銀行が顧客に行っている脱炭素移行支援の実効性を問う狙いがある。

三井住友は「提案を受けていることは事実。内容を精査の上、今後対応を検討していく」、みずほは「株主提案に関する書面を受け取ったのは事実だが、詳細については回答を差し控える」とコメント、三菱UFJは回答を控えた。中部電力の広報担当者は「提案の有無を含めて確認中」と述べた。

海外では、エネルギー価格の高騰などを背景に気候変動対策強化への反発や揺り戻しも見られる。一方、日本では、石油・ガス開発事業を拡大させる電力会社や、こうした事業を資金面で支える金融機関における脱炭素の取り組みの遅れを指摘する声もあり、投資家からの圧力は依然として強い。

定款変更の可決には出席株主の議決権3分の2以上の賛成が必要。国内では気候変動関連の株主提案が可決された例はないが、これまで提案を受けた企業は自主的に対策を強化、情報開示も拡充するなど、一定の影響力を発揮している。

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